不安な脳と心配のサイクル
不安な脳は、通常、恐怖よりも心配事を多く抱えます。何度も心配事を繰り返し、脅威やプレッシャーを感じ続けるために疲弊し、限られた力しか発揮できないように感じます。これは偏桃体の過活動の結果によるものだと神経科学は説いています。
ナポレオン・ボナパルトはかつて言いました。「心配事は、夜により快適に眠るために服を脱ぐのと同じように投げ捨ててしまうべきだ」と。ですが、私達はみな、常に心配事を抱えています。
アムステルダム自由大学の心理学者であるアド・ケルコフは、ある事について心配することは、全く理解可能なことであり正常なことであると指摘しました。問題は、何日も同じことについて心配するような時です。
また、神経科学の専門家が長年問いかけ続けている次のような疑問もあります。心理的にそのような方向へ流れていってしまう時、脳の中では何が起こっているのだろうか?どうして、その考えを止められないようになってしまうまでに心配事を増幅してしまうのだろうか?
「心配するなんてばかなことだ。雨が降るのを待ちながら、傘を持って歩き回るのと同じようなことだ。」
―ウィズ・カリファ―
不安な脳と偏桃体
不安な脳は、効率の良い脳とは真逆です。後者はその時持っている力を最大限に活用し、感情のバランスを適切に取り、ストレス値を低く保ち続けることができますが、前者はその全く逆です。過活動、疲弊、更には不幸感に特徴づけられます。
何が不安を引き起こすか、そして同じことについて何度も何度も考えることがどんなことかというのは私達もよく知っています。ですが、心配している時、私達の脳ではどんなことが起きているのでしょうか?2007年に「アメリカン・ジャーナル・オブ・サイカイアトリー(アメリカ精神科誌)」に発表された研究に、興味深い答えが載っています。
感情と痛み
- カリフォルニア大学のスタイン博士、シモンズ博士、フェインスタイン博士は、偏桃体と島皮質の反応性が増加すると、不安な脳になることを指摘しています。
- また、こうした脳の部位は、身の周りに脅威となり得る物を予期する役割をしています。そのため、そうした刺激への反応として感情的な状態になるように促します。
- ですが、何週間も、はたまた何カ月も不安な状態でいると、また別の興味深いプロセスが起こります。自制と合理的思考を好む前頭葉前部皮質の効果が通常時より劣ってしまうのです。
言い換えると、偏桃体が主導権を握ることによって強迫的な思考を増やしてしまうのです。その上、もう一つ述べるに値することとして、不安は脳内に痛みを引き起こすという事実があります。前帯状皮質の活動が示すところによれば、どうやらこうしたことがまさしく起きているらしいのです。
極度の不安に晒されやすい人がいる
過剰に心配すると、不安へとつながりかねないことは私達も知っています。ですが、日々の心配事にうまく対処することができる人もいれば、何度も何度もこうした強迫的で反芻的なサイクルに陥ってしまう人もいるのはなぜでしょうか?
- ケベック大学のマーク・H・フリーストン博士とジョゼー・レウーム博士による研究では、心配事を効率的に利用している人がいることが分かっています。そうした人は、悪いことは捨て置き、自分で自身の主導権を握り、罪悪感を減らし、どんな問題にも解決策を見つけるために率先的アプローチを適応する方法を知っていると言います。そうでない人は、悪い状況で行き詰ってしまいます。
- この研究は、不安な脳には遺伝的な要素がある可能性があることを示しています。
- HSP(過度に敏感な人)は、こうした心理的状態になりやすいです。
心配事に効果的に対処する方法
不安な脳になりたい人は誰もいません。みな、効率よくはたらく健康で強い脳が欲しいものです。その脳を手に入れるには、心配事をうまくコントロールする方法を学ばなければいけません。これは、不安で苦しむのを予防できるスキルです。
心配事をコントロールするのに必要な「筋肉」を鍛えるためのとてもシンプルで重要な鍵をいくつか見てみましょう。
生きる時間と心配する時間がある
- この方法は、効率よくシンプルな方法です。1日のある時間を心配する時間にあてることを薦める認知行動ツールに基づいたものです。朝の15分と晩の15分にその時間をあてます。
- この時間に、私達を悩ませているものについて、またその解決策となり得るものについて考えなければいけません。
- この時間枠以外で、心配事について考えてはいけません。
良い思い出を拠り所とする
自分の心配事を一旦横に置いておく覚悟がなければいけません。リラックスできてポジティブになれる「頼みの綱」がそうするのに良い方法となります。例えば、ポジティブな感情や思い出を思い出すことが役に立ちます。
まとめとして、こうした方法は時間がかかり、強い意志、忍耐、決意を必要とすることを心に留めておくことが必要です。自分の心と頭を手なづけ、不安な脳を落ち着けることは簡単なことではありません。
ですが、不安な脳の主導権を握ることは可能です。要は、心配事に注目するのを止め、プレッシャーを手放し、新しい目標を設定すればいいのです。
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