復讐しないことが一番の復讐: 前に進んで幸せになろう
一番良い復讐の仕方は、復讐しないこと、悪意に対して笑顔を見せられることです。怒りを抑えて自分はこんなに幸せになれるのだということを示すことです。冷静に頭を使って前に進むこと以上に効果的な方法はありません。そのためには、もうそれについては考えなくてよいのだ、という強い決心と平和な心持ちが大切です。
孔子は、「復讐をする前に二つ墓場を掘りなさい」という格言を残しています。一つは自分用、もう一つは相手用です。復讐をしたところで、自分にも相手にも良いことはありませんよ、ということですね。しかし、それでも誰かに仕返しをするという行為は時に魅力的に見えてしまうようです。
「過ちは人の常、許すのは神の性」アレキサンダー・ポープ
復讐は魅力的である、と言いましたが、それには理由があります。つまるところ、私たちはみんな人間なのです
復讐に魅了された私たちは、それを正当化しようともします。では、その裏側に隠された心理学的メカニズムには、どのようなものがあるのでしょうか?
人間の欲望としての復讐
人は誰でも、人生の中で不当な扱いを受けて腹が立ったり、傷ついたりしたことがあると思います。そんな時、心に「復讐」の魔が差すのです。普段道徳心を司っている方位磁針が数度ずれた人間は、他人の不幸という蜜を求めて彷徨います。
ここで一つ明確にしておきたいのが、著名な犯罪心理学者のゴードン・E・フィンリーの指摘、「復讐は道徳心とはあまり関係がない」という点です。
復讐とは、衝動的に行われます。怒りと憎しみから解放されるための手段の一つであるとも言えるでしょう。チューリッヒ大学のアーネスト・フェール教授の研究によると、ビジネスで下される意思決定の40%以上は、競合相手への「仕返し」を目的に行われているのです。
同じことは犯罪現場でも言えます。犯罪目的の半分以上は誰かへの怒りを発散させることであることがわかりました。つまり、「良い復讐」というのは存在しないということがわかります。
さらに、状況が過酷になればなるほど、私たちの攻撃性も増します。最初に自分を傷つけた相手に対しては、モラルも何も気にならなくなってしまうのです。
一番の復讐は、復讐ではない
それを口で言うのは簡単かもしれませんが、人間の一般的な心理構造や常識で考えると難しいのは無理もありません。だからこそ、多くの宗教や哲学者たちが口を揃えて、復讐はするな、と言うのでしょう。ここでは、シンプルに心理学の観点のみで考えてみましょう。
執念深い人間というのは、心理学で分析をすると、どのような特徴があるのでしょうか?
執念深い人の特徴
- 感情のコントロールができない
- 自分をあまり知らない
- 統一された絶対的な価値観を知っている、と思い込んでいる。確かに、法律など人が守るべき基準というのは存在するが、絶対的に正しい物事の価値観というのは存在しない
- 白黒はっきりさせたがる。自分と相手のどちらかが必ず正しく、もう一方は間違っていると考える
- 他人に共感できない
- 水に流したり、相手を許したりできない。過去に執念を持ち続ける
以上に挙げたように、誰かを恨んで復讐をしたり復讐しようと計画したりすることに長所は何一つないということがわかりますね。衝動はあなたの正常な判断力を奪います。そして、より良い人間になって、人生を謳歌するチャンスを逃してしまうのです。
「巌窟王」のような勧善懲悪に魅了されるのは人の性なのかもしれません。しかし、そこには苦しみや孤独の他に何も生まれません。ですから、「一番の復讐は復讐しないこと」であることを忘れないようにしましょう。結局、振り切って次に進み、幸せな姿を見せることが、一番の復讐