意思決定疲れ:あなたを捕らえるクモの巣
この記事を読んでいるあなたも、気づかぬうちに意思決定疲れ(決断疲れ)による影響を受けているかもしれません。信じ難く思えるかもしれませんが、科学的調査によって、平均的な人間は1日の間に約3万5千もの決断を下していることが示されています。これほどの数なら、決断疲れが生じても仕方ないですよね?
このたくさんの決断が見過ごされてしまうのは、これらの大半が些細な事柄にまつわるものだからです。「起き上がろうか、あと5分寝ようか、どうしよう?」、「今日は何を着て行こう?」、「朝ごはんは何を食べようかな?もうすでに遅刻だ!」ご覧の通り、決断疲れを感じている人はそれほど少なくないのです。
決断疲れという概念を生み出したのは、社会心理学者のロイ・F・バウマスターでした。「どれほど理性的で高潔になろうと努めたところで、生物学的な代償を払わない限り次から次へと決断を下し続けることなどできない」、と彼ははっきり警告しています。そして「疲れ」こそがまさにその代償であり、その結果として人はたくさんのミスを犯します。
“恐怖心を基にして決断するのは絶対にやめてください。希望や可能性に応じた意思決定をしましょう。起こるべきではないことではなく、起こるべきことに基づいて決断を下してください”
-ミシェル・オバマ-
意思決定疲れ
どんな種類のものであれ、疲れというのは人の能力やポテンシャルを引き下げ、真昼間から人を「もうベッドに入って眠りたい」という気分にさせます。努力し過ぎたというわけでもないので、その理由が自分でもよくわかりません。これは、疲労とは蓄積していき、時間をかけて人にダメージを与えるものだからです。そうなるとストレスが増大し、効率性が下がっていきます。
このクモの巣に囚われてしまうと、かなりの確率で無感動な思考態度が表出し始めるでしょう。何もかもが全て同じに感じられ、その他のことをやらずに済むようにできる限り早く自分のタスクを完了させたいという気持ちだけが残ります。全てが自分の理解の範疇を超えているような気がしていますし、日々の雑務にかなりうんざりしているため、脳みそが死んでいるかのように感じてしまうのです。
実際のところ、人間が使用することのできる精神的エネルギーの量は限られています。頭脳は年中無休で働き続けられるマシンではありません。そんなことをしたら悪い結果が伴うのは当然です。脳が疲労すれば、ミスをしたり不適切な決断をしてしまったり、物事を先延ばしにしたり、精神的苦痛が生まれることになります。では、これに対してどう対処すれば良いのでしょうか?
自動化
人間の脳は、体系的に取り入れられるような誤差の少ないパターンが存在していると、より効率的に機能できるようになります。したがって、決断疲れを回避するためにベストなのはできる限り全てのことを自動化し、ルーティーンに従うことなのです。構造化されていればいるほど望ましいでしょう。
でも、ちょっと待ってください。これではロボット人間のようになってしまうのではないでしょうか?その答えはイエスであり、ノーでもあります。ベストなのは、たくさんの不愉快なタスクからは脳を解放しつつ、創造性や高度な思考が活躍する余地は残しておくことです。
それでは、どんな事柄であれば自動化して良いのでしょう? 例えばバラク・オバマは7年間の間、全ての催しに着て行く衣装を事前に決めていたそうです。アンゲラ・メルケルも完璧なコーディネートのリストを常に利用できるようにしており、何を着るか選ぼうとして時間を無駄遣いせずに済むようにしています。あなたも同様に、毎日の服装を決めておくところからスタートしてみてはいかがでしょうか。ここでのカギは、日々の決断の数を減らすことです。
全てを前もって計画しておき、決まったルーティーンに従うというのは退屈そうに見えますか? もしそうなら、その考えは間違いです。実は、ルーティーンを設定し、忠実に守っている人々の方が幸福度が高いということが研究によって示されています。具体的に言うと、こういった人は決断疲れに苦しめられずに生活を送れているのです。
意思決定疲れを回避するためのその他のキーポイント
このテーマについて研究している学者たちは、特に重要性の高い決断は1日の最初にすべきである、と推奨しています。なぜなら、脳が最もエネルギーを有しており、最も明晰に働けるのがこの時間帯だからです。したがって、1日の終わりに重大な決断をするのはやめてください。同じことがタスクに関しても言えます。一番難しいタスクは一番最初にこなすようにしましょう。
まとめると、1日の後半はそれほど労力を要しない物事に充てるようにすべきだということです。これにより効率性が上がるだけでなく、精神状態にも良い影響が及ぼされます。つまり、自分のことをより有能で計画的だと感じられ、疲労感も少なくなるのです。
決断疲れを回避するためのもう一つのカギは、気が散る原因になるような行為を排除することです。例えば、受信したメッセージを読むことなどです。最後に、そういったエネルギーを使わずにこなせるような、しかし受け取る刺激の量が増え、たくさんの小さな決断をする羽目になるような作業を行うための時間を別個に毎日2、3時間設けましょう。
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Narducci, A. S. (2007). La fatiga de decidir o si acaso vale la pena ser juez. In Estudios de derecho en homenaje a Raúl Tavolari Oliveros (pp. 605-612). Lexis Nexis.