依存性パーソナリティー障害のベストな治療法
依存性パーソナリティー障害に対する認知療法では、個人が自立し、徐々に自身の自主性と能力に対する矛盾した考えを変えていきます。
依存性パーソナリティー障害とは?
神経障害の診断と統計マニュアルによると依存性パーソナリティー障害がある人は、誰かに面倒をみてもらわないといけないという必要性を異常に感じるとされています。これは、服従的な行動、異常な依存、そして離別への恐怖感へと繋がります。成年期の始まりに症状が現れることが多く、色々な場面で見受けられます。下記の中から最低でも5つの症状があらわれることがよくあります。
- 日々の生活において、他人のアドバイスや助言がなければ物事を決めることができない。
- 人生の重要な場面において、他人に責任をとってもらう必要がある。
- サポートや賛同を失うのが怖く、意見の違いを表現することが難しいと感じる。
- プロジェクトなど自発的に物事を始めることができない。これは自分の決断や能力に対する自信の欠如によるもので、モチベーションや活力の欠如が原因ではありません。
- 他人からのサポートや共感を得たい為、自分がやりたくないことも相手のために自分からやってしまう。
- 一人になると、不安で惨めに感じる。これは自分で自分の面倒を見ることができないという根拠のない不安が原因です。
- 近い関係を失うと、サポートと思いやりを求めて急いで別の関係を探し出す。
- 捨てられる、または自分で自分の面倒を見ることへの、非現実的な心配と恐怖を感じる。
乏しい自己概念
依存性パーソナリティー障害に悩まされている人は、自分がしたいことはできないと信じ込み、自身に対してとても低い自己概念をもっています。自分にはその能力がなく、どうにもできないので、自分より強い誰かに助けてもらわないといけないと信じ込んでいるのです。
このような考えを自分自身に対して持っていると、人生を導いてくれる誰かを探してしまうのは当たり前のことです。その誰かを探し出し面倒を見てもらうことは、この恐ろしく恐怖に満ちた世界で自分は不十分で弱いと感じでいる人には、完璧な解決策に見えてしまいます。
依存性パーソナリティー障害に対する認知療法は、患者の自己概念に働きかけ、この異常なリアクションを軽減する目的があります。達成するためには、指示発見やソクラテス式問答法などの認知テクニックを用います。また、行動実験や他の専門的なテクニックが用いられる場合もあります。
依存性パーソナリティー障害はどのように進行するのか?
この障害も他の障害と同じように、幼少期や成年期の経験に対する反応が原因で発症し進行していきます。根底にあるのは、孤独に対する異常な恐怖感です。これは、社会からの”攻撃”に対して自分を守ることができないという考えがもたらすものです。
患者には、幼少期に何らかの形で親密さの欠如を経験した人が多いようです。そして、辛さの原因となる、内面の空虚感を感じながら成長し、それを埋めるために誰か(多くの場合パートナー)に頼ってしまうのです。
また、養子や、長期的な病気で誰かに頼らざる得なかった人が発症する場合もあります。
親に過剰に頼り、また親も過保護に育ててしまうと、依存性パーソナリティーを発症してしまう可能性が高くなります。
多くの場合、パートナーが患者を補ってくれます。しかし、これは依存の必要性を高め、自身で行動するモチベーションの軽減に繋がってしまいます。この障害に悩む人のパートナーには自分の決断を相手に押し付ける傾向にあるナルシストなパートナーが多いものです。そんな人は聞かれていなくても、自分の意見を主張することになんら戸惑うことはありません。
ですから、依存している人は日々の生活において、決断する必要がまったくありません。パートナーが何を食べるか、どのように家を飾り付けするか、何人子供を持つかなど、全て決めてしまうわけです。
依存性パーソナリティー障害の認知療法
依存性パーソナリティ障害の認知療法では、患者の認知的なひずみを解析することから始まります。患者の考え方は、自立から真逆であることがほとんどです。
依存性パーソナリティー障害の患者は下記のような考えを持つ傾向にあります。
- 誰かが世話してくれないと生き抜いて行くことができない。
- 自分が持っている、またはこれから手にする資産ではとうてい人生やっていける気がしない。
- 自立とは完全に自分自身だけで生きていくことである。
また同じように、自分の能力に対して同じような考え方を持っています。何かやることを与えられても、自分にはそのタスクを達成する能力がないと考えてしまいます。自分のパートナーの方が、物事をよっぽどうまくこなすことができる、または、自分がやるとうまくいかず、失敗してしまうと思い込んでいるのです。
患者が自立するのを助けるには
この自立に対する歪んだ考え方を変える必要があり、徐々に患者が自身と、患者が依存している周りの人間とを別に考えれるように、専門家が手助けすることが大切です。また患者は、自身とセラピストも分けて考えなければいけません。
また、治療の初期の段階で「依存」や「自立」という言葉を使わないのも大切です。なぜなら、患者のほとんどが自分の障害に気づいていない場合が多いからです。治療が進むにつれて自分自身で障害に気付く方が、患者のためになります。そうすることで、最終的にに患者自身から障害について口にすることで、治療に専念することに繋がります。
初期の治療ではある程度の依存が必要です。これは、治療の大半をセラピストが主になり行うからです。しかし、治療が進むにつれ徐々に依存の度合いが減少します。
ソクラテス式問答法
治療の中で、患者が積極的に治療に関わるには、ソクラテス式問答法を用いるのが効果的です。セラピストが患者に、患者の感情を説明したり、またはどのような行動を取るべきか、どのように対応するべきかなどを語っても意味がありません。なぜなら、治療しようとしている「依存」をよけいに強めてしまうことになるからです。
患者自身が、少しずつ治療の材料を提案していくのがよいでしょう。治療の際に、どの分野やテーマを取り上げるのかは患者に決めてもらいます。そして色々な質問のあと、自身でまとめを考えます。
セラピストは注意深く治療を進める必要があり、患者の救世主になろうとしてはいけません。このような障害がある患者の治療はゆっくりで、もどかしいものです。患者を救おうとして、こうするべきだと言ってしまうことも少なくありません。しかし、これは状況を悪化させてしまいます。
プロフェッショナルの境界線を確率する
専門家もプロフェッショナルの境界線を確立するのは大切なことです。患者がセラピストに恋心を抱いてしまう事も稀ではありません。患者とセラピストの関係が、治療の範囲を超えることは決してないということを、治療の初日からはっきりさせておくことが大切です。
テクニックの一つとして、患者に何について話したいか、日記に書き留めてもらうというのもよくある方法です。また別の方法として、自分の能力や達成したことについて詳しく書き留めてもらうという方法も効果的です。
この方法では、患者が以前には避けていたシチュエーション(自分では乗り切れることができないと思い込んでいた状況)を徐々に経験していくことが大切です。依存している人が、決断の優先順位を理解するのもいいでしょう。患者に、決断しなくてはいけない事を全て書き出してもらいましょう。
セルフコントロールセラピー
最後に、依存性パーソナリティー障害の治療に効果的だとされている、セルフコントロールセラピーを紹介します。この治療法では、患者が、自己観察、自己評価できるように導き、現実的な目標をたて、自己を確立していくのを助けます。
依存してしまっている人は、とても高い基準を持つ傾向にあり、そしてそれを達成するのに必要な自分の能力を過小評価してしまいがちなため、このセラピーはそういった考えを治療するのに効果的です。セルフコントロールセラピーは、依存性パーソナリティー障害をもつ患者の治療にとても有効です。
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- Beck, A., Freeman, A., Davis, D. Terapia cognitiva de los trastornos de personalidad. Paidós. 2º edición (2015)
- American Psychiatric Association (APA) (2014). Manual de Diagnóstico y Estadísitico de los Trastornos Mentales, DSM5. Editorial Médica Panamericana. Madrid