自己敗北性パーソナリティ障害

自己敗北性パーソナリティ障害

最後の更新: 20 12月, 2018

1987年、一部の心理学者が、自己敗北性パーソナリティ障害(マゾキスティックパーソナリティ障害とも知られる)を『精神障害の診断と統計マニュアル』の新しいパーソナリティー障害のカテゴリーとして提唱しました。様々な審議がおこなれた結果、障害の名前が変更され、現在は統計マニュアルからは除外されています。

この障害の名前が「自己敗北性パーソナリティ障害」に改名されたのは、女性のマゾヒズムの心理分析的な概念との連想を避けるためです。さらなる研究が必要であるとされ、『精神障害の診断・統計マニュアル』第3版改訂版 (DSM-III-R)には付録として収載されていました。

1994年、社会的・政治的な理由から精神障害の診断・統計マニュアルから完全に除外されます。この病気を患っている人は未だ苦しんでいるにもかかわらず、除外されたことで、この病気に光を指す研究が格段に減ることとなりました。

マゾヒズムの概念は、19世紀のクラフト=エビングの説明に起源があります。彼は、自分自身を支配的なパートナーからの肉体的な痛みに屈服させることで性的快楽を得る人のふるまいとして説明しています。後に、フロイトや他の精神分析家が、非性的な服従的ふるまい(精神的マゾヒズム)のパターンを解説しています。

自己敗北性パーソナリティ障害

この性格を持つ人は、自分の必要性の前に他人の必要性を優先します。他人の必要性を一番に考えるのです。

彼らの人生に意味を与えるのは、完全に相手に服従することです。相手を喜ばせるために、自分の望むものを完全に諦めてしまう人もいます。満足感を求めているわけではありません。自分の努力を他人の人生に向けることで喜びを得るのです。オールダムとモリス(Oldham and Morris, 1995)は、自己敗北性パーソナリティ障害を定義する特徴を提案しています。詳しく見てみましょう。

苦しむカップル

自己敗北性パーソナリティ障害の特徴

自己敗北性パーソナリティ障害の基本的な特徴は、自己敗北的なふるまいの病的なパターンです。この障害を持つ人には次の傾向が見られます。

  • 他人のニーズに応える。頼まれなくても相手を満足させようと努力する。 
  • 競争心がなく野心家でもない。
  • 他人に仕えるために何でもする。
  • とても他人に対する思いやりがある。
  • 他人に対して寛大で、残酷に他人を非難したり判断したりしない
  • 注目の中心にいるのを好まない。
  • 忍耐強くて、不快感にかなりの耐性がある。
  • 皮肉っぽかったり偉ぶったりすることがない。
  • 倫理的で、正直で、信頼できる。
  • うぶで純粋。
  • 他人には隠された動機があるとは疑わない。

さらに、楽しい経験を避けたりはねつけたりします。自分が辛くなるような状況や人間関係に自分をはめてしまうのです。さらに、他人が自分を助けることを許しません。

自己敗北性パーソナリティ障害の診断基準

マゾキスティックパーソナリティ障害または自己敗北性パーソナリティ障害は、『精神障害の診断・統計マニュアル』第3版改訂版 (DSM-III-R)によれば次の基準によって特徴づけられます。

A) 青年期ごろから始まり、様々な文脈で見られる自己敗北性的なふるまいのパターン。この障害を持つ人は、喜びを生み出す経験を避けたり過小評価したりする。自分が苦しむような状況にひかれ、他人が自分を助けることを阻止する。

  1. より良い選択が可能であるにもかかわらず、落胆、失敗、虐待に導くような人や状況を選択する。
  2. 他人が助けようとすることを拒否したり効果がないとしたりする。
  3. ポジティブな個人的な出来事(新しい達成)などの後には、うつ、罪悪感、痛みを伴うふるまいで反応する。
  4. 怒りを促したり他人からの反応を拒否して、傷つき、敗北感を得て、恥をかいたように感じる。
  5. 快楽の機会を拒否するか、(それなりの社交能力や喜びに対する可能性があったとしても)楽しんでいることを認めない。
  6. その能力があるにも関わらず、自分の目標を達成するのに重要な課題をこなさない。
  7. 自分のことを良く扱ってくれる人に興味がない、あるいは拒否する。
  8. 受け手からすれば有難迷惑な極端な自己犠牲を行う。

B) Aのふるまいは、物理的、性的、心理的な虐待への反応としてのみ起こるわけではない。

C) Aのふるまいは、その人がうつ状態にあるときだけ見られるわけではない。

悩む男性

お分かりいただけると思いますが、マゾキスティックパーソナリティ障害または自己敗北性パーソナリティ障害は、自分を傷つけ、つまずきや苛立ちを募らせる変わった傾向を見せます。これに介入するのは簡単なことではありません。こういった意味で、患者は治療を拒みます。他人に服従している必要があると感じているためです。そのために、敗北主義的な方法を使って、治療のための介入を長く困難にさせます。

メモこの記事では、便宜上障害という言葉を使っています。現在マゾキスティックパーソナリティ障害または自己敗北性パーソナリティ障害はまだ議論されているトピックです。障害というよりは、問題というほうが正しいかもしれません。

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