悲しみが他の感情より長く続くのはなぜ?
なぜ悲しみは他の感情と比べて長く続くのでしょうか?あなたもきっと、人生のどこかで悲しみを感じたことがあるでしょう。では、理由もわからずにその痛みが長く続いたことはありませんか?悲しみは、まるで最悪の相棒のように心に潜り込むことがあります。そうなると自分の内側に引っ張られ、数日あるいは数週間もの間生活のすべてに影が落ちたように感じます。
「悲しみは、生きているという事実を証明する振動の一つだ」というのは、アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリの言葉です。彼の言うことは間違ってはいないかもしれません。失望、喪失、悲しみ、二度と見ることのない物事のエコーと向き合うといったような、人の存在が頻繁に経験することを示す明確な例となる感情はそうありません。
はっきりしているのは、悲しみから逃げたり、これをいらないおもちゃのように隠すことはできないということです。驚き、幸せ、退屈、嫌悪、怒りなどの感情よりも、悲しみは長く続きます。それには理由があり、この記事ではこのことについてお話しします。
悲しみが他の感情より長く続く理由
悲しみは悪く評価されがちです。どうしたらいいのか分からず、悲しみを抱くと人はそれをできるだけ早く取り除こうとします。それだけでなく、悲しんでいる人を見ると「元気出して!悲しまないで。人生は短いんだから!」と言いがちです。
集団的イデオロギーの中、私達は悲しみを弱さと結び付けがちで、その為に対処するのが苦手なのかもしれません。感情の分野でパイオニアの心理学者ポール・エクマンは、これらの心理生理学的一面を理解すると、より良いメンタルヘルスを楽しめるようになるだろうと言います。
まず、エクマンが著書『Knowing Our Emotions (自分の感情を知ること、ダニエル・ゴールマン共著) 』の中で、悲しみが他の感情と比べ長く続くのには、これが他の多くの感情により作られているためだという具体的な理由があると述べています。言い換えると、悲しみは悲しみそのものから成っているのではありません。これはまるで瓶のコルクのようなものです。コルクを開けると、怒りや苛立ち、恐怖さえも見つかるのです。
悲しみを解剖し、それが何でできているかを分析することにより、それを理解し前に進むのに役立ちます。一方で、その他の要因からも悲しみが長く続く理由が説明できます。
悲しみは、原因となる出来事とその解釈に準じる
あなたは5年間誰かと付き合っていて、そのパートナーにあらゆることを捧げてきたとします。うまくいくようできる限りのことはしましたが、関係を終わらせるのが最も健全であることに気づきます。そしてその愛のためにたくさんの時間を費やして戦い別れた後には、無限の悲しみを抱くでしょう。そしてこの悲しみは数か月、数年と続きます。
このような立場になったとき、別れをどこか安堵のように捉える人もいます。この小さな一例は、非常にシンプルなことを示しています。悲しみが他の感情より長く続くのは、引き金となるものが深いためです。トラウマになるような出来事と関連している場合も多々あります。そうであっても、すべてはこれらの経験を自分がどう解釈するかによるのです。
その出来事に対する処理の仕方に加え、コーピングスキルもものを言います。逆境に立ち向かう時、よりレジリエンスが高い人がいる一方で、悲しみを長く続かせる無力な状態に後退する人もいます。
反芻の危険性:思考が悲しみを大きくする時
ルーヴァン・カトリック大学で、人間の感情をより理解することを目的とした研究が行われました。研究者は、幸せ、恐怖、恥等がどれほど続くかという心理生理学的事実に関心を持っていました。その中で一つ分かったのは、幸せは長続きする感情ではないということです。
- 恐怖、驚き、退屈、怒りなどの感情はとても短いものです。一方で、分析された感情すべての中で、悲しみが最も長く続くようでした。
- 研究者は、考えられる理由を探る努力をしました。悲しみはなぜ数週間、数か月続くのでしょうか?答えは、人の思考パターンにあります。
- 反芻し心の中での引き金となる思考を繰り返すことで、悲しみを消すことが難しくなります。
失望、喪失、苦しみの原因となるものを解放することができなければ、悲しみが長続きするだけでなく、その度合いが増すことになります。
また、他にも関係する要素があります。悲しみは、具体的理由がなくても現れることがあります。この場合、自分の思考によって悲しみの炎があおられ、苦しみやネガティブさが増してしまうのです。
悲しみが他の感情より長く続くのは、悲しみに抵抗するから
人が悲しみへ抵抗したり回避したりしようとするのも、悲しみが長く続く理由の一つです。この感情の受け入れを拒否することで、対処が非常に難しくなるのです。
感情的に健全なアプローチとしては、各感情を認め、通常ではない状況で複雑な感情を覚えることは正常だと理解することです。それを理解し受け入れ、対処法を知ることで、生活のバランスを取ることができます。自分の感情が正常であると認めることで、強さやレジリエンスと共に逆境へ立ち向かうことが可能になります。
ですので、悲しみについて学んだ多くのことを再考する時が来ているのかもしれません。強さとは、すべてを我慢し大丈夫だと振舞うことではありません。勇気を持つということは、転んでそこから再び起き上がり、気分を良くするために泣き、内省することで安全な場所や知恵を見つけることを意味します。
感情を否定したり、強さを偽ったり、何によっても傷つくことはないかのように振舞っても、傷は深くなり悲しみは長く続くだけです。アントニオ・ダマシオが指摘するように、人は感情的になる合理的存在ではなく、合理化することができる感情的存在です。自分の感情をきちんと理解することで、より満たされる、健康的な生活を送るのに役立つでしょう。
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- Philippe Verduyn, Saskia Lavrijsen. Which emotions last longest and why: The role of event importance and rumination. Motivation and Emotion, 2014; DOI: 10.1007/s11031-014-9445-y