感情的な理由付け:感情によって思考が陰るとき
感情的な理由付けと は、自分の感じていることに基づいて考えや信仰を形成する認知過程です。最もよく見られる自己破壊の形でもあります。例えば、悲しいと感じたら、それは悪いことばかりが起こったからです。嫉妬を感じたら、それはパートナーが秘密を持っているからです。自分が思いもよらないときに相手が浮気をすると思い込みます。
感情に即した思考は、思っているより頻繁にわたしが行っていることです。 これは脳の罠で、そのせいで正しく自分の感情を解釈して制御することが困難なことがあります。この場合、私たちが観察する証拠もあまり関係なくなります。すべての目標や理性的な事実が、感情によって推測された「真実」にそぐわせるために、故意に無視されます。
「わい曲された象徴的な意味、意味をなさない理由付け、間違った解釈によって思考の身動きが取れなくなったら、本当の意味で盲目で聾になる。」
-ジョン・A・ベック-
こういった意味で、仕事場と家は全く別の場所であると理解することが、もはや意味をなさなくなります。家に帰ってもイライラして、疲れて、怒って、パートナーがちょっと不適切な発言をしたときに、自分のネガティブな感情から怒鳴り散らしてしまったりします。すべての人が自分のこと怒らせようと、不幸せにしようと信じ込んでしまう時があります。
間違いなく、こういった例をたくさん見つけることができるでしょう。その中には、かなり不合理なものも存在します。例えば、誰かが遊園地で最も怖い乗り物に乗ろうと決めたとします。その後すぐに、その人は乗っている間にみんな事故で死ぬと強く思い込みます。本人とっては本物で差し迫ったこのリスクから逃れたいという強固で必死な思いで、自ら安全装置を外します。こうして自分自身を本当の危険にさらしてしまうのです。
感情の理由づけによって、自分自身をわい曲した思考の渦に押し込めます。そこから無傷で出てこられることはほとんどありません…
感情の理由づけ:とても原始的なメカニズム
ポール・D・マクリーンの脳の三位一体論を見てみましょう。ここでは、2つ目の脳、大脳辺縁系が関係しています。この考え方は爬虫類脳を基礎に形成されており、感情的ふるまいを制御・形成します。多くの人にとって、大脳辺縁系は古典的条件づけやオペラント条件づけなどを処理する場所です。また、人に意味もなく非合理的な行動させるのも、この部分が原因です。
しかし、これは神経科学にとって確固たる形式ではありません。人間の脳はユニークで、複雑につながっていて、洗練された構造であり、全てを制御する一つの部位が存在しないのです。
しかし、否定できないのは、多くの場合、人は感情がコントロールを取って理由付けをすることを許してしまうということです。感情の力が現実とは全く関係ない思い込みを形成する原始的な罠にはまってしまうのです。
人は自分の分析、振り返り、帰納、論理の能力をないがしろにします。安定した関係を形成して、与えられた状況で効果的な進展を見せるために必要な論理を忘れます。また、感情的理由付けは、アーロン・ベックによって1970年代に確立された認知療法の基礎のひとつです。彼の理論とアプローチは、この不健全なメカニズムをより良く理解するのに役立ちます。
それでは詳しく見ていきましょう。
アーロン・ベック:感情と自分の周りの現実は同じではない
日の出の森を散歩している時や、山の頂上にいるときに、厚い煙に覆われていることに気づくことがあると思います。しかし、煙は火事によって起こったものではありません。燃えているものはありません。ただの霧です。心の中の理性と感情の微妙なバランスを整えるのも、このようにちょっとしたことなのです。これを可能にすることで、より正しくて役に立つ結論を日々の中で導き出すことができます。
しかし、感情的な衝動に気を取られてしまう人は、すべてをぼやけさせてわい曲する恐怖に連れ去られます。穏やかな草原に火を見ます。さらに、この現象は自分の精神によって行われる破壊活動としてアーロン・ベックが定義しています。最もネガティブな感情によって自分自身を導くことを許してしまう、認知の歪みのタイプです。
私たちの多くは、感じることを意識していません。反応がどこから来るのかを自分自身に尋ねることもありません。気づかないうちに、自動思考がコントロールを奪ってしまうのです。
論理的な理由付けを阻害するネガティブなメカニズム
- 先延ばしも、感情的な理由付けによって起こる興味深い現象です。何か心配していることがあるときに起こります。それに直面するのではなく、先延ばしにします。失敗すると思っている活動があると、同じように先延ばします。この継続的な決断の先延ばしは、純粋に何があってもリスクを回避したいと人をコンフォートゾーンに縛り付ける、感情的・感覚的な部分に左右されます。
- 裏付けに乏しい、あるいは特定の出来事の極端な一般化において、先延ばしが利用されます。例えば、「好きな人が自分のことを拒否したら、恋愛は私には向いていない」と感じている場合です。
- 最後に、自分が今感じていることに応じて、他人のふるまいや感情的な状態を判断します。これは、感情的な理由付けをすることに慣れている人によく見られる特徴です。
お分かりいただけるように、人は火のないところに本物の煙を作り出してしまういます。これによって生活の質、人間関係、自己成長に影響があります。
感情的な理由付けと戦う方法とは?
アーロン・ベックのアプローチに基づく認知行動療法は、このタイプの認知の歪みに対抗するのに適しています。基本的な方法を以下にまとめてみました。
- 自分の本当の思考を特定しなくてはいけません。これを行えるようにするには、私たちの思考は感情に直接的な影響があるということを覚えておきましょう。感情を特定して、評価しなくてはいけません。
- 感情的な理由付けに左右されるとき、実は感情は混乱しています。感情的な理由付けはストレスを悪化させ、鬱が深まり、不安症は辛くなります。ネガティブな感情を感じたら、立ち止まってそれについて考えることが重要です。分析して、吐き出して、それを分解しましょう…
- 何かを批判する時、それがどんなに小さなものでも、その裏にある感情を調べる必要があります。その特定の考えや評価に至った思考を分析しましょう。
- 今の状況を別の視点から見ることができないか自分自身に尋ねてみてください。例えば、自分のことをだました人を信じた自分がうぶだったと自分に言っているなら、「誰も信用できない」という結論に至ってしまうかもしれません。そうではなくて、「自分はうぶではない。今日は重要な教訓を得た。次は同じ罠にはまらない。」と考えてください。
感情の理由付けにおける問題のひとつを理解していただけたかと思います。感情が推測された「真実」に変わることを許してしまうと、それを変えるのは困難です。私たちは自分の感情の宇宙を制御しなくてはいけません。
「考えることが自分を形成する。思考で自由に、幸せに、有能になろう。」
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