危機はなぜ私たちの長所を引き出してくれるのか?

21 6月, 2020
個人あるいは家族の機能を差別化しているものは危機の有無ではなく、危機的状況へのそれぞれの対処方法です。また、このようなクライシスが個人的あるいは家族全体の成長や発達にどう貢献してきたかという点も注目に値します。

“crisis”(クライシス、危機、重大局面)という言葉の語源は、「私は判断し、選択する」という意味の“krino”というギリシア語の言葉です。この概念は、様々な観点や機会に向き合わなければならない状況での選択や一場面を示唆しています(Onnis, 1900年)。

クライシスは、個人とその周りの環境との間の自然なホメオスタシスのプロセスだと考えることが可能です。私たちは「物の見方のウェイトを変える」ことで、あるいは考え方の枠組みを変えることで、そのバランスを整えることができます。これにより、新しい適応の仕方を提示してくれるような変化を引き出せる可能性が生まれるのです。

個人あるいは家族の機能を差別化しているものは危機の有無ではなく、危機的状況へのそれぞれの対処方法です。また、このようなクライシスが個人的あるいは家族全体の成長や発達にどう貢献してきたかという点も注目に値します。一方で、クライシスの本質により、あるいはその重大局面が生まれた状況により、単にそれが私たちにとって重荷になったり有害になったりする可能性もあります。

人間が経験するクライシス(危機、重大局面)の種類

一生涯のうちに、人は誰しもが一連の重大局面に直面することになります。これらは様々な形で分類することが可能ですが、一般的には以下の二つのタイプに分けられます。

  • 規範的なもの(予想されるもの):これらは通常の生活サイクルの中だけに限定される、予想の範囲内のクライシスです(結婚、職探し、家探し、退職など)。
  • 非規範的なもの(予想できないもの):これらは状況に応じて偶発的に生じる、予想のできないクライシスであり、一つあるいは二つ以上の事象によって引き起こされます。こういった事象は突然発生するため、迅速な対応が必要になります。

このように、個人あるいは一家族に起こるクライシスには予測が可能なものもあれば不可能なものもありますが、全てに共通する点が一つあります。それは、その原因となっている問題の解決は非常に困難であるという点です。メンタルヘルスの問題が関わってくるケースでは、どのようなクライシスも同じ結果をもたらしますが、それによって個人が経験する内容はそれぞれ異なってきます

危機 長所

クライシスを決定付けるものとは?

私たちはウォータープルーフの泡の中に個人的なクライシスを抱え込み、孤独に苦しむわけではありません。こういったクライシスによる影響を決定付ける要因は、以下のような三つのタイプに分類することが可能です。

  • クライシスを突然引き起こした事象の深刻さ。
  • 家族のリソース:柔軟な役割分担、社会経済面・機能面の特徴、愛情、情緒面のサポート…
  • 社会的なサポート:家族、友人、コミュニティ、または有害な影響を最小限に抑えるために手を差し伸べてくれるその他の人々。

これらのクライシスを説明しようとする理論は様々あり、それぞれ着目点も異なっています。例えば、人口動態事象の理論、認知理論、コーピングメカニズム理論、過去の事象の再活性化理論などです。Novack(1978年、Slaikeuにより引用、1996年)は、ある事象がクライシスを発生させる確率は要因の数に左右される、と提唱しています。この要因とは、事象が起こった状況やその強度、持続期間、そして個人的な発達に応じた支障の度合いなどです。

人類:レジリエントな種族

人類は、文明が生まれて以来ずっと絶え間ない戦争や巨大な危機、災害、そして暴力から復活しようと努力してきたと考えられています。クライシスは前の世代から次の世代へその爪痕を残し、引き継がれてきました。また、私たちの頭脳と心にも持続性のある衝撃を残します。

では、なぜクライシスを経験してもそれほど影響されない人もいれば、深刻な影響を受けてしまう人もいるのでしょうか?その理由はメンタルヘルスに関連する大きな問題の一つと関連しています。それは、その慢性度です。つまり、人生の中で危機的状況や重大局面が繰り返し起こったり、それに対処するためのリソースをほぼ持たない場合、クライシスによる弊害が非常に大きくなるということです。

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どんなクライシスからも人生へのメッセージを読み取れる

クライシスを経験する人は皆、そこから自身の人生に対する何らかのメッセージを受け取っています。そのメッセージは意識的に処理されることもあれば、されないこともありますが、何れにせよその人の人生の「脚本」に組み込まれることとなります。Caplanは、クライシスが生じた後の最初の三日間にその人物に起こることへの自身の関心について記述しました。彼は、これがどうクライシスの種類と組み合わされ、そしてどうその人の認知機能に影響を与えているのかを調査しました。Dyregrovもまた、このテーマについて論じています。彼は、こういった要素の組み合わせにより、人々の様々な適応メカニズムがそれほど多岐に渡る理由を説明できることに気づきました。

こういった危機的状況の痕跡をどう自分の中に蓄積していくのかが、最終的に私たちの人生の「脚本」で描かれる未来に投影されることとなります。自分が感じることや、そういった事象が自分にとって意味するものから逃げ出すことは不可能です。しかし、将来的にこういった印象を新たな、そしてもっとポジティブなメッセージとして捉え直すことは可能です。

こういったクライシスが起きた後にその人物の基本的なニーズがどう作用するか、その多様な形態により、よくあるネガティブな脚本は描かれにくくなります。また、人それぞれのクライシスの終わらせ方について考慮することも重要です。クライシスを経験した人のことを、被害者と見なすべきではありません。こういったクライシスの「被害者」たちは、原因となった事象に対処し、生活を続けていかなければなりません。この場合「被害者」という言葉は不適切ですので、偉大な「生還者」として語るべきでしょう。

引用文献

Van der Kolk, B. A. (2015). The body keeps track: brain, mind, and body in the overcoming of trauma. Eleftheria

Góngora, J. N. Reflections on the crisis in Haiti: from the individual to the community.

Góngora, J.N. Crisis, concepts, and procedures.