心の理論:対人関係の鍵
心の理論は、社会認知能力のひとつで、自分と他人を繋げてくれます。この理論は、誰かがその瞬間に考えていたり感じたりしていることを知ることができるというスキルだけでなく、もっと深いものです。心の理論は、同じ瞬間を経験していても、他の人の感じ方や考え方は自分のそれと違うということを理解させてくれます。
心理学者で人類学者のグレゴリー・ベイトソンが、このコンセプトを提示した人物で、社交的な人間の行動の大半を理解する鍵を与えてくれました。心の理論のおかげで、自分の周りの人も、自分とは異なる意見や信念を持つということが理解できるようになりました。
人間は、他の動物のように他者の行動を予期する必要があります。直感で相手が何を考えているのか、何を感じているのかを感じ取り、それに合った行動をとることができます。これは、とても複雑で発達した認知プロセスによるもので、感情の最高のテクノロジーだと言っても良いでしょう。
「私たちは考えそのものだ。考えと共に存在し、考えによって世界を造る」
―ブッダ―
心の理論:もっとも重要な社会認知能力
共感できることが、人間の繋がりをを作ることにおいて必要不可欠だと言われています。共感は人間を繋げ、色々な視点を理解させてくれる社会的な接着剤のようなものです。しかし、心の理論は社会的な関係において共感よりも重要なものです。
共感とは、他の人と自分の感じていることを共有できるということです。一方で、ベイトソンの心の理論は、自分の考えは他人のものと異なるという現実を理解させてくれます。例えば心の理論は、嘘をついている自分や、同じ状況に置かれても自分の反応は他人の反応と全く異なるものであるかもしれない、ということを理解させてくれます。
これらの情報を処理するのは人間関係を築く上で、とても大切です。脳は、人が生き抜くため、順応するため、そして、意味のある人間関係を築くために、とてつもない働きをしています。
あなたの脳は予想マシーン
人間の脳は、よくコンピューターと比べられます。脳は一つの目的(周りの未知を減少すること)を持った予想マシーンのようなものです。ミシガン大学のジョン・アンダーソンが行った研究は、脳の予想する力は、なぜ心の理論が社会の中で重要なのかを裏付けるとしています。
人は、周りにいる人間の行動を予想するだけに止まらず、その意思、知識、信念、感情を直感で感じ取ることも必要です。これらの能力により、感じ取った要素を踏まえて、自分の行動を適応させることができるのです。
動物にもこの優れた能力が備わっています。ある研究で、チンパンジーに特定のチンパンジーの行動を予想することができる能力が備わっていることがわかりました。敵である可能性のあるものには、欺くような行動をとり、利益をもたらしてくれるかもしれないグループには友好的な行動をとるようです。
全ての人にこの能力が備わっているのか?
人間の進歩に関する研究では、心の理念に関わる能力は4歳頃の子供に現れ出すとされています。これはちょうど、抽象的で複雑な考えを持ち出す頃です。また、周りの人にも、意図と意思があり考えや意見が異なることを理解し始めます。
その一方で、ある特定の状況にいる人にはこの能力が欠如しているという研究結果もあります。ケンブリッジ大学の研究者サイモン・バロン・コーヘンは、心の理論と自閉症の関係について、いくつもの研究を行っています。彼の研究では、自閉症の症状がある人にはこの心の理論の能力が欠如しているという結果が得られました。
例えば、自閉症の子供も大人も、共感のある行動をとることができます。他人の痛みや悩みを感じることができます。しかし、他の人の行動を予想することが困難なのです。人の反応を直感的に感じ取ることができないため、社交的なやりとりがわかりづらいと感じます。他の人が自分と違った感じ方、考え方、反応をするかもしれないということが、あまり理解できないのです。
統合失調症の人も同じような混乱を感じます。他の人と繋がりを持つことが難しく、自分の感情と他の人の感情を分けて考えることが難しいと感じます。
生き抜くための心の理論
ジョン・ロックはこう述べました。「幸せとは、心の傾向であり、状況の状態ではないということを私たちは忘れがちだ」と。この心の世界は魅力的な課題の一つであり、またもっとも複雑な課題でもあります。人間と動物は、それぞれに繋がりを持ち、理解する能力を持っています。その結果、周りの環境によりよく順応することができ、生き抜くことができるのです。
しかし、心の理論にも一つ不思議なことがあります。この能力のおかげで、他人の行動や、欲求、考えを予想することができ、それに応じて反応することができます。しかしながら、目的がいつも立派なものであるとは限りません。この理論のおかげで、他人を騙したり欺いたりすることもできるからです。
ですから、この素晴らしい能力を善に使うか、悪に使うかは、個人に委ねられているのです。
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