クルト・レヴィンと場の理論

クルト・レヴィンと場の理論
Roberto Muelas Lobato

によって書かれ、確認されています。 心理学者 Roberto Muelas Lobato.

最後の更新: 21 12月, 2022

まだ社会心理学と呼ばれれる心理学の分野が存在しなかった数年前まで遡ると、人々は行動をただの反応としてしか捉えていませんでした。当時は行動主義が人気の理論で、科学者たちは私たちの行動を説明するのに行動主義を用いようとしました。誰かが人を殴ったら、その人の反応は相手から離れようとしたり次の攻撃をかわそうとするものになります。そのため、この思考パターンによれば、刺激とそれによる連想が行動を形作るものなのです。

しかし、この刺激と反応の関係性の説明は単純すぎます。行動主義は、私たちの知覚や思考さえも見落としてしまっていたのです。行動が人とその周囲の環境との相互作用の結果である、という関連性は見えていませんでした。

それに気づいた唯一の人物がクルト・レヴィンでした。この心理学者はいくつかの理論、とりわけ「場の理論」の提唱者です。これらの理論は、人と周囲の環境との相互作用にスポットライトを当てたものでした。彼の研究はかなり意義深いものであったため、現在では彼は心理学の父の一人と見なされています。

クルト・レヴィンの人生

クルト・レヴィンはプロイセン、つまり現在ポーランドと呼ばれているところの生まれです。その後、彼の家族はドイツに移り、彼はそこで医学と生物学を学びました。最終的に、彼の興味は心理学と哲学にもっと向けられるようになっていきました。

第一次世界大戦の間、ドイツによって戦場に送られた彼は負傷しました。戦地から帰省すると、彼はベルリン心理学研究所で働き始めます。しかしナチスが力を強め始めると、クルトはドイツを離れることを決意し、最終的にアメリカに移住しました。そしてアメリカのいくつかの大学で教鞭を執りました。

彼は社会主義やマルクス主義、そして女性の権利運動などに関連するイデオロギーを吸収していきました。こういった考え方が、彼をある結論に導きます。それは、心理学は社会の平等を目指すために役立つ、というものです。これこそが、彼が私たちの行動の中でどんな要素が機能しているのか理解するために尽力した理由でした。

「もし本当に何かを理解したいなら、それを変えることから始めてみなさい。」

-クルト・レヴィン-

クルト・レヴィンと場の理論

人間の行動を調査するという目標のもと、クルト・レヴィンは相対論に関する理論や量子力学の理論のなかにインスピレーションを求めました。そして場の理論という彼の研究に役立ちそうな理論を発見します。これを心理学に組み込むために、彼は行動をそれが起こる自然の文脈から切り離すことなく研究することに決めました。

これが、彼が集団を研究することに焦点を当てた理由です。彼の研究は、のちの社会心理学や組織心理学となるものの前例を作ったのです。彼の実験は、集団心理や組織変化による動き、そしてリーダーシップなどに関するものでした。

場の理論

物理学における場の理論を応用し、クルト・レヴィンは彼独自の場の理論に二つの基本的な条件を設けました。

  • 一つ目は、行動はその場に共存する要素全体から起こるものだという条件
  • 二つ目は、これらの共存する要素には「動的な場(フィールド)」の特性があるというもので、つまり場それぞれの状態というのは、他の全ての場と影響し合っているという意味です。

物理学においては、場(フィールド)とは物理的な質量(気温、エネルギーなど)として表出する特性が存在する場所のことを指しています。レヴィンは「エネルギーフィールド」という物理学のコンセプトを自らの理論に取り入れ、人間の行動において環境要因が果たす役割を説明しようとしました。

彼によれば、行動には過去や未来は関係ないそうです。現在の要因のみが行動に関わっており、その要因を対象者がどう見るか次第だというのです。これらの要因は相互に連結しており、これらが彼がライフスペースと読んだ動的なエネルギーフィールドを作り出しています。

ライフスペース

ライフスペース、あるいは心理学的エネルギーフィールドは、人と直前の現実に対するその人の感じ方を取り巻く環境のようなもので、基本的には主観的で個人的なスペースです。

目標、可能性、恐怖、経験や期待を含めた上で、その人が世界をどう見るかについての縮図とも言えるでしょう。しかしこのフィールドには、特に環境の持つ物理的・社会的特徴から来るある種のリミットも存在します。

クルト・レヴィンと場の理論

クルト・レヴィンの場の理論は、知覚全体を含めた私たちの行動を研究するものです。このやり方だと、全ての要素がそれぞれ独立したまま分析するだけ、という結果にならずに済みます。心理学的なフィールドが私たちの行動に与える影響はとても大きいので、レヴィンはフィールドになんの変化もなければ行動にも変化は起こらないだろう、とすら述べているのです。

心理学は人々とその周囲の環境をそれぞれが別々のもののように研究するべきではない、とレヴィンは考えました。そうではなく、双方が互いにリアルタイムでどう影響し合うのかを見る必要がある、と彼は考えたのです。

フィールドになんの変化もなければ行動にも変化は起こらないだろう。

関係変数

エネルギーフィールドと同様に、それぞれのパートが他の全てのパートに影響を与えているのです。行動を理解するためには、リアルタイムで動く変数全てを気に留めておかなくてはなりません。これは個人レベルでも集団レベルでも同じです。

また、これらの要素を個別に分析することは不可能です。ですので、正確には何が起こっているのかという全体像を掴むためには、それらの要素がどう相互に作用しあっているかの研究に焦点を当てる必要があるのです。この考え方を説明するために、レヴィンは以下に挙げる三つのカギとなる変数を提唱しました。

  • エネルギー:行動を引き起こす、動機付けとなるものです。必要とされた時にエネルギーあるいはエネルギーフィールドが出現し、行動を誘導するのです。これらの行動はポジティブであれネガティブであれ、全てに電荷が発生します。その電荷がまた別の行動(ポジティブ)を引き起こしたり、行動を起こさせなかったり(ネガティブ)するのです。ここから生まれる行動は様々なエネルギーの心理的な混合物に対して反応します。
  • テンション:その人の目標と現在のステータスとの差異。テンションは内なるもので、意図することに近づけようと自分自身を押し上げてくれます。
  • ニーズ:動機付けをしてくれるテンションを引き起こすものです。人が身体的もしくは心理的ニーズを抱いている時、内側からテンション状態が引き起こされるのです。このテンションの状態がシステム(その人)を変化させ、初期状態に戻りニーズを満たそうとさせます。

場の理論は、全ての人に可能な行動と不可能な行動は何なのかを示してくれる、とレヴィンは述べています。ライフスペースの存在を知っていると、人がこれから何をするのか論理的に予測するのに役立ちます。全ての行動に、もしくは少なくとも意図のある行動全てに、その動機があるのです。テンションがそれを後押しし、エネルギーがまたこれを動かし、電荷が方向性を定め、といったように全てに目標があるのです。

脳

動機

全ての行動はあるシンプルな事実で説明することができる、とクルト・レヴィンは述べました。それは、私たちはテンションを解消するための特定の道筋を探している、という事実です。そのテンションをなくすための方法となるような行動に私たちは引き寄せられるのです。

こういった行動にはポジティブな電荷が生まれるはずだ、とクルトは考えました。これが、行動を起こす後押しをしてくれるようなエネルギーを感じる理由なのです。そしてその他の行動には反対の効果があるはずです。それらはテンションを増大させ、嫌な気分にさせるような効果を持っているでしょう。

もっとよく理解するために、個々に一つ誰もが持っているニーズの一例があります。それは、認識へのニーズです。このニーズを感じ始めると、その人の興味のある領域において認識を得たいという動機が沸き起こります。この動機がポジティブな電荷を持っており、認識を得るという目標に向かってその人を誘導するのです。

動機は、その人の現在のステータスと認識へのニーズとの間のテンションを発生させるでしょう。それからこれがその認識を得るために考えうる行動について検討するようその人を誘導します。そして認識を得たい領域に応じて、それを得るためのベストなチャンスを与えてくれると思われることなら何でも行うことになるでしょう。


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