慢性的な悲しみと気分変調症

慢性的な悲しみと気分変調症
Valeria Sabater

によって書かれ、確認されています。 心理学者 Valeria Sabater.

最後の更新: 22 12月, 2022

持続性抑うつ障害は、必ずしも薬が効果的とは限りません。慢性的な無関心、絶望、抑うつ気分は、想像より複雑です。神経心理学における気分変調症の研究によると、このような状態は、脳の一連のプロセスや社会的状況が関係しており、それも視野に入れる必要があると言います。

気分変調症の罹患を世界的に見た時、無視できない事実があります。臨床研究で、患者は特に女性が多く、人口の約5%も気分変調症を患っていることが分かりました。また専門家は、多くの人が慢性的に苦しみながら助けを求めないと指摘します。絶望や落胆を常に感じており、実際の割合はさらに大きい可能性もあります

気分変調症は、最近「持続性抑うつ障害」と名前が変わり、女性に多く、気分のむら、倦怠感、持続的な悲しみが特徴です。これらの症状は、数年続くこともあります。

最新の精神障害の診断と統計マニュアル(DSM-V)は、「気分変調症」から「持続性抑うつ障害」へと名前を変え、研究は益々進んでいます。医学と科学を駆使し、症状を明らかにし理解することを目指しています。

気分変調症は、大うつ病より軽いものです。ただし、症状の治療が難しいため、他の症状を発症し、精神障害を患う人も少なくありません

落ち込む男性

神経心理学と気分変調症(持続性抑うつ障害)

この病状は、1960年代、精神科医ロバート・スピッツァーにより定義づけられました。症状が正確に記述されていないことに気付いた彼は、それを区別することから始めました。さらに、それまで、病気ではなく性格だとされていた気分変調症を、精神障害の分類に入れるようスピッツァーは研究を重ねました。単に落ち込みやすい、神経過敏、心が弱い人だとされていたのです。

持続性抑うつ障害の元を探るため、現在も専門家による研究が続けられています。現在、この診断名がつく患者には、次のような症状がみられます。

  • 落ち込んだ気分が少なくとも2年続く

次の症状が2つ以上当てはまる:

  • 無食欲または食欲増大
  • 不眠症または過眠症
  • 倦怠感、疲労
  • 自尊心の低下
  • 集中力の低下または優柔不断
  • 希望がもてない
  • ストレス、悩みが多い
  • 精神疾患または躁病、器質性疾患ではなく、大うつ病の疑いがない
気分変調症

持続性抑うつ障害(気分変調症)を患う患者の脳内

診断名がついたとき、解放感を感じる人が多いようです。思春期から暗い中を生きてきた事を考えると、それも当然でしょう。彼らは、長年虚無感に襲われ生活してきました。長年することなすこと全てが悲しみに包まれていました。

神経心理学の研究により、気分変調症の症状の原因が解明されました。ストレス、コルチゾール等のホルモンやカテコールアミンの増加が影響し、気分が調整できなくなっていると専門家は言います。

  • 臨床研究やMRIなど最新の映像技術のおかげで、鮮明なデータが取れるようになり、研究の幅が広がりました。例えば、問題解決や睡眠調整、食欲、社会性をつかさどる脳の部分の活動が低下することが分かりました。
  • これらの活動は脳の一部に集中しています。それは前帯状皮質(下の画像参考)と呼ばれる部分で、感情のコントロールに関わります。持続性抑うつ障害の患者のこの部分はあまり活発ではありません。
脳

前帯状皮質とスピンドルニューロン

  • 前帯状皮質は、多数の機能を調整する脳のネットワークの一部です。感情的、感覚的情報を処理します。人と接する時、注意を働かせます。感情と注意の懸け橋として、周囲への配慮を維持します
  • スピンドルニューロンは、前帯状皮質にあります。ミラーニューロンについて聞いたことがある人も多いと思いますが、スピンドルニューロンは、ある重要な働きをします。痛みや空腹に関する情報を処理、管理する神経細胞なのです。また、信頼、愛、憤慨など「社会的感情」を生み出す過程にも関わります。
  • 猿、イルカ、クジラ、象にもスピンドルニューロンがあります。人と同じようにうつになることがあり、「社会的苦痛」と呼ばれる症状が動物の行動にみられます。群れや仲間の中で、自分の位置を奪われる、また、孤独、拒絶が原因となり、悲しみや心の痛みは生じます。とても興味深いデータです。
窓と女性

結論:研究の成果

神経心理学における気分変調症の研究の成果をお分かりいただけましたか。まだ解明されていない疑問もあります―なぜ、この障害に関連する部位は機能しなくなるのか。また、再機能させるには、どうしたらよいか。彼らが、長年にわたりこの症状に苦しむことは大きな問題の一つです。さらに、薬学療法にうまく反応しないという事実もあります。そのため、専門家はこの症状について研究を続ける必要があるのです。

例えば、これは遺伝性だということが分かっています。そして、孤独や喪失を感じ、苦しんだり、自分は無意味だと感じることが続き、慢性的に悩むことになるのです。

神経心理学における気分変調症の研究により、新たなことを始めると、状態が良くなる患者が多いことが分かっています。何か生活に変化を加えるだけで、それが突破口となるのです。誰かや何かと関わっていると感じることが、ポジティブさや希望を生み出します。

諦めてはいけません。この症状に関する研究が進むにつれ、より明快な答えがでるでしょう。今は、気分変調症は治るという事実を認めることです。治療や心理療法を用いて、症状を改善しましょう。


このテキストは情報提供のみを目的としており、専門家との相談を代替するものではありません。疑問がある場合は、専門家に相談してください。