「モラルライセンス」とは?

10 5月, 2020
モラルライセンスは、人が貯めて使うクレジットのようなもので、意外な方法で使われることが多いと言えるでしょう。

誰しも、自分はいい人だと思いたいものですよね。ポジティブな自己像を持ち続けることは重要です。それでは、どのようなことが人に非道徳的なことをしたい気持ちにさせるでしょうか? これに関しては、モラルライセンスと呼ばれるセルフライセンシングを使い、説明づけることができます。

セルフライセンシングの裏には、過去に良い行為をしたから、自分は非道徳的なことができるという論理があります。例えば運動をした後、「今日はおやつを食べよう」と思ったことがあるでしょう。このように、良くない行為を正当化することで罪悪感を感じないようにするのです。

ここでは、モラルライセンスについて詳しく知るためにこれに関する研究をご紹介します。そこから、モラルライセンスの影響を受けやすい人がいる理由もお分かりいただけるでしょう。

「人間の深さや強さは道徳的貯蓄によって決まる。いつもと違う状況に陥った時にこそ、人は本性を見せ、貯蓄を拠り所とする」

-レオン・トロツキー-

モラルライセンス

 

モラルライセンスに関する研究から言えること

道徳的な行為を理由に非道徳的な行為をする、というモラルライセンスの影響を調べた研究はたくさんあります。そして、行動に関する様々な心理学的理論では、思考、感情、行動において認知的一貫性を保ちたいという人間の欲求が重要視されています

セルフライセンシングに関する興味深い研究によると、この一貫性の欲求に関して道徳的に立派な行動をとる人は、道徳的に疑問視される行為も正当化しやすいと言います(Merritt, Effron and Monin, 2010)。

この研究では、セルフライセンシングが、好ましくない行動に広範囲でどのように結びつくかを観察しました。例えば、人は過去に自分が行った社会的に望ましい行為を思い出した後、害のある行動を起こすことがわかりました。

研究員によると、過去に良い行いをしていると、非道徳的な人だと思われたくないという恐怖から普段は避けようとする非倫理的または問題があると思われる行為を行ってもよいと感じると言います。

また、2016年Jessica CascioとE. Ashby Plantが行った研究では、セルフライセンシングに関し、次のような結論が出されました。

  • 倫理的な行動が期待されると、人は非道徳的に行動する。
  • 将来、倫理的に認められる行為を行おうとしている人は、より人種差別的である。
  • モラルライセンスの可能性は、モラルクレジットの蓄積と関係する。つまり、過去に道徳的に正しい行為をしたことを理由に自分の行為を正当化する。
  • 偏見は道徳的行為から生じる。
モラルライセンス

 

モラルクレンジング

モラルライセンスに関する科学者の知識から、ポジティブあるいはネガティブな自分の特性について書くという行為は、チャリティーへの寄付に影響する可能性があると言えます。また、一般的ジレンマにおける協力的な行為に関しても同様です (Sachdeva, Iliev and Medin, 2009)。

これらの結果に基づき、モラルライセンスの影響は、道徳的自己制御の幅広い枠組みの一部であると前述の著者は結論づけています。その中で、道徳的自尊心の内なるバランスは、人が道徳的行為を示すか非道徳的行為を示すかにより決まります。また、向社会的行為に関する可能性もこれにより決められています

まとめると、この研究の著者は、道徳的アイデンティティの主張が非道徳的行為を正当化することにつながっていると言います。一方で、道徳的アイデンティティが脅かされている時、道徳的行為は失われた自尊心を取り戻す方法として使われます。

言い換えると、道徳的自己像が作られると、道徳的像を失うという恐怖を抱くことなく(セルフライセンシング)、非道徳的行為が正当化されます。一方で、人に非道徳的だと思われる場合、自分のモラルイメージを蓄積するためにポジティブな行動をとります(モラルクレンジング)

Cascio, J. y Plant, EA (2015). Licencias morales prospectivas: ¿anticipar hacer el bien después te permite ser malo ahora? Revista de Psicología Social Experimental , 56 , 110-116.

Merritt, AC, Effron, DA y Monin, B. (2010). Autorización moral: cuando ser bueno nos libera para ser malos. Brújula de psicología social y de personalidad , 4 (5), 344-357.

Sachdeva, S., Iliev, R. y Medin, DL (2009). Santos pecadores y pecadores santos: la paradoja de la autorregulación moral. Ciencia psicológica , 20 (4), 523-528.