盲目的な服従:ミルグラムの実験

08 9月, 2019

なぜ、人は服従するのでしょう?倫理に反する命令に人はどこまで従うことができるのでしょうスタンレー・ミルグラムの実験(1963年)がこれらの答えになるかもしれません。ミルグラムの目的は、これらの質問への答えを出すことでした。

この実験は、心理学の歴史の中でもっとも有名なものの一つです。また、私達のもつ、人間に関する考えに革命を起こします。さらに、なぜ、善い人が非常に残酷になることがあるのかという疑問に対する強力な説明でもあります。ミルグラムの実験について学びましょう!

 

盲目的な服従に関するミルグラムの実験

服従の分析の前に、まず、彼の行った実験についてお話しましょう。ミルグラムは、新聞の広告で、心理学の研究に有償で参加してくれる人を募りました。被験者が、イェール大学の実験室に到着すると、これは学習に関する調査だと研究員は伝えました

さらに、この研究における彼らの役割は、「記憶力を判定するために、別の被験者に単語リストの中から問題を出す」ことだと説明されました。

しかし…

この説明は、真の実験を隠すための嘘です。被験者は、質問する相手は他の被験者だと思っていますが、実は、これは研究員でサクラです。サクラが事前に記憶した単語リストに関し、被験者は問題を出します。サクラの答えが正しければ、次の単語に移ります。また、サクラの答えが間違っていれば、被験者はサクラに電気ショックを与えるよう指示されています(実際にはショックは与えられていませんが、被験者はそれを知りません)。

さらに、サクラにショックを与える機械には、ショックの強さはレベル30まであると被験者には伝えられています。サクラが答えを間違う度に、被験者はショックの度合いをあげていかなければなりません。実験開始の前に、サクラに小さな「ショック」がいくつか与えられ、その痛みを被験者に伝えます。

ミルグラムの実験

実験の初め、サクラは被験者の質問に問題なく解答します。しかし、実験が進むうちに、間違った答えを言い、被験者は電気ショックを与えなければなりません。被験者からサクラは見えませんが、声は聞こえます。サクラは、ショックのレベルが10になると、実験に対し文句を言い、辞めたいと言う演技をします。レベル15になると、答えることを拒み、実験反対の決意を示します。レベル20になると、「失神」し、質問に答えることができなくなります。

この間、サクラが気を失ったフリをしている時も、研究員は被験者に対し、テストを続けるよう促します。また、答えないのも間違いだとすると研究員は言います。被験者が実験を辞めないよう、何が起こっても研究員の責任であり、最後まで遂行すべきだと研究員は被験者に注意します。

ここであなたに質問です。最後のショックレベル(死につながる可能性があるとされるレベル)まで、実験を続けた人は何人いたと思いますか?サクラが「失神」するまで続けた人は何人いたでしょう?それでは「服従犯罪」の結果を見てみましょう。

 

ミルグラムの実験結果

実験前、ミルグラムは、精神科の同僚に結果の予想を尋ねました。サクラの最初の不平を聞いた時、被験者は実験を放棄すると予想した人がほとんどでした。また、サクラが失神のフリをするまで続ける人の割合は約4%だろうと考えました。さらに、最後のショックレベルまで到達するのは、1000人に1人で、精神病の問題を抱えているだろうという予想でした(Milgram, 1974)。

しかし、それは大きく間違っていました。第一周目の実験で、被験者40人中、25人が最後まで実験を続けました。また、約90%の被験者が、サクラが「失神する」レベル以上に到達しました(Milgram, 1974)。人を傷つけていることに対し高いストレスレベルを示した人もいましたが、被験者は研究員に服従したのです。

被験者

ミルグラムはこの実験の被験対象の標本が偏っていた可能性があると指摘されましたが、この実験は、異なる標本や計画で広く反復され、それは2016年に出版された本にも記されています。結果は全て同様のものでした。ミュンヘンの研究員は、彼の被験者の85%が、最大ショックレベルまで到達したと認めています(Milgram, 2005)。

このような結果は、西洋のどの国でも一般化できると示す実験もあります(Shanab, 1978, Smith, 1998)。それでも、普遍的な社会的行動について議論する場合には、注意しなければなりません。異文化間の研究で、決定的な結果は示されていないのです。

 

ミルグラムの実験から得る結論

この結果を見て、まず自問するでしょう。なぜ、このレベルまで人は服従するのか?Milgram (2016)に、研究員と被験者の会話の写しがあります。被験者のほとんどが、自分の行動が悪いと感じていたことが分かります。残忍性により、やる気は起こりません。そこで起こることの責任を被験者が研究員に置くという研究員の「権威」にその答えがあるかもしれません。

ミルグラムの実験を応用した様々な研究を通して、研究者たちは服従に関するいくつかの要因を導きました。

  • 研究員の役割:白衣を着た研究員の存在を、被験者は権威的存在と見ます。専門性を見出し、研究員の要求へより服従するようになります。
  • 責任の認知:被験者が自分の行為に対して感じる責任です。実験の責任は研究員にあると聞かされると、被検者はあまりプレッシャーを感じません。そのため、従いやすいのです。
  • 階層の意識:階層を強く意識した人は、自分は研究員の下で、サクラの上にいると考えます。そのため、サクラの安全より「上」の命令に重きを置いたのです。
  • 約束:被験者が実験の遂行を約束したという事実が、それに反することを難しくします。
  • 共感の破断:状況により、サクラの非人格化が強いられる時、被験者はサクラに対する共感を失いやすく、研究員へ従いやすくなります。

これらの要因一つが人を盲目的に服従させるのではなく、これらの集合が、結果に構わず服従させる状況を作り出しますジンバルドー(2012)が言う、状況のもつ強さの例をこのミルグラムの実験が示しています。自分の環境がもつ強さに気づかなければ、自分の原理を越えた行動をするよう強いられるのです。

先に記した諸要因の圧力は個人の意識の圧力に勝り、人は盲目的に従います。これは、前世紀のファシズム独裁主義の信仰など、歴史的な出来事を理解する助けになります。また、第二次世界大戦中ユダヤ人の虐殺を補助した医師の行動など、より具体的な出来事の説明にもなります。

独裁

 

服従の感覚

私たちの予想に反した行動を目にしたとき、その原因を追究することはとても興味深いものです。心理学は、服従に関する非常に興味深い解説をしてくれます。大きな発見のひとつが、特定のグループを優遇するために力のある権力者が下す決断は、グループによって話し合われて下された決断よりも影響が大きいということです。

誰も疑問を抱かない権力者が指揮する社会と、権威者が常に試される社会を想像してみてください。制御メカニズムがないため、必然的に、前者が後者より速く命令に従うでしょう。これは、衝突が起こった時勝敗を決める、とても重要な変数です。また、タジフェルの社会アイデンティティ理論(1974)とも密接に関係します。

盲従的服従に向き合う時、私達に何ができるでしょう?権力や階層は、特定の場面で適応可能かもしれませんが、それは、非人道的な権威者に盲目の服従の権利を与えることではありません。ここで、ひとつ問題が生じます。どんな権力にも疑問を持つ社会を築くことができれば、健康で公平なコミュニティを作ることができるかもしれません。しかし、これでは、決断が遅くなるため、摩擦が起きているうちに崩れてしまいます。

個人的なレベルでは、盲従的になりたくなければ、誰もが状況の圧力の犠牲になりかねないということを頭に入れておくことが重要です。どんな要因が私達に影響するかを知っておくことが、一番良い防御になります。そうすることで、その要因に襲われる時、コントロールを取り戻し、自分の責任を人に受け渡さないようにすることができます。しかし、その誘惑が大きいのは事実です。

落ち込む男性

このような実験は、人の環境に反映させることができます。善い人、悪い人という考え方は、白黒はっきりしすぎており、現実を説明するのには足りないという教義を示してくれます。また、人の行動の複雑さやその理由の理解に光を当てるのに必要な実験です。これを知ることで、歴史の理解につながり、一部の行為を繰り返さないためにも役立つでしょう。

  • Milgram, S. (1963). Behavioral study of obedience. Journal of Abnormal and Social Psychology, 67, 371-378.
  • Milgram, S. (1974). Obedience to authority: An experimental view. New York: Harper and Row
  • Milgram, S. (2005). Los peligros de la obediciencia. POLIS, Revista Latinoamericana.
  • Milgram, S., Goitia, J. de, & Bruner, J. (2016). Obediencia a la autoridad : el experimento Milgram. Capitan Swing.
  • Shanab, M. E., & Yahya, K. A. (1978). A cross-cultural study of obedience. Bulletin of the Psychonomic Society.
  • Smith, P. B., & Bond, M. H. (1998). Social psychology across cultures (2nd Edition). Prentice Hall.
  • Tajfel, H. (1974). Social identity and intergroup behaviour. Social Science Information, 13, 65-93.
  • Zimbardo, P. G. (2012). El efecto Lucifer: el porqué de la maldad.