ナルシシズムの一形態「トール・マン・シンドローム」

世の中には、その社会的地位や身体特性、あるいは学歴の高さ故に、自分は他人より優れているのだと感じている人々がいます。このような行動は、トール・マン(あるいはウーマン)・シンドロームと称されるナルシシズムの一種です。この記事を読み進めてもっと詳しく見ていきましょう!
ナルシシズムの一形態「トール・マン・シンドローム」
Valeria Sabater

によって書かれ、確認されています。 心理学者 Valeria Sabater.

最後の更新: 21 12月, 2022

「トール・マン・シンドローム」は、高身長(トール)に関係しているわけでも、男性というジェンダー(マン)に限った問題というわけでもありませんこの名称は、任意の分野で特定のステータスに登りつめた時に、傲慢で明らかに自己陶酔的な行動を見せ始める人々について説明しています。

これはつまり、成功している人は皆利己的で傲慢だという意味なのでしょうか?もちろんその答えは「ノー」です。この現象が全ての人に見られるわけではありません。特に、もともと優しくて他人に共感ができ、思いやりのある性格の人であればそうはならないでしょう。今回お話しするタイプの特性は、通常は一部の人にしか現れません。それまでよりも重要な立場に登りつめることに成功すると、傲慢な態度を見せるようになっていく人がいるのです。

したがって、そのような人には基盤となる構成要素、傾向がすでに存在していたと言えるでしょう。また、もう一つ特筆すべき点があります。皆さんもおそらく、成功を上手く扱えていない人々と出くわしたことがあるのではないでしょうか。これこそ、古代ギリシア神話で「ヒュブリス」と呼ばれている状態です。この言葉は、自らの衝動を抑えられずに過度な傲慢さを見せる人物の行動を指しています。こういった人は結局、罪のない人々に危害を加えるという最悪なヒーローと化すのです。読み進め、トール・マン・シンドロームについてもっと詳しく学んでいきましょう!

“私は、自分と同等の人々に勝とうとするよりも、自分自身より優れた存在でいることの方が好きだ”

-サミュエル・テイラー-

ナルシシズム トール・マン・シンドローム

トール・マン・シンドロームの構成要素とは?

トール・マン・シンドロームは精神疾患ではありません。確かに、世の中にはたくさんのシンドロームが溢れています。これらは、特定の行動にラベル付けしようと生み出された概念です。ただ、そういったたくさんの定義は、その行動を病気として認定しようとするものではありません。これらはただ、一般的によく見られる行動を説明し、それにラベルを貼ってある種のライブラリのような所に保管しておくための手段に過ぎないのです。

この名称が最初に使われたのは2011年のことでした。ハーバード大学の教授で臨床心理学に関する本を数冊出版しているスーザン・ハイトラー博士が、彼女がよく遭遇するあるタイプの人物像について描写しました。それが「トール・マン」で、成功を手にするとともに現れるタイプのナルシシズムだったのです。

また、経営コンサルタントのジム・コリンズなどの作家たちも、自著『ビジョナリー・カンパニー3 衰退の五段階』のなかでこの考え方について語りました。この本の中では、特定の市場で頭角を現すことに成功した企業が、結局己の経営手腕の低さや無能なリーダーたち、そして自己陶酔的な行動を取る多くの社員などのせいで落ちぶれていく様子について取り上げいます。以下では、その特徴と合わせてこの現象が起こる理由をいくつか紹介していきます。

私は他の人に「勝る」素質を持っているから成功できた

世間の大部分の人たちは、自らの強みや努力、才能、忍耐力、そして能力などがあるおかげで成功を成し遂げます。しかし、中には幸運に見舞われて、あるいは友人からの手助けがあって成功できたという人々もいますよね。トール・マン・シンドロームは、後者と結びついている場合が多いのです。こういった人々はもとから平社員や平凡な人々に対して高慢な傾向がありますが、権力を持つ立場を得ると、もっと有害なナルシシズムの形態を見せるようになります

すると間も無く、自分の地位は幸運のおかげではなく人より秀でた自らの素質によるものだ、というようなことを口にし始めます。自分だけが成功につながる個性を持っており、権力を保持する資格がある、などと言い始めるのです。そして長期的に見ると、周囲からのニーズに取り合わなくなってきます。こういった人が採用する柔軟性のないアプローチは学びや革新とは程遠く、企業に再び活気をもたらすものでもありません。逆に停滞状態に陥ってしまうでしょう。

トール・マン・シンドローム − 「私が一番裕福で、一番魅力的で、最強だ」

トール・マン・シンドロームは、自分には驚くほど特別な性質があり、それゆえ自分は他の全員よりも優れているのだ、と考える男性あるいは女性に発現します。つまり、これは仕事の成功について自慢して回るようなビジネスマンや企業のトップ陣に限った話ではないのです。この心理学的現象は、自分は誰よりも魅力的だ、誰より優秀なアスリートだ、誰より社会的に豊かだ、などと感じている人々のことも指しています。

しかしながら、そのような態度はかなりの弊害を生みます。自分には他者にない素質があると(勝手に)感じている人々の、他人との関わり方やコミュニケーションの取り方は、明らかにナルシシスティックなものになっていきます。特定の行動を見せ始めるのはまさにこの瞬間からです。そして「私はあなたより優れている、だから私こそが正しいのだ」というお得意のフレーズとともに、その行動を強めていきます。

そのほかにも、「お前のしていることは私のしていることと比べて価値が無い」、「お前の意見や決断は、私のものに比べればちっとも重要ではない」などの言葉もよく使われます。こういった発言がもたらすダメージは明白で、対立が生まれたり人間関係が社会的にも情緒的にも悪化したり、有害な環境が作られたり、周囲の人々が精神的な疲労やストレスを抱えるようになるなど、様々な弊害が出てくるのです。

ナルシシズムの一形態 トール・マン・シンドローム

トール・ウーマン/トール・マンの出どころ

成功した後の振る舞いが間違っている人々はたくさんいます。男性であれ女性であれ、いずれかの時点で力のある立場に立てる人は多いのですが、やり過ぎや管理の不手際、あるいは自己陶酔的な行動がその人物の周りの雰囲気や人間関係、ビジネス計画などを毒すので、すぐに落ちぶれてしまうのです。真に優れたリーダーであればその卓越した対人スキル・ビジネススキルにより、組織をトップの座に引き上げることができるものです。

誇張された自己像を抱いているような人とは、共存するのが不可能です。もし、そのような行動の出どころが気になるのであれば、その人の幼少期や受けてきた教育といった面に目が行くのも無理はありません。こういった人々は子どもの頃はエンペラー・シンドロームを、そして大人になるとトール・マン・シンドロームを悪化させていきます。

こういった人は、親から神格化されたり極端に甘やかされて育ったという過去があります。こういった幼い専制君主たちが、自らの権力を振るう際に他者への共感を見せることはほとんどありません。どんな気まぐれな考えに対しても関心を持ってもらったり、好意的な反応を得ることに慣れきっています。大人たちが明確な境界線を設けずに子どもを育てれば、トール・マンへと成長することは時間の問題です。結局のところ、ナルシシストになってしまうのです。

上記の内容を心に留め、子育ての際には適切な育児指南書を参考にして、社会をもっと誰もが過ごしやすい、敬意を抱き合える場所にしていきましょう。


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