「妬み」とは何か?
「妬み」とは、毎日の生活の中でもよく経験したり、目にする感情の一つです。ほとんどの場合、あまり良い意味合いはありませんが、一方で大切な機能を果たしている場合もあります。心理学の分野では(精神障害でない限り)、あらゆる感情は悪いもの、良いもののどちらでもなく、シンプルに心地よいもの、または不快なものとして分けられます。そして、どの感情にも役割があるのです。
ねたみを簡単に表現すると、二人の人間と一つの物体で構成される、不均等な三角関係で表すことができます。この二人のうち、一人がその物体を手に入れると、もう一方の人間はどれだけ欲しても手に入れることはできません。これこそが、不均等な状態です。ねたみの感情は、社会的な比較に深く関係する感情です。
社会的比較
人間は、社会的な地位が生活に影響を及ぼす、複雑な社会の中で生活しています。ですから客観的に考えてみると、社会地位や生活を気にするのはごく自然なことのように思えます。よって、社会的地位を良くしよう、より良い生活を手に入れようとすることで、社会的比較が産まれるのです。
社会的な比較には2種類あります。一つ目は、上位との比較。これは私たちが思う、自分よりも地位が高く、優れている人と自分を比較することです。二つ目は、下位との比較。これは私たちが思う、自分より地位が低く、劣っている人と自分を比較することです。どちらにもそれぞれ理由があり、それぞれの機能をはたしています。しかし今回の記事では、自分にないものを持っている人と自分を比べる、上位比較に関する妬みにフォーカスしましょう。
上位との社会的比較には主に、社会的地位が優れている人と自分の違いは何かを見つけ出し、同等、またはより良い地位を得たいという目的があります。この欲求は比較している状況や対象人物によって大きく異なります。例えば、身近な人と自分を、自分には関係のない分野で比較したりすると、プライドが邪魔することもあるでしょう。
上位との比較では、対象となる人と同等または、より良い地位になろうとする中で、妬みは重要な役割を果たします。比較対象となっている人よりも優れることで得られるであろう、社会的な地位やより良い生活が私たちのモチベーションとなるのです。ではこの目標を達成するにあたり、妬みにはどのような働きがあるのでしょうか?次のセクションでみていきましょう。
妬みとは?
不平等な関係性から産まれるという点で言うと、妬みは辛い感情の一つだと言えるでしょう。お話ししたように、妬みは社会的な比較と自己評価と深く関わっています。ですから、妬みとは社会的な温度計と言ってもいいでしょう。自分の社会的な位置を測定することで、思い描いていた地位を得るために行動をとるきっかけとなることもあります。
また、妬みは素直に表現されると、羨ましい気持ちの現れだと解釈できることもあります。妬みと、羨ましさの感情の違いがはっきりしないのはごく自然なことです。ですから、こういった気持ちを隠すのは世間的に浸透している礼儀作法のようなもので、これには大きく分けて二つの作用があります。一つ目は、妬みを隠すことで、自身の劣等感を公にすることを防ぐことができ、自己の価値を守ることができます。二つ目は、妬みの対象となる人物を傷つけるのを防ぐことができます。
妬みの対象となるものには、様々なものがあり、所有物、または人柄や評価など色々です。自分が持っていないもので欲しい何かを、他の人物がすでに手にしていると、その何かが妬みの対象となり得ます。自分が劣っている、または不利な地位から抜け出したいという思いから、こういった感情が生まれることがほとんどです。要するに、物自体が欲しいわけではなく、その物が象徴する地位や社会的評価を手に入れたいのです。
では、妬みを感じた時にどういった対応をすればいいのでしょうか?これには二つの対応法とその結果について知る必要があります。では次のセクションで詳しくみていきましょう。
妬みのタイプ
妬みには主に二つのタイプがあります。悪意のないものと、悪意があるもの(他人の不幸を喜ぶ気持ち[シャーデンフロイデ])です。悪意のないものは、例えば、誰かの成功を素直に喜ぶことができず、妬んでしまうけれど、相手に悪いことが起こることを願っているわけではない場合のことです。このタイプの場合、妬んでいる人は現状を打破しようと努力します。結果、妬みの対象となっている人物に干渉することなく、手に入れようと思ったものを手に入れることができるのです。
一方、悪意のある妬みの場合、相手が持っているものを欲するだけでなく、その相手に悪いことが起きることまで願ってしまいます。この場合、自分で努力することはありません。欲しいものをけなしてみたり、または相手からその物自体を奪うことで、相手の地位を劣らせようと試みることもあります。
どちらも欲しているものは同じです。羨ましいと思う人物と、同等または上に立ちたいという欲望からうまれるのが妬みです。悪意があるものの場合は、対象となる人物の価値を下げることで、欲求が満たされ、悪意がないものの場合、自分自身の地位を上げることで満たされます。妬みは一般的な感情ですが、人の不幸を喜ぶ気持ちもごく一般的であることも忘れてはいけません。
では、最後に考えてみましょう。あなたが妬みを感じるとき、それは悪意のないものですか?それとも誰かの不幸を願う気持ちでしょうか?