脳の島皮質:痛みを伴う経験による学習

2020年1月17日
体罰は古くから、生徒たちの"学習意欲を出させる"ための一般的な手段として用いられていました。その考え方は、痛みを通して得た知識はより強烈で長期的に残るだろう、というものです。では、大脳レベルではこのプロセスはどのように見えるのでしょうか?

子どもの頃の思い出で、初めてキャンディを舐めた時と初めて学校でケンカをした時、どちらをより鮮明に思い出すことができますか?きっとほとんどの人が二つ目の選択肢を選ぶでしょう。人間は、ポジティブな経験よりも苦しみを伴う経験の方をよく覚えているようです。最近の研究で、脳の島皮質(痛みを処理する領域)がこの種類の学習を調整していることが明らかになりました。

この研究により、神経科学の世界は、すでに定義付けられた認知プロセスの神経解剖学的な土台を確立することができるようになったと言えるでしょう。

痛みを伴う経験の処理と、その経験から学習するものとの間のつながりは島皮質内にあるようです。島皮質は外側溝という裂け目の奥深くに位置しており、側頭葉と頭頂葉、前頭葉を区分けています。

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苦い経験から学ぶことの重要性

人間は、進化により”脅威学習”と呼ばれる効果的な生存メカニズムを獲得しました。この学習反応は、主としての生存を目的としたもので、人間以外の種もそれぞれの神経系を通して”脅威学習”を経験します。

このメカニズムは、過去の有害な出来事を記憶しているため、自らを守ることができます。将来遭遇する可能性のある、有害なあるいは苦痛な状況を避けることに役立つのです。基本的には、このメカニズムによって同じ過ちを二度繰り返さずに済むということになります。

向こうずねをテーブルの脚に打ちつけると、とても痛みます。この痛みは、あなたにとあるとても具体的な教訓を与えてくれるのです。それは、「将来痛みを避けたいのであれば、向こうずねをテーブルの脚には打ちつけるな」というものです。

島皮質の役割

長年の間、科学者たちは脳のどのエリアが、他のエリアに苦痛を伴う事象について警鐘を鳴らし、”脅威学習”に導いているのかについて頭を悩ませてきました。扁桃体が何らかの役割を担っていることはわかっていましたが、まだなお未知の結びつきが存在していたのです。

科学者たちには、刺激の心理評価に関して扁桃体が重要であることはわかっていました。しかしそれでも、オーケストラで言うところの指揮者のような役割をするのが脳のどのエリアなのかは解明できていなかったのです。彼らが解き明かそうとしていたのは、この重大で全般的な学習を作り出すために何が全ての脳のプロセスを統合させているのか、という点でした。

そして研究者たちはついに、外側溝の内側にコンパクトに折りたたまれた島皮質こそが、こういった苦しい出来事への警戒シグナルを送る役割を担っていることを明らかにしました。扁桃体ニューロンと島皮質ニューロンとの間の結びつきを示す証拠は存在していたものの、科学者たちがこれらの機能について研究を始めたのは最近になってからのことです。

専門家たちは長年の間、島皮質は感情や情緒のコード化を司る部位だと信じ込んでいました。

前述の研究では、ラットが被験体として用いられました。これは、彼らの島皮質が人間のものと類似しているためです。そして研究者たちは、痛みを伴うような事象の最中に島皮質を切断しておくと、ラットは将来の苦しい状況をもはや恐れなくなることを発見しました。

また、島皮質を切断されたラットは苦痛を伴う事象から学習するのが困難であることも明らかになりました。

“私たちの正体は、私たちが繰り返し行っていることに現れる。優秀であれば、それは、単なる振る舞いではなく習慣なのだ”

アリストテレス

感情の処理

科学者たちは、痛みを伴う経験をしている間、島皮質が重要な役割を果たすことを突き止めました。また、島皮質は多くの基本的な感情処理にも不可欠で、愛や憎しみ、不快さ、痛み、悲しみ、そして幸福などの感情を処理します。解剖学的観点から言うと、島皮質はある二つの現象を統合させるのに完璧な場所に位置していると言えるでしょう:

  • 様々な感情処理を行う間の、身体状態に関わる情報。
  • 多様な高度認知プロセス。

ここでの島皮質の役割は、身体的変化(感情状態によって引き起こされる)とそれらを定性的かつ主体的に経験していく過程での変化との間の関連付けです。言い換えると、島皮質は身体が現在どのような状態なのかを脳に伝えている、ということになります。

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これらの新たな発見が指し示すこととは?

科学者たちは、島皮質には身体の状態に関する情報を脳に提供する能力があることを証明しています。しかし、島皮質はさらに強力な警戒信号をその他の脳の領域に送ることも可能です。その領域というのは、不快な、あるいは苦痛に満ちた記憶の形成に関連する領域です。

神経学者たちは、島皮質ニューロンは痛みの主観的衝撃を司っているという仮説を立てています。したがって、これらのニューロンは苦痛を伴う事象に不快さという感覚を付け加える役割も果たしていると考えられます。脅威学習プロセスが行われている間、島皮質は脳の他の部位へそれぞれの機能を実行するよう働きかけているのです。

これらを受けて、科学者たちは島皮質の活動が脳の様々な領域同士の相互接続に関連する現象に重要な影響をもたらしている、と結論づけました。また、この発見は島皮質の損傷と様々な精神疾患とが相互に関わり合っていることを示すその他の証拠とも一致しています。

まとめると、ニューロン接続と可塑性メカニズムと脳の痛みをコード化するメカニズムとを関連づける研究は、将来の精神医学理論の土台となり得るものだということです。PTSDや不安障害といった病気に苦しむ人々は、こういった研究から多大なる恩恵を受けることになるかもしれません。

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