幼いときの心の傷―子ども時代のトラウマの影響

· 2018年9月19日

幼いときの心の傷は、未解決のトラウマです。それは触れ合いを侵害され、親子の大切な絆が引き裂かれたときのことです。それは満たされることのない感情のニーズに対する裏切りです。この痛みは、幼いころの解決されていないものに起因します。大人になると私たちはこの痛みをマヒさせようとしますが、それでもそれは私たちに影響を与え続けます。

精神分析の観点から、最もよく使われる心理学の言葉の一つが傷の形やトラウマです。フロイトはこういった精神的な傷は外から中へ入ってくると説明しました。それは最も親密な人間関係、特に子ども時代に最もよく起こります。時間と共に消えるどころか、この傷は残り続け、隠れたまま私たちの存在の中に入ってきます。それからというもの、どんどん多くの層を作り出していき、人生のあらゆる領域に入ってくるのです。

「私の傷よりも大きなものはないが、その傷は誰にも見えない。」
―ミゲル・エルナンデス―

初期の経験

ジークムント・フロイトと娘のアンナ・フロイトは、私たちの性格の形成における初期の経験の超越性を初めて明らかにしました。そして、90年代に、この話題に関する重要な書籍が出版されました。「初期の傷(The Primal Wound、未訳)」がフロイトの時よりずっと深く現実に衝撃を与えたのです。この本では、養子になった子どもの、静かで目に見えないけれども永遠に存在するトラウマについて語っています。

この本の著者のナンシー・ベリエは、壊れた絆という鍵となる考え方を指摘しています。これは侵害された愛情や、大人になっても人が引きずってしまう無意識の傷です。これは子ども時代にたくさんのことが欠けていたために起こります。

傷ついた子ども時代

初期の傷とは?

人間のニーズは食べ物だけではありません。子どもは生まれると、まずは守られ、愛で包まれ、愛情のサポートを受ける必要があります。愛が世界に居場所を与えてくれ、私たちを育ててくれるのです。愛が私たちが優しい環境の中で安全に発達する手助けをしてくれます。私たちは自分が誰かにとって大切だとわかって生まれてくるのです。

そのため、心理学者やカウンセラーが患者と会うときも、共感と親密さが常に感じられるような環境を作り出そうとします。人々はこういったタイプの栄養が必要なのです。それが感知できないと、私たちの脳はほとんど一瞬でそれに反応します。疑いや恐れ、緊張が出現するのです。

これが、子どもが親密な絆を感じられないときに経験することです。気持ちの上でも物理的にも親と離れ離れでいると、初期の傷が人生に爪痕を残します。少しずつ、赤ちゃんの心と少し大きくなってからのその子どもの心は、不安や空腹、感情の切望、空虚感、孤独、保護の喪失や欠如に侵食されていきます。

子どもの心

母と子

この初期の傷は、ほとんど進化論の冒涜だと考えることができます。この「ヒト化」のプロセスは、すべての人間が経験することですが、まずは心からの愛情の交換と、母と子がいつも一緒にいることで進みます。赤ちゃんは脳が成熟しきっていない状態で生まれてきて、成長し発達し続けるためには肌の触れ合いと特別な絆が必要なのだということを忘れてはいけません。

このプロセスの中で何かが間違ってしまったり、生まれてから3年の間に何かが起こると、そこには目には見えないけれど、とても深いひびが入ってしまいます。これは誰にも見ることのできない怪我です。そしてこの怪我こそが、人生の中の様々な側面で、将来的に私たちから能力を奪う可能性が高いものなのです。以下がその例です。

初期の傷の影響

愛情や絆の研究のマニュアルのように考えられているとても興味深い本があります。タイトルは「愛情の手引き(Handbook of Attachment、未訳)」で、心理学者ジュード・キャシディーフィリップ・R・シェイバーによって書かれました。この本で筆者は、人間の目的は自己実現であると主張しています。私たちの目的は卓越し、安全に発達し、個人的な成長と心の成長を遂げることです。こうすることで自分とそして他の人と人生を謳歌することができるのです。

これを実現するために最も大切なことの一つは、幼いときに安心でき、円熟した、近くて私たちのニーズへの直感的な愛情を得ていることです。しかし、もしこれがないと初期の傷ができてしまい、以下のような結果になるかもしれません。

  • 不安と低い自尊心
  • 衝動的で、感情のコントロールができない
  • 様々な精神障害に悩まされるリスクが高まる
  • しっかりした、愛情に満ちた人間関係を築くのが困難
  • 「サバイバル精神」が旺盛になる。自立性と安心を見せようとしますが、虚無感が存在し続けます。こういった人には、孤独になる時間が必要なことがよくあります。そして親密な関係を求めることもあります。それが本物ではなかったり、実際は害のあるものであったとしてもです。
大人になってからの影響

初期の傷を癒すには

この場合最も適切なことは、プロの助けを求めることです。近年では、EDMR(眼球運動による脱感作および再処理法)のようなセラピーがより重要性を増してきています。これは様々なタイプの刺激や情報処理を組み合わせることで、トラウマ的な経験や子ども時代の傷に光をもたらし、それを認識しうまく対処できるようにするというものです。

また、私たちの初期の傷と折り合いをつけ、これを癒すために使われることの多い基本的な戦略を考慮に入れる価値もあります。それは以下のようなものです。

  • 隠れた感情に気づき、それに名前を付ける。
  • 満たされていないニーズを声に出して言う。(愛情、サポート、保護の欠如、共感できる親近感など)これらのニーズを正当化し、抑えつけない。
  • 子どもの頃に感じた孤独感を内省する。これを恐れ、怒り、恥を感じることなく行わなければなりません。子どもの頃に感じた虚無感について考えないようにする人もいます。辛く不愉快な気持ちになるため、苦しんできた年月のことを考えたくないのです。しかしその傷ついた自分を日のあたるところに連れていかなければなりません。私たちのその部分は、十分な愛情と保護が得られなかったために未だに怒りで満ちているのです。
  • 自分の過失は一切ないのだということを理解する。被害者には何の落ち度もありません。
  • あなたの悲しみや内側にある気持ちを解放してあげる。
  • 変化を経験し、自分を変えられるようになり、心の中の健康をもたらすための変化に責任を持つ。
自分の感情と向き合う

許すこと

最後に、初期の傷やそれに伴うトラウマの対処法の専門家は、許すことを勧めています。

親を許してあげることで親はその罪から逃れられるわけではありませんが、自分自身をその影響から解放してあげることができます。それは単純に起こったことを受け入れ、全ての苦しかった現実を受け止めることです。しかし同時に、許してあげることで、痛みの輪を壊すことができ、心の重荷を下ろすことにもなるのです。痛み、怒り、昨日の記憶から解放されることになるでしょう。

このことを真剣に考えましょう。初期の傷という話題は、確かに大きな関心を集めており、この複雑な心理的現実を理解しようとすることには時間を使う価値があります。