ポール・ワツラウィックとヒューマンコミュニケーション理論

2019年9月6日

オーストリアの心理学者、ポール・ワツラウィックによると、コミュニケーションは私たちの生活と社会において基本的な役割を果たしているそうです。しかし私たちのほとんどは、それがどの程度重要なのかに気づいていません。私たちは生まれたその瞬間から、コミュニケーションについてのルールを取得するプロセスの中にいます。これらのルールは、私たちが気づいていなくとも私たちの人間関係に埋め込まれているのです。

少しずつ、私たちは何を言ったらいいか、どういったらいいかを学んでいきます。私たちの毎日の生活に存在するたくさんのコミュニケーションの形について学びます。このような複雑なプロセスがほとんど気づかないうちに行われ、意識的に努力することなく自動で行われているということは信じがたいことです。

コミュニケーションがなければ、人間は今のように発展・進化することはできなかったでしょう。では私たちが心を通じ合わせることを可能にするコミュニケーションとは、詳細に分析するとどういうものなのでしょう。私たちがほとんど気づきもしないインプットとアウトプットがなぜそんなに重要なのでしょう。それらについてより深く見ていきましょう…

「人はコミュニケーションをとらずにはいられない。」
―ポール・ワツラウィック―

ワツラウィックとコミュニケーション

ワツラウィックと彼のコミュニケーションに対する視点

ポール・ワツラウィック(1921-2007)はオーストリアの心理学者で、家族療法や全身治療で言及されることの多い人です。彼は1983年に出版された「The Art of Becoming Bitter(より良い人間になるというアート)」で国際的に知られています。ワツラウィックは哲学の博士号を取り、チューリッヒのカール・ユング・インスティテュートで心理療法を学びました。また、スタンフォード大学の教授でもありました。

ワツラウィックは、パロアルト心理療法研究機関のジェーン・べブン・バベラスとドン・D・ジャクソンと共に、ヒューマンコミュニケーション理論を発展させました。これは家族療法の根本理論となりました。この理論では、コミュニケーションをその話題から生まれる内的なプロセスとしてではなく、人間関係から発生する情報交換の結果として説明しています。

その観点では、私たちがどのようにコミュニケーションをとるか、あるいはそのことを意識しているかどうかにはあまり重要性を置いていません。むしろ、現在私たちがどのようにコミュニケーションをとり、お互いにどのように影響を与えあうかが要点になります。ヒューマンコミュニケーション理論の基本的な理念について見ていきましょう。そこから何を学ぶことができるのでしょうか?

ヒューマンコミュニケーション理論の5つの原理

コミュニケーションをとらないことは不可能

コミュニケーションは人生につきものです。ポール・ワツラウィックと彼の同僚たちがそこで言っていることは、全ての行為は、コミュニケーションの中、もしくはコミュニケーション自体の形であるということです。これは明白なものも暗黙のものも含みます。沈黙さえもある意味メッセージを伝えるための手段です。ですので、コミュニケーションをとらないことは不可能なのです。ノンコミュニケーションは存在しません。

何もしていないときでさえも、言葉に出しても出さなくても、何かを伝えています。相手が言っていることに興味がないこともあるでしょう。または単に意見を言わないことを選んでいるのかもしれません。言葉にするよりも多くの情報が「メッセージ」の中にあるのです。

コミュニケーションにはコンテンツレベルと人間関係レベルがある(メタコミュニケーション)

この原理は、全てのコミュニケーションは、メッセージに込められた意味(コンテンツレベル)だけでなく、話し手が理解されたいと思っている方法や他の人にどのように理解されようとするか(人間関係レベル)も重要である、という事実を示しています。

お互いに心を通じ合わせるとき、私たちは情報を伝えます。しかし、私たちの人間関係の質がその同じ情報に違った意味を与える可能性があります。

ヒューマンコミュニケーション理論

コンテンツレベルの側面は、言葉によるコミュニケーションで私たちが伝えることを指しています。一方人間関係レベルは、このメッセージをどのように伝えるかです。これは声のトーン、顔の表情、文脈などに関係があります。後者の要素が前者を決定し、それに影響を与えます。それは声のトーンや表情が、聞き手がどのようにメッセージを受け取るかを変えるからです。

話の意味は人によって変わる

ポール・ワツラウィックは3つ目の原理を、「人間関係の性質は、相手がコミュニケーションをどのように処理するかによる」と説明しています。ここで彼が言っているのは、私たちは誰もが見ることや経験することに対して自分なりの見方を作るということです。それが私たちの人間関係に色を付けるのです。

この原理は、私たちが他の人とつながるときにとても重要になります。誰かと関わるときには常にこのことを念頭に置いておくべきです。私たちは自分の経験や個人的な性格、教訓によって受けとる情報すべてにフィルターをかけています。つまり、一つのコンセプト(愛、友情、信頼など)は別々の人に別々の意味がある可能性があるということです。

さらに、他にもコミュニケーションのカギとなる点には、話し手が相手の行動は本人の態度が原因だと思っているということもあります。しかし、実はコミュニケーションはもっと複雑なプロセスであり、人間関係に影響するものを一つの原因に絞ることはできないのです。コミュニケーションは周期性のプロセスで、それぞれのグループが独特な方法で相互に影響しあっているのです。

コミュニケーションの仕組み

デジタルとアナログのコミュニケーション

ヒューマンコミュニケーション理論は、コミュニケーションには2つのタイプがあると言っています:

  • デジタルのもの。あなたが言葉にして言うことは、コミュニケーションを運ぶ車両です。
  • アナログのもの。すべての口頭でないコミュニケーションと、あなたがどのように自分を表現するかです。人間関係の車両です。

対称と相補的コミュニケーション

最後に、私たちがどのように他人とつながるかについて話しています。ときどき、私たちは同じような状況にある人に共感しますが、全く違うこともあります。人間関係が対象のとき、私たちは同じ船に乗っています。つまり、私たちは平等の状況で操作をし、互いに平等の力を持っていますが、互いに補完しあうことはありません。

人間関係が相補的であるとき、例えば親と子ども、先生と生徒、または売り手と買い手のような関係の時、私たちは不平等な状況にいます。しかし、その関係性を受け入れています。

これらすべてを考慮に入れると、全てのコミュニケーションの状況において、大切なことはその人間関係自体に注目すべきだということです。個人の役割というよりは、二人の人がどう関わり合うかに気を配るべきなのです。

Ceberio, Marcelo R. (2006). La buena comunicación. Las posibilidades de la interacción humana. Barcelona: Paidós.