R・デビッドソンによる、ウェルビーイングの4つのカギ

リチャード・J・デビッドソンにとって、ウェルビーイングへのカギは瞑想を行う目標と同一です。この神経学者は、幸福とは学習で得られるものだ、と断言してくれています。読み進めてさらに詳しく学んでいきましょう!
R・デビッドソンによる、ウェルビーイングの4つのカギ
Gema Sánchez Cuevas

によって書かれ、確認されています。 心理学者 Gema Sánchez Cuevas.

最後の更新: 15 8月, 2020

ウェルビーイングを実現するカギについてお話しする前に、まずはリチャード・J・デビッドソンが何者なのかを思い出してみましょう。彼はハーバード大学でパーソナリティや病態生理学、そして精神病理学を研究している博士です。デビッドソンは主に神経学的立場から長年にわたって情動というものを研究してきました。この学者に関して特徴的なのは、面接や実験などの手段のみに頼るのではなく、一生涯ベースで様々な症例を調査してきた点でしょう。

自身の研究や調査に基づいて、リチャード・J・デビッドソンはある考えを提唱しました。それは、脳の可塑性のおかげで、私たちは言語やその他の情報について学習するのと同じやり方で幸福や思いやりをも学習することができる、というものです。この考えを土台として、彼はウェルビーイングを達成するための4つのカギについても提唱しています。

また、リチャード・J・デビッドソンは現在のダライ・ラマや瞑想を学ぶ学生とも友人関係にある人物です。彼自身も毎日瞑想を行なっており、これが神経可塑性を促進する習慣であると信じています。それでは、ここからはデビッドソンの考える人間のウェルビーイングに欠かせないカギについて説明していきます。

“健康な頭脳の基本は善良さであり、これは鍛えれば獲得することができます”

-リチャード・J・デビッドソン-

R・デビッドソンによる、ウェルビーイングの4つのカギ

1. レジリエンス、ウェルビーイングへの一つ目のカギ

一般的に、レジリエンスという言葉には苦境から復活し、結果としてそれまでよりも強くなる能力、という意味があります。デビッドソンはこの能力が仏教の「ノンアタッチメント(執着を捨てる)」という概念と密接に結びついていると考えます。つまり、本当の試練とは変化を拒む気持ち自体であることが多いということです。

レジリエンスは、ウェルビーイングを実現するためのカギの一つです。誰の身にも必ず、苦しい時は訪れます。しかし困難な状況に逆らおうとせずにこれを受け入れ、それを成長の機会と捉えることができれば、自身の抱える問題によって行き詰まりを感じてしまうことが少なくなるはずです。

2. 前向きな見通し

前向きな見通しを持つというのは、自分を騙すことと同義ではありません。ここで私たちがお話ししたいのは極端な楽観主義、つまりネガティブな状況の存在を否定するような楽天的なものについてではないのです。そうではなく、前向きな見通しとは、どんな苦難に陥っていたとしても、あらゆる状況下でポジティブな側面の方により大きな重要性を見出すという意識的な選択を意味します。

リチャード・J・デビッドソンによれば、瞑想を実践する人々は脳回路の変化を経験しており、これが現実の知覚の仕方に変革を与えているそうです。デビッドソンはある研究において、瞑想を行なった人々の脳と行なっていない人々の脳との違いを特定し、自身の仮説の正しさを結論付けました。

2週間の間、1日に30分間瞑想を行うだけでも知覚変化の恩恵を得るには十分である、というのが彼の主張です。

一般的に、前向きな見通しを確立していくためにただ観念的な取り組みを行なったとしても、非常に短期的な効果しか得られない場合が多く、したがってその人の気分への大きな変化が期待できるわけではありません。しかし、瞑想を実践する人々はより持続的な効果を享受できており、これが彼らの情緒バランスにも好影響を与えているのです。

3. 100%の集中

リチャード・J・デビッドソンが行なったまた別の研究では、世間一般の人々が、1日の間に自身が行う物事のうち47%に対して注意を払えていないことが示されました。

このように気が散ってしまう理由の一つは、複数の作業を行なっていることや注意力がそれぞれに散乱してしまっていること、つまり、特定のタスク一つに集中せずに複数のタスクを一度に行なっていることです。この状態の時、脳は一つの考えから別の考えへと、決まったパターンなしで彷徨い始めます。

デビッドソンは、このような仕事の仕方をする人々の方が、より不満や不幸を感じやすいことを発見しました。だからこそ、彼はウェルビーイングへのカギの一つとして100%の集中を挙げているのです。これはつまり、精神的にも肉体的にも「今、ここ」に集中するということを意味します。

自分の意識を「今、ここ」に導くという能力もまた、瞑想によって獲得することが可能なスキルです。一般的に、あまりにもたくさん将来のことを考えるような人は、不安に苦しみ始めてしまいます。一方で、過去に囚われすぎていると抑うつ状態に繋がります。したがって、今現在を生きることで、感情面への負担を少なくさせることができるのです。

R・デビッドソン ウェルビーイング

4. 寛大な心

リチャード・J・デビッドソンの考えるウェルビーイング実現への四つのカギ、最後の一つは思いやり、あるいは寛大な心です。他人に何かを与えることで、脳内の幸福や楽しさに関連する領域の多くが活性化する、と彼は考えています。事実、寛大な人々はほぼ常に自分自身に対して安心感を抱いており、より落ち着いていてより無頓着である傾向が強いです。

デビッドソンは、寛大な心を持つことで、利己主義者が経験するのと同様にブーメラン効果がもたらされると考えています。これは必ずしも、他人に何かを与える人々が、それと同じ分の恩恵を受け取ることができるという意味ではありません。そうではなく、与えるという行為自体が、シンプルに心身のウェルビーイングを大きく改善させるということなのです。つまり、与えることによって一番利益を得ているのは与えている本人だということです。

リチャード・J・デビッドソンの考えでは、ウェルビーイングを実現するためのカギは、数多くの心理学理論や仏教の教えとも内容が一致しています。これを踏まえ、これらの側面がウェルビーイングを改善するための助けとなり得るという事実をぜひ考慮しながら暮らしてみてください。


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  • Kabat-Zinn, J., & Davidson, R. J. (Eds.). (2013). El poder curativo de la meditación: diálogos científicos con el Dalái Lama. Editorial Kaiŕos.


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