ライオンのクリスチャンの心温まる物語

ライオンのクリスチャンの心温まる物語

最後の更新: 15 3月, 2019

ライオンのクリスチャンの物語は、人間と動物の間に芽生えた愛の、心温まるお話です。本当にあった話で、きちんと記録されていますが、いまだに謎が多いのも特徴です。

物語は1969年のロンドンから始まります。オーストラリア人の若者、ジョン・レンドルとアンソニー・ボークがハロッズに買い物に行くと、驚いたことに、そこで彼らは、売りに出されているライオンの赤ちゃんに出会います。飼い主が、その前の晩にこのライオンの赤ちゃんが売り物をめちゃくちゃにしてしまったことに腹を立て、売りに出していたのでした。

「国の偉大さとモラルの度合いは、その国が動物をどのように扱うかによって判断することができる。」

マハトマ・ガンジー

青年たちはこのライオンの赤ちゃんを買い、自分たちの家へと持ち帰りました。他の数人の友達と協力してこのライオンの赤ちゃんを育て始めてみると、この赤ちゃんがとても社交的で可愛いらしいことに青年たちは気づきます。そして、自分たちが経営を任されていた家具屋にライオンを連れて行くと、不思議にも「利口な猫」と周りから呼ばれるようになっていったのです。

悲しいクリスチャンとの別れ

レンドルもボークも、幼いライオンがすごい速さで瞬く間に成長するとは、想像もしていませんでした。短期間の間で、家具屋でライオンのクリスチャンを飼うことは難しくなりました。大きすぎて、どこにもおさまることができず、あちこちで物を壊してしまうからです。そこで司祭の友達に、教区の墓地でクリスチャンを飼うことができないか相談してみました。すると、司祭は彼らの願いを受け入れてくれたのです。

幼いクリスチャン

その後もライオンのクリスチャンは成長し続けました。大人になる頃には、食欲も豪快で、餌代にも大金が必要となりました。この頃青年たちは、ロンドンでライオンを飼い続けることがいずれは不可能になることを悟りました。結局、クリスチャンは動物で、いつ人間に危害を与えるかわかりません。ずっとフレンドリーだったからといって、油断はできないのです…。

この時、二人の俳優がクリスチャンの元を訪れ、クリスチャンをケニヤの自然保護者であるジョージ・アダムソンに委ねてはどうかと提案します。アダムソン氏がクリスチャンの野生の本能を取り戻し、自然界に住むライオンのように育て上げてくれるというのです。青年たちは悲しいながらもその提案に同意しました。みんなのためを思ってのことでした。

ジャングルに戻ったクリスチャン

青年はクリスチャンをケニヤのコラ国立公園に送ることを決意します。クリスチャンにとって、新しい生活を始めるには理想的な場所でした。クリスチャンを引き取ってくれる、保護員は「ボーイ」と呼ばれていた別のライオンとクリスチャンを会わせ、また新しい群を作るために、メスのライオンとも引き合せてくれました。少しずつ、クリスチャンは人間の手から離れていき、ある日とうとう人間の元には戻ってこなくなりました

クリスチャンとの再会

その1年後、ランドルとボークはライオンのクリスチャンに会いに行くことを決意します。クレイジーな決断ですよね。クリスチャンはこの頃には自然界に戻って時間が経ち、普通のライオンと変わらない生活をしているわけですから。それでも二人は、クリスチャンを一目でも見て、元気にしているかを確認したかったのです。クリスチャンを保護していたアダムソンも、最大の注意を払わなければ、クリスチャンが襲ってくるかもしれないと忠告しました。

青年たちはコラという地域の外れでしばらく待ってみることにしました。クリスチャンの名前を読んでみましたが、すぐには姿を現してはくれませんでした。でも、岩の影から興味深そうにみているライオンが一匹いました。青年たちがクリスチャンの名前を呼び続けると、すぐにそのライオンが昔の友達に会いに向かってきました。不思議なことに、クリスチャンは二人のことを完璧に覚えていたのです。クリスチャンは二人に飛びついて、抱きしめ、顔をペロペロと舐めました。ビデオにも再会の場面が記録されています。

答えのない物語

その一年後、もっと驚くべきことが起こります。再会後、クリスチャンはジャングルへと戻りました。青年たちも、クリスチャンが勇敢なライオンの王者になったことを確信しました。しかしクリスチャンの居所はその後、定かではありませんでした。クリスチャンの消息がわからなくなって9ヶ月が経過し、ランドルとボークは心配で、もう一度クリスチャンを訪ねたいと考えます。

なぜ、どのようにしてかは全くわかりませんが、青年たちが戻ってくる1日前に、クリスチャンはコラに戻ってきたのです。次の日、1回目の再開のシーンが繰り返されました。興味深そうにみていたクリスチャンが、二人だとわかると、子猫のように飛びついてきました。違う点は、クリスチャンが1度目の再会時よりも、倍に大きくなっていたことぐらいでしょう。

車に乗るクリスチャン

ライオンのクリスチャンと、彼の人間の友達の物語は、実際の映像も交えたドキュメンタリーとなりました。また、クリスチャンの物語と、この物語に関する世界中の新聞や雑誌の記事をまとめた小説も出版されました。いまだに、この「獣」と、愛情を注いだ人間の青年達の間に生まれた素晴らしい関係や、どのようにしてクリスチャンが二人の訪問を予期できたのかなど、説明できないことがありますが、心温まる動物と人間の絆の物語であることは確かでしょう。


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