恋愛関係におけるうつ病:欠乏を補うための恋愛

うつ病の主要な特徴の一つに、「何かが欠乏している」という感覚が挙げられます。このような感覚が恋愛関係において生じるということは、二人の間に要求や懇願ばかりが行き交うことなってしまうことを意味するのです。
恋愛関係におけるうつ病:欠乏を補うための恋愛

最後の更新: 14 3月, 2021

恋愛うつとは、恋人のうちどちらかあるいは両方がうつ病と診断された時や、一部のうつ病関連の症状に悩まされている時に生じる状態です。そういった状況下では、関係性自体も恋愛感情も、それぞれ独特の特徴を帯び始めます。そのため、恋愛うつに苦しむカップルは、かなり異様な形で恋愛生活を送る傾向があります。

辛辣に思えるかもしれませんが、「抑うつ状態の真っ只中で生じるこの感情は、果たして本当に愛と呼べるのだろうか?という疑問を問わねばなりません。そしてその答えは多くの場合、「ノー」なのです。そしてたとえ「イエス」だったとしても、それは決して望ましくないタイプの愛情だと言えるでしょう。結局、愛することにも愛されることにもある程度の情緒的安定性が求められるのです。

ただし、抑うつ状態の人間同士の間にある関係性が本物の恋愛ではなかったとしても、だからと言って両者の想いが普通より弱いとは限りません。実はその反対に、互いに強力な感情を抱き合っているのが一般的なのです。さらに、うつ病を抱える人は恋愛を、自身の心の問題をすべて解決してくれるものであるかのように捉える場合がほとんどですが、実際には、しばらくするとより多くの問題に直面することになります。

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うつと恋愛

うつ病の人々は、心の中で孤独を感じたり、自分には何かが欠けているのではないかという感覚を抱いています。このことが心理学的観点から見て意味することを無視して象徴的な言い方をすると、この時欠けているのは愛なのです。特に、自分自身への愛、周囲の人々への愛、生活への愛、そして仕事への愛などが不足しています。

もっと厳密な身体面の話に移ると、恋愛によって脳内の化学世界に変革が起こることは明白です。誰かに夢中になっている人の脳内では生理学的相関が起こり、神経伝達物質が放出されます。これにより、知覚される幸福感が増すのです。

これら二つの要素が結びつけば、かなり問題のある結論が導き出されてしまいます。まず、化学的観点から言えば、恋とはうつ病を治療する「クスリ」のようなものです。また、象徴的な言い方をすれば、このクスリによって愛情不足問題も解決されます。そのために、「全ての問題を解決するカギは恋愛だったのだ」というとても的外れな結論にたどり着いてしまうのです。

恋愛うつ

恋愛うつは、情緒的に何かが欠けている人や化学的なバランスが取れていない人が、自分を完全に変えてくれるような相手を見つけた時に生じます。ただ、恋愛の初期段階においては相手へののぼせ上がりによって脳内に待望の神経伝達物質カクテルが放出されるため、精神的に満ち足りた気分を味わうことができます。

関係性の中で生じるあれこれは、カップル双方に影響を与えます。しかし、こういった特殊なケースでは、うつ病を患っている方の人物が、自分の気分を良くするための手段として恋愛を利用しようとする場合があるのです。このような幾分利己的なスタンスを取ることが、本物の愛を表現しているとは言えません。さらに、二人の関係の次のステージがはじめのうちほど調子の良いものにはならなそうなことに、おそらく気づき始めます。

そして遅かれ早かれ、パートナーが心の安らぎやサポートをくれる存在ではなくなってしまうのです。しかしその人物は一人の人間であり、生命を持たないモノでもクスリでもありません。そのため、相手も精神的に追い詰められ始めます。そして関係性に問題が生じるのです。うつ病を患う方の人物は、かつての状態に戻ってくれるようパートナーに要求し、やがては懇願するようになるでしょう。自らの不愉快な感情を取り去ってくれていた頃のように戻って欲しいと願うのです。

恋愛関係におけるうつ病:欠乏を補うための恋愛

恋愛うつ:愛情の不足

うつ病患者との間で築かれる恋愛関係において欠けているのが、愛という構成要素です。受ける愛情だけでなく、愛情を返すという能力も不足しています。また、相手が自分の元を去るのを許したり、反対に自ら別れを告げたりすることもできません。しかし、そもそも自分自身のことを愛せたことがない人々にはそのような境地に至ることは不可能なのです。

うつ病を抱える人々は、誰かと人生を共有しようとする前にまず自分自身の問題を解決せねばなりません。「誰かが自分のことを救ってくれる」という幻想を抱いてしまうことが、ここで最も憂慮すべきシナリオでしょう。言うまでもなく、こういった人々は恋愛相手のことを最終的に自分を救い出してくれる救世主のように見なす傾向があるのです。

そして関係性全体が虚偽によって成り立っていると、この状況が危険なものとなりますし、その嘘はいずれ明らかになってしまいます。また、救われるどころかさらなる痛みが引き起こされ、恋をしたことが大失敗だったかのように思い始める場合もあるでしょう。自分の人生には暗闇以外何も存在しておらず、その暗闇が全てをコントロールしているのだというような考えを抱く恐れもあります。

うつ病の人との恋愛関係を長期的に続けるのは不可能です。両者がともにうつを患っている場合、どちらか一方が「救世主」の役割を担うかもしれません。しかし、いずれかの時点で関係は崩壊するでしょう。

100%の完璧人間にならないと真の愛を経験できないということはありません。しかし、恋人との関係というのは二人で育んでいくべきものであり、「必要だから」「愛情が不足しているから」といった理由で手に入れようとすべきものではないのです。


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  • Bertholet, R. (2012). La depresión, una lectura desde el psicoanálisis. In IV Congreso Internacional de Investigación y Práctica Profesional en Psicología XIX Jornadas de Investigación VIII Encuentro de Investigadores en Psicología del MERCOSUR. Facultad de Psicología-Universidad de Buenos Aires.


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