セックスラフト：奇妙な実験

「セックスラフト」と呼ばれるセックスと暴力に関するこの実験は、監禁期間中の人間の暴力的および性的行動を研究しましたが、期待した通りの結果は得られませんでした。そのかわり、非常に異なった結果が見られました。

サンティアゴ・ジェノベスはスペイン人であり、スペイン内戦から逃れるために15歳のときにメキシコに移住しました。メキシコで彼は人類学者になりました。そしてノルウェー人の同僚であるトール・ハイエルダールとともに、性的実験と多くの人が考えた有名な実験を行いました。それは、非常に奇妙な実験でした。

ジェノベスは常に人間の行動を探求することに関心があり、暴力に特に関心を持ちました。暴力によって彼がスペインを離れざるを得なかったことも関係があったでしょう。また、1972年11月にはハイジャック事件の被害者となり暴力行為を身を以て体験しています。

彼はそのハイジャックにヒントを得て、性と暴力の実験を考え付きました。動物においては性と暴力は密接に関連しています。彼は、これが人間にも当てはまるかどうかを知りたかったのです。

セックスの…船？

ハイジャックの2年前に、ジェノベスはトール・ハイエルダールと一緒にアフリカから米国へ旅行しました。彼らはパピルスで作られたボートで旅しました。アフリカ人がコロンブスと同じようにアメリカに到達したことを証明したかったのです。しかし、彼がこの航海中に気付いたのは、外海が人間の行動を観察するのに最適な場所であるということでした。

その経験は、ハイジャックとともに、人間の行動を研究したいという彼の願いを強くしました。彼は、徹底的な実験を行うことを決意したのです。それはセックスの実験でもありました。彼の仮説は、他の動物と同様、人間もセックスを暴力と結びつけるというものでした。

最終的に非常に狭い小型ボートを作成しました。任意で集まった人のグループは、そのボートで101日間航海に出ました。途中で棄権する事は許されませんでした。ジェノベスは参加者を個人的に選びました。互換性がないと思った人を選んだのです。

性実験

この小さな船はカナリア諸島を出て、メキシコのコスメルに向かいました。参加者は6人の女性と4人の男性で構成されていました。ジェノベスは女性に権威的地位を与え、すべての男性はマイナーなポジションにありました。彼は、これがさらに摩擦を引き起こすと考えたのです。

マスコミも彼の実験に興味を持ち始めました。しかし、ジェノベスはプロジェクトに関する詳細を提供しませんでした。参加者が自発的に振る舞うように、目標を秘密にしておくことが重要だったのです。これにより、マスコミは彼の「人間実験室」は単なる性実験であると推測しました。

当時の新聞の見出しはすべて、乱交やその他あらゆる種類の倒錯についての話題で溢れていました。また、ジェノベスがボートの周りを裸で歩いていたという報道も見られました。マスコミは彼の実験を「セックスラフト（性のいかだ）」と呼び始めました。実際ジェノベスは明確な性的行動があることを望み、特に魅力的な参加者を選んでいました。

大きな驚き

しかし実際は、ジェノベスが期待していた通りにはいきませんでした。最終的に、航海中に攻撃的な行動を示す唯一の人物はサンティアゴ・ジェノベス自身でした。彼の仮説のどれも実現しなかったため苛立ちを見せたのです。その間も、参加者は互いに平和な関係を築き続けました。

参加者の間には性的関係もありましたが、性実験と見なされるには十分ではありませんでした。ボートの中ではセックスと暴力との関連性がないことが分かっただけでした。実験が失敗に終わったので、目的地に着いた時彼はかなり機嫌が悪い状態でした。

数年後、参加者は「セックスラフト」での体験について話し合うために集まりました。どうやら、彼らは全員ジェノベスの殺害について空想していたようです。具体的にどう殺すかについて考えた人たちもいました。彼が権威主義者になり、みんな我慢の限界に来ていたのです。一方、参加者たちは結束と友情の絆を形成することになりました。

この実験はうまく計画されていなかったというのが真実でしょう。動物と人間の行動を自動的に関連付けたことは、科学的に有効ではなかった可能性があります。とはいえ、この実験は非常に奇妙でユニークなものであり、それを基にした映画「The Raft」と呼ばれる映画も作られました。