進行性核上性麻痺(PSP)とは一体何?
進行性核上性麻痺は、微細運動能力や認知機能、そして中でも感情に対して悪影響を及ぼす、かなり珍しい病気です。例えば、この病気に苦しむ人は、動いたり平衡感覚を保ったり、話したりすることに問題が生じます。
この病気にかかるのは10万人に6人ほどだとされています。これはまた、この病気があまり調査されていない謎の症候群であるということも意味しています。不運なことに、治療法に関してもまだあまり正確とは言えません。
この病気は、1964年にスティール、リチャードソン、オルゼフスキの3人によって発見されました。このため、別名スティール−リチャードソン–オルゼフスキ症候群とも呼ばれています。
進行性核上性麻痺(PSP)
ヒメネス・ヒメネス(2008)は、これをニューロンやグリア細胞での神経原繊維変化を増長させる神経変性疾患であると定義づけました。これにより、これらの領域はゆっくりと縮んで行き、次第に前頭葉にメッセージを送ることができなくなっていきます。
科学者たちが更なる研究を行わない限り、その原因を知ることはできなさそうです。しかしこれまでのところ、遺伝的要因と潜在的な環境要因との二つの理論が主力となっています。
臨床像
進行性核上性麻痺は、様々な形で脳に影響を及ぼします。アルデノ、ベンビベレ、トリビーニョの3人(2012)は、その影響のいくつかをまとめました。
- 微細運動能力障害。これには歩行障害、姿勢の不安定さ、そしてパーキンソン病などが含まれます。
- 視覚障害と眼瞼疾患。
- 無感動、鬱、社会的孤立といった認知障害や行動障害。
- 情動調節障害。これは、突然笑い出したり泣き出したり、嚥下障害や構音障害を引き起こす情動の疾患です。
バリエーション
1994年に、ラントスが進行性核上性麻痺の三つの種類について説明しました。
- 前頭葉の進行性核上性麻痺は認知や行動に関する問題を引き起こします。
- 典型的なタイプの進行性核上性麻痺では、姿勢の不安定さや眼筋麻痺、情動調節障害が引き起こされます。
- 無動性-筋固縮症候群を含むパーキンソン病タイプ。
診断
この病気は多くの場合、死亡後に診断が下されます。これはこの病気があまりにも珍しいものであるため、部分的にでも患者が生きている間に診断することが非常に難しいことが理由です。また、この病気に関する研究が不十分であるため、医師たちが誤って他の病気と判断してしまうことがよくあります。だからこそ、最近では多くの医師たちがパーキンソン病、他系統萎縮症、大脳皮質基底核変性症、前脳側頭型認知症、レビー小体型認知症の鑑別診断を行なっています。
医師たちは、以下のような手段を用いてこの病気を診断しています:
- MRIスキャン。
- 患者の脳のさらに詳細な画像を得るための単一光子放射断層撮影。
- ポジトロン断層法。
アメリカ国立神経障害・脳卒中研究所および進行性核上性麻痺協会によると、この病気にはいくつかの診断基準が存在するそうです:
進行性核上性麻痺の可能性がある
徐々に進行する障害で、40歳以上で発症することが多い。
垂直性核上性麻痺あるいは垂直運動の衝動性眼球運動の緩徐化および発症初期の顕著な姿勢の不安定さ。
この臨床像を説明できるその他の病気が見られないこと。
おそらく進行性核上性麻痺であると考えられる
四肢末梢よりも体幹部の無動症あるいは筋強剛。
首の姿勢異常、特に斜頸。
レボドパ治療へのパーキンソン病の反応が薄い。
初期の嚥下障害や構音障害。
以下の項目中最低でも二つ以上の認識機能障害:無感動、抽象的思考機能障害、言語流暢性の減少、模倣行動、前頭葉解放兆候。
決定的に進行性核上性麻痺
上記の進行性核上性麻痺の可能性やおそらく進行性格上性麻痺と思われるような症状が見られること。
- この病気に典型的な組織病理学的証拠。
- 以下の症状の中の最低二つを伴う、初期の認知機能の低下:無感動、言語流暢性の減少、抽象的思考力の問題、模倣行動、前頭葉解放兆候。
臨床評価
この病気はあまりにも珍しいものであるため、具体的で標準的な臨床評価基準というものが存在していません。従って、医師たちはケースバイケースで診察を行なっており、様々なテストや試験、質問票などを各患者に受けさせています。
アルネド、ベンビベレ、トリビーニョ(2012)は、ある特定の患者を、以下のような手段を用いてどのように臨床評価したかについて述べています:
- 注意力:トレイルメイキングテスト、タップカウンティング、A-テスト、色覚異常テスト。
- 言語:ボストンネーミングテスト、意味論と音声学、面談、言語査定。
- 記憶力:数字テスト(ウェクスラー成人知能検査)、空間スパンテスト(WMS-III)、レイ複雑図形テスト。
- 遂行機能:行列下位テスト(WAIS-III)、類似性テスト(WAIS-III)、ウィスコンシンカード分類課題。
- 視覚技能:一連の視覚検査。
- プラクシア:レイ複雑図形テスト、WAIS-III、他動運動および自動運動、一連の動作、物を使う能力。
- 処理時間:時限テスト。
- 精神病理学評価尺度:神経精神症状評価。
- 機能尺度:バーセル指数、LawtonとBrodyの尺度。
治療法とまとめ
進行性核上性麻痺には、まだ効果的で具体的な治療法が存在していません。今現在可能なことは、患者が生活を続けられるよう、その症状を制御可能な範囲に治めることくらいです。どう治療すれば良いのかが分かっていないため、その目標は進行を遅らせ、また患者ができる限り自立できるようなサポートを行うこととなっています。
治療には、神経科医、心理学者、理学療法士など、複数の専門家たちが参加します。治療のためにはレボドパ、フルオキセチン、アミトリプチリン、あるいはイミプラミンが処方されます。患者によっては、言語療法や認知刺激療法、作業療法などを行う人もいます。