真の心理学の父:ヴィルヘルム・ヴント

09 11月, 2020
世の中の多くの人々は、ジークムント・フロイトこそが心理学の父であると考えています。しかし実は、この称号を与えられているのは別の人物です。彼は心理学を正式な科学的学問に押し上げようとしました。

彼は哲学と医学を学んだ内省的な人物で、知識の獲得に並々ならぬ関心を抱いていました。そんな彼の抱いた目標の一つが、心理学を哲学から引き離し、正式な科学的学問にすることでした。そして心理学が世間から認知されるべき科学的分野であることを示そうとしたのです。この真の心理学の父、ヴィルヘルム・ヴントは1832年にドイツで誕生しました。

これほど注目に値する科学者のことを、そして心理学という分野の礎を築いた人物のことを、世の中のほとんどの人が知らないというのは興味深い話ですよね。例えば皆さんが周囲の人に「最も重要な心理学者は誰だと思う?」と尋ねたら、おそらくジークムント・フロイトやカール・ユング、ウィリアム・ジェームズ、あるいはアルバート・エリスといった名が挙げられるでしょう。しかし、このように比較的無名であるとは言え、ヴントこそが、やがてこの学問分野を理解する上でカギとなっていく概念に関する極めて重要な研究を行なった人物だったのです。

面白いことに、ヴィルヘルム・ヴントはその奮闘により大衆から抜きん出た存在となります。彼は私たちが「意識」と呼んでいるものや、彼にとっての「心の法則」たるものの正体を完全に理解しようとしました。そしてこれらの謎を解明するために、他の誰しもが行うことのなかったあることを成し遂げます。それが、心理学のみを専門とする研究室を作ることだったのです。

真の心理学の父 ヴィルヘルム・ヴント

心理学の父はどんな人?

この心理学の父についてもっと詳しく知りたいとお考えなのであれば、1857年のドイツまで時を戻さなければなりません。ヴィルヘルム・ヴントがハイデルベルク大学医学部を優秀な成績で卒業したのがこの年だったからです。その後彼は、生理学の分野に偉大な功績を残したことで知られるヘルマン・フォン・ヘルムホルツという学者の元で働くようになりました。

しかしヘルムホルツとヴントの関係性はあまり良好とは言えず、それが原因でヴントはライプツィヒ大学に入り直して哲学を学ぶ決意をします。そして同大学で心理学の教授を務めることとなりました。これに関しては、当時心理学は哲学の一部と見なされていたことを知っておくと、この出来事の重要性をより良く理解できると思います。

19世紀後半の科学界は、プラトンやアリストテレスの考え方をまだ信じ込んでいました。心というものを定義する際に「魂」、「霊魂」といった用語を用いていたほどです。古代ギリシア哲学者たちのこういった教えはのちにデカルトによって退けられ、彼は「考える自己」、つまりres cogitans(思惟する実体、すなわち心)を物体や物理面とは区別して考えました。

このようにして少しずつ、心理にまつわるこれらの概念は哲学の伝統とは独立した存在となっていきます。しかし最も重大で最も決定的な跳躍は、ヴィルヘルム・ヴントによってもたらされることとなりました。

人間の意欲を駆り立てるものとは?

心理学の父ヴントは自ら進んで難題を掲げることができ、その答えを自身の力で解き明かすことのできる人物でした。しかし、心理に関するもの全てが思想や抽象概念、仮定などの世界に留められていた時代において、その野望を実行するのは簡単な作業ではなかったようです。

ヴィルヘルム・ヴントが先駆者たる所以は、彼が情報を実験によって得ようとした点にあります。彼は、科学者たちが理論を組み立てる際に利用しているような確実なデータや正当かつ比較可能な証拠を欲していたのです。そして数ある疑問の中でも特にキャリアを通じて彼を惹きつけたのが、人間の意欲(モチベーション)の背後にある力に関するものでした。彼はこれを意欲、選択、および目的の心理学と呼んでいます。

私たちはなぜ今行なっているような行為を行うことになったのでしょうか?その他の事柄を差し置いて特定のどれかを選ぶよう私たちを掻き立てているものは何なのでしょう?なぜ各人がそれぞれのモチベーションを有しているのでしょうか?ヴントはこれらの謎を解明するにあたり、科学的手法を厳密に遵守しようとしていました。彼は、心理学を定義づけるこういったプロセスは研究室で研究し、調査することが可能だと信じていたのです。

ライプツィヒ大学の実験心理学研究室

ヴィルヘルム・ヴントがライプツィヒ大学で実験心理学のための研究室を立ち上げたのは1879年のことでした。歴史家たちはこの出来事を現代心理学の始まりであると見なしています。かつてヘルマン・フォン・ヘルムホルツとともに生理学部で数年間実験を行なっていた経験が、この新たなプロジェクトで特に役に立ったようです。

その後、彼の研究室がドイツ中の大学の博士たちや学生たちから注目を集め始めるまでにそれほど時間はかかりませんでした。そのため、そういった人々の多くがこの研究室での実験に進んで参加してくれたのです。ヴントは彼らを様々な刺激に晒し、そこで抱いた感覚や考えを説明するよう依頼しました。こうして集められた全てのデータが、客観的に、そして注意深く評価されていきました。

そしてこれらの実験による結果は、認知プロセスや人間の意識、意欲などに関する信頼のおけるデータをもたらしてくれました。

真の心理学の父 ヴィルヘルム・ヴント

ヴィルヘルム・ヴント、心理学の父

ヴントの著作の中でも特に重要なのが、『生理学的心理学綱要』『民族心理学:人類発達の心理史』の二作です。しかし大半の人から最も重要な彼の刊行物と考えられているのは、実験による発見をまとめた冊子でしょう。これは、『哲学研究』というタイトルで発刊されたもので、100以上の実験の結果が記載されています。この中で彼は、21年間に渡って行なってきた研究の成果を発表しているのです。さらに、実験心理学の基盤が確立され、その本質となる概念や思想が掘り下げられたのも同冊子の中でのことでした。

また、彼はワトソンやパブロフ、スキナーといったのちに行動主義的理論を打ち出した心理学者たちにも影響を与えています。三名ともがヴントの実験研究モデルを利用し続け、できる限り客観的に研究を行い続けました。

まとめると、今日の私たちはヴィルヘルム・ヴントのことを、生涯をかけて心理学を科学へと押し上げた好奇心旺盛な人物として記憶しておくべきだということです。

Ruiza, M., Fernández, T. y Tamaro, E. (2004). Biografia de Wilhelm Wundt. En Biografías y Vidas. La enciclopedia biográfica en línea. Barcelona (España