ソアチャの母たち:勇気のお手本

ソアチャの母たち:勇気のお手本

最後の更新: 27 2月, 2019

ソアチャは、コロンビアの首都ボゴタに近い自治体です。この場所は、様々な複雑さを抱えた場所でもあります。ソアチャで起こった最も深刻な出来事のひとつが、いわゆる「誤検知」です。これは、軍隊が一般市民を犯罪者として扱って殺し、そこから利益を得る犯罪です。これと戦った母親たちの話を見てみましょう。

ソアチャでは、9件の誤検知のケースが確認されています。しかし、このタイプの犯罪の被害者の合計数は、3,000件に及ぶとされています。これはソアチャに大きな影響を及ぼしています。この街では、被害者の母親たちが団体を設立して、今日まで続く苦しみと対峙しています。アルゼンチンでの「5月広場の祖母たち」に倣ったものです。

「自分ができること、出来ないこと、達成できることを他人に言わせてはだめ。それは絶対に許してはだめ。」
-エマ・ワトソン-

これらの女性たちはメディアから「ソアチャの母たち」と呼ばれました。「10月の母たち」とも呼ばれています。グループを設立して、はじめの一歩を踏み出した月が10月だからです。彼女たちの戦いは、世界的な反対活動へと広まっていきました。この活動は、のちに世界的な賞によって認められています。

ソアチャでの衝撃のケースのひとつ

ソアチャでの最も衝撃的なケースは、ファイル・レオナルド・ポラスのケースのひとつです。彼は、53%以上の認知障害を持つ25歳の青年でした。ファイルは、ほとんどのソアチャの人と同様質素な家に住んでいました。工事現場などの簡単な仕事に従事しています。少しの小銭でみんなを手伝うなど、思いやりのある人としても知られていました。

ファイル・レオナルド・ポラス

ある日ファイルが家に戻ってこなくなりました。家族は半狂乱で病院、牢獄、ホスピス、遺体安置所などを探しました。しかし、ファイルを見つけることは出来ませんでした。数か月後、彼の遺体はソアチャから600キロも離れた都市であるオカーニャで見つかりました。実はファイルが武装した奇襲ゲリラ部隊のリーダーだったため、戦いで亡くなったと家族は告げられます

遺体を回収するために親戚が向かったところ、言われた話が矛盾していることに気づきます。例えば、右手に武器を持った状態で遺体が発見されたはずでした。しかし、若き青年は右手が不自由で、それを裏付ける医療証明まであります。それに、認知障害がある人が、武装グループのリーダーというもの話が合いません。

ヒロインとなった母親たち

この事実をはっきりさせるために決意して戦ったのが、ファイルの母親であるルス・マリア・ベルナルでした。当時のコロンビアの大統領、アルバロ・ウリベは、ファイルとその他の8人の若いソアチャの青年が皆犯罪者であったとほのめかしました。 だから、ソアチャの母たちは、亡くなった子どもたちの名誉を取り戻すことを目標に掲げたのです。

ソアチャの法務官と検察官の助けのおかげで、これらの女性たちは何とか関係者を起訴するに至ります。ルス氏は、自分の息子がコロンビアの軍隊に100ドルにも満たない額で「売られた」ことを知りました。ファイルは騙されて連れていかれたのです。のちに、彼を後ろに向かせて殺し、「戦闘中の死亡」としたのです。軍隊はこの「功績」に対して特別許可と報酬を受けとりました。

ソアチャの母たち

素晴らしい勇気をもって、ルス氏とソアチャの母親たちは殺害の脅しにも向き合いました。訴えの取り消しを要求したり、正義のためにプレッシャーをかけるのをやめさせようとする人もいました。5年以上たってから、ファイル・レオナルド・ポラスの殺害は、「人道に反する犯罪」と認められます。これは、すべての人類に対する違反を意味します。加害者たちは50年にもわたる判決を受けました。この犯罪の裏にある心理はまだわかっていません。

ソアチャの母親たちは、劇やアートの中でこの悲劇を表現しています。「アンティゴネ」と呼ばれており、これは勇気と反乱の例となりました。アルゼンチンの母たちのように、声をあげることを決めたのです。女性の強さは、最も困難で逆境的な状況でも勝利を導き出すということを証明したのです。


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