「テキサスの狙撃兵の誤謬」についての解説

あなたは、テキサスの狙撃兵の誤謬について耳にしたことがありますか?本日の記事では、この現象の起源と私たちの頭脳への影響の仕方についてお話ししていきましょう。
「テキサスの狙撃兵の誤謬」についての解説

最後の更新: 20 12月, 2020

「テキサスの狙撃兵の誤謬」を理解しようとする前にまず、「誤謬」とは一体何かというのを知っておかねばなりません。哲学、もっと具体的に言えば論理学の分野では、初めは正当に見えるものの、実はその内容を完全に無効にしてしまうようなバイアスの含まれている議論のことを誤謬と言います。

本記事では、テキサスの狙撃兵の誤謬についてお話ししていこうと思います。その起源や中身について、そしてこの現象がどう情報の解釈や選択の仕方を修正して自分自身の考えや信条を正当化することに繋がるのかについて学んでいきましょう。さらに、もう少しよく理解できるようにこの誤謬の具体例や予防策についてもご紹介しますよ。

“早まった結論はおもちゃの風船のようだ。膨らますのは簡単だが、簡単に弾けてしまう”

チャーリー・チャン

テキサスの狙撃兵 誤謬 解説

テキサスの狙撃兵の誤謬

これは非常にありふれた誤謬です。初めは無意味だった情報が、何らかの意味を持つかのように、あるいは最初の仮説に合致するように解釈されたりでっち上げられたり、操作されたりした時にこの現象が起こります。

この現象を通じて、人は自分の考えが間違っているであろうことを示唆する兆候を排除するような推論を実行するのです。 そして自身の立てた仮説を支持するように思える情報を全て強調します。そうすることで現実を歪め、自らの考えに合うようにこれを解釈するのですが、この時、守りたいものに近づくために誤謬によって明白な事実が損じられているのです。

起源

理解をさらに深めるためには、テキサスの狙撃兵の誤謬という現象の起源を知っておかねばなりません。この名前は、以下の物語に由来します。

“ある男が、納屋の壁に向かって数発の銃弾を手当たり次第に打ち込みました。その後彼は、全ての弾の中心部分に標的を描き、自分は狙撃兵(射撃の名手) である、と宣言しました”

この通り、この男は自らの振る舞いを論理的に見せるのに必要な手段を講じ、自身の価値を証明しようとしたのです。つまり、彼はデータを変容させ(標的を後から描いた)、自身の仮説(自分は優れた射撃手である)を確証したということです。

したがって、この誤謬によって人は自身の仮説を立証するために識別可能なデータを修正する(物語の中で男が行ったように)ということになります。

テキサスの狙撃手の誤謬の具体例

引き続きテキサスの狙撃兵の誤謬を理解していけるよう、日常生活でも簡単に遭遇し得るような一例を挙げてみましょう。

7という数字が夢に出てきた日に、あるホテルの362号室(それまであなたはルームナンバーを把握してはいませんでした)に宿泊した、という状況を想像してみてください。ここでこの誤謬が採用されると、「3 + 6 – 2 = 7」なのだから自分が見たのは予知夢だったのだ、という解釈が成立します。つまり、あなたは自らの仮説の正しさを確実なものにするためにデータを操作するということです。

この誤謬のもう一つの例が、星座の解釈です。 私たちの文明では星と星との間を想像上の線で結ぶことで図が作り出されますが、現実的には星の位置は偶然決まったものに過ぎません。そしてこの時人は、探していた図の邪魔になるような天体を無視しているのです。

選択的情報

お分かりいただける通り、人間はテキサスの狙撃兵の誤謬を通じて自身の考えと矛盾する情報の価値を切り下げることがあります。また、何らかの事柄について誰か(あるいは自分自身)を納得させるために情報を操作したりひねったりすることも可能です。同様に、守ろうとしている考えや仮説の重要性がこの現象によって誇張されることもあり得ます。

情報選択に関してこの誤謬を解釈する別の方法としては、類似点を強調する際に自身の持つデータ内に存在し得る相違点を無視する、というものが挙げられるでしょう。そして該当の推論を行った際、人は誤っている恐れのある結論を導き出すのです。

グループ化とアポフェニアによる幻想

この誤謬は、認知心理学で「グループ化の法則」と呼ばれる現象と関連しています。これは、実際には存在しないパターンやグループ化を見ようとする傾向のことです。

また、この誤謬はアポフェニアにも関わりがあります。アポフェニアとは、無作為なあるいは無意味な事象の中にパターンや結びつきを見るという経験に言及する際に使われる用語です。上述の内容と似ていますよね。

しかしながら、これら2つの概念は認知心理学や統計学の観点からも解釈が可能であるという点に注意しておきましょう。事実、両者は各学問分野から微妙に異なる意味合いを付与されているのです。例えば、認知心理学では両概念をテキサスの狙撃兵の誤謬と関連づけています。なぜなら、この誤謬を通して人は実際には存在しないパターンを確立することができるからです。全ては個人的な考えを正当化するあるいは見せつけるため、もしくは何らかの事柄について他人を納得させるために行われます。

テキサスの狙撃兵の誤謬についての解説

テキサスの狙撃兵の誤謬を回避するには?

この誤謬は、その他多くの誤謬と同様に、必ずしも意識的に起こるとは限りません。以下がこれを回避するためのキーポイントです。

  • それに対抗する論点を探しましょう。仮説を支持するような論点を持つことも重要ですが、反する論点も重要なのです。
  • 常に正しい自分でいなければならないというわけではありません。正しさに執着するのをやめれば、自身の考えを論理的かつ客観的に示せるようになるでしょう。

この誤謬への認識を高めると同時にこれら2点を実践すれば、テキサスの狙撃兵の誤謬が起こる頻度を最小限に抑え、より良い形で自らの考えを主張できるようになるはずです。


引用された全ての情報源は、品質、信頼性、時代性、および妥当性を確保するために、私たちのチームによって綿密に審査されました。この記事の参考文献は、学術的または科学的に正確で信頼性があると考えられています。


  • Comesaña, Juan Manuel (2001). Lógica informal, falacias y argumentos filosóficos. Buenos Aires: Eudeba.
  • D. H. Fischer. (1970). Historians’ Fallacies: Toward a Logic of Historical Thought, Harper Torchbooks.
  • Ortiz Frida, García María del Pilar (2005): Metodología de la investigación. México: Limosa.

このテキストは情報提供のみを目的としており、専門家との相談を代替するものではありません。疑問がある場合は、専門家に相談してください。