統合失調症のクロウ・タイプの特徴と背景

あなたは、統合失調症のクロウ・タイプをご存知ですか?本日の記事ではこの分類法の特徴についてお話し、各タイプがどう異なるのかについて見ていこうと思います。
統合失調症のクロウ・タイプの特徴と背景

最後の更新: 18 12月, 2020

統合失調症とは精神病性スペクトラム障害の一種で、幻覚や妄想、支離滅裂な思考といった陽性症状が特徴的です。一方で陰性症状にはアパシーや無快感症などがあり、大抵の場合注意力の低下といった形態で認知機能障害も発現します。これは慢性的で生活に支障をきたすような病気であり、様々な学問分野の専門家たちから大きな関心を向けられてきました。

本日の記事では、統合失調症のクロウ・タイプについてお話ししていきます。これは1938年生まれのイギリス人精神医学者ティモシー・クロウにちなんだ名称です。彼は、研究を行う中で1980年にこの病気を二つの症状タイプに分類しました。

ティモシー・クロウの分類が重要なのは、これが症候群、経過、病因、予後などの医療モデルを構成する様々な要素に関連したものだからです。彼はまず、この病気をI型(陽性)とII型(陰性)に区別しました。

しかしその7年後の1987年、彼はこの分類を改良します。これは、全ての症例がこの二分法に当てはまるわけではない、と考えたためです。そのため、彼はここに混合タイプの統合失調症も付け加えました。

クロウのカテゴリーモデルは現在では使用されていませんが、それでも彼の案は非常に興味深いものだと言えるでしょう。今日でも一部の専門家たちからは有用だ(実用的な面でも学問的な面でも)と見なされている上、この分類により医師たちはこの病気の現実についての知識をより深めることができます。さて、では統合失調症の二つのクロウ・タイプとはどんなものなのでしょう?両者の違いとは何なのでしょうか?読み進めて学んでいきましょう。

“ああ、そして私は絶対に統合失調症に苦しんでなどいない。私はこの病気をかなり楽しんでいるのだ。そして私自身も”

-エミリー・オータム-

統合失調症 クロウ・タイプ 特徴 背景

統合失調症のクロウ・タイプ

前述の通り、クロウの統合失調症には二つのタイプがあります。

  • I型(陽性)
  • II型(陰性)

この分類法は今や診断に用いられてはいませんし、メンタルヘルスのマニュアル(DSM-5やICD-10)にも反映されていません。しかしながら当時の医学会では最も多く参照されていました。前置きはこのくらいにして、彼が提唱した統合失調症の分類と両タイプの違いについてさらに掘り下げていきましょう。

I型統合失調症(陽性)

陽性型と呼ばれるのは、幻覚や妄想、思考障害(思考分裂など)といった陽性症状および解体した行動が支配的だからです。

彼はこのタイプの統合失調症を、DSM-IV-TRに記載された(DSM-5にはもう記載されていません)パラノイア(偏執病)のサブタイプに見立てています。

  • 発病前の適応状態は良好です。つまり、この病気の最初の症状が出現する前まで、患者は多かれ少なかれ周囲に適応できていたということです。
  • 発病、経過、およびその後の予測:I型統合失調症の発病は急性(II型は潜行性)です。つまり、症状が突然現れるということです。また、経過も急激に進み、発生した後ただちに一時的に緩和します。一方でII型統合失調症では症状が長期間に渡って続く場合があり、知能に障害が出ます。I型は可逆的なのに対し、II型は非可逆的です。これは主にI型統合失調症患者は神経阻害薬に好反応を起こし、II型統合失調症患者はあまり反応を示さないためです。
  • I型統合失調症では、神経心理学的な障害、つまり認知プロセスに発生し得る欠陥や変調は見られません。ただ、Barreraら(2006年)の研究が示す通り、統合失調症の診断を受けた中でも特定の人々には認知症状(認知機能障害)が起こる、と言っておきましょう。この研究によれば、宣言的記憶や実行機能、持続的注意などが特に影響を受けるようです。
  • 病理経過に関しては、I型統合失調症は一連の神経科学的変化を起こします。具体的には、クロウによればドーパミンD2受容体が増加するそうです。この統合失調症には神経伝達物質ドーパミンが大きく関係している(具体的にはドーパミンの超過)ということを覚えておきましょう。II型統合失調症の場合に関しては以下で説明しますが、その変化が構造的です。

II型統合失調症(陰性)

クロウ・タイプの二つ目、II型統合失調症あるいは陰性統合失調症は、統合失調症の解体型(DSM-IV-TR)に類似しています。解体型の症状と特徴に共通点があるためです。したがってII型統合失調症の症状は陰性症状で、感情の平坦化、語学力の低下、衝動の喪失などが含まれます。

  • 発病前:I型と異なり、II型統合失調症患者の発病前の適応状態は不良です。つまり、患者の機能は統合失調症の症状が発現するよりも前からすでに変調していたということです。
  • 発病、経過、およびその後の予測:II型統合失調症の発病は潜行性です。言い換えると、症状が徐々に表れ出ます。経過は慢性的かつ知能の障害をもたらし、予後は非可逆的です。上述の通り、神経阻害薬への反応がほぼありません。
  • 神経心理学的な障害:この型では神経心理学的な退行が見られ、患者の認知機能には欠陥あるいは変調が出ます。記憶や注意、実行機能などが影響を受けます。
  • 病理経過:構造変化が脳レベルで起こるため、側頭葉構造や海馬傍回で細胞が喪失します。
統合失調症のクロウ・タイプの特徴と背景

統合失調症のクロウ・タイプ

ご覧の通り、I型統合失調症の方が可逆的なので予後も好調で、神経阻害薬による反応も十分に得られます。症状に関しては、I型の症状は陽性症状である一方、II型は陰性症状です。

I型の発病は明白で経過は急性ですが、II型では症状の現れ方がもっとわかりづらく、経過は長期間に渡ります。

現在ではI型あるいはII型の統合失調症という診断を専門的に用いることはありませんが、この病気の個々の発現の仕方がクロウの提案した分類のいずれかに類似している場合はあり得ます。しかし、患者を特定のグループに「当てはめ」ようとするのはまだ危険だと考えられています。つまり、各患者によってそれぞれの特質(そしてメンタルヘルスに関しては特に個人差があります)があるのは明らかだということです。

その他の分類法

統合失調症をいくつかのグループやタイプに分類しようと研究を進めたのはティモシー・クロウのみではありません。ドイツの精神医学者エミール・クレペリン(1856-1926)やスイス人精神医学者オイゲン・ブロイラー(1857-1939)もクロウ以前にこの試みを行いました。

クレペリンはパラノイア型、緊張病型、破瓜型に統合失調症を分類しました。ブロイラーも同様の分類を行いましたが、彼はそこに単純型というサブタイプも付け加えています。


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  • American Psychiatric Association (2000). DSM-IV-TR. Diagnostic and statistical manual of mental disorders (4thEdition Reviewed). Washington, DC: Author.
  • Belloch, A., Sandín, B. y Ramos, F. (2010). Manual de Psicopatología. Volumen II. Madrid: McGraw-Hill.
  • Cooke, A. (2015). Comprender la psicosis y la esquizofrenia. Londres: British Society Division of Clinical Psychology.

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