バイノーラルビートによる健康効果とは?

2020年7月4日
バイノーラルビートセラピーの目標は、左右の耳でほんの少しだけ異なる周波数の音を聞くと起こる聴覚現象によってストレスや不安、そして不眠といった症状を和らげることです。しかし、この現象は本当に効果的なのでしょうか?

一部の人々はバイノーラルビートのことを、新たな「テクノロジードラッグ」だと考えています。この聴覚現象を起こす目的は、脳内に三次元的なセンセーションを作り出すことですヘッドホンから左右の耳にわずかに異なる周波数の音を流すことで、この効果を得ることができます。つまり、脳が2種類の異なる音から第3の音を知覚し、それが次に一連のセンセーションに繋がっていくのです。

これらの感覚刺激は、平和的な感覚や快感、そしてくすぐられているような感覚として知覚されます。この経験が生み出す感覚は人によってかなり異なりますが、何も感じないという人はほとんどいないようです。

サウンドセラピーが不安やストレス状態を治療するための新たなアプローチとして台頭してきている今、バイノーラルビートは非常に人気が高まっています。

とは言っても、この効果を証明する100%決定的な研究はまだありません。つまり、現時点ではバイノーラルビートセラピーは実験段階だということです。しかしそれでも、何千人もの人々がリラックスしたり不安を和らげたり、あるいは集中力を高めたりもしくは単に快楽を得るためにこのセラピーを実践しています。

I-Doserというウェブサイトにある、音声や音楽を専門とする心理学者によって作成された音声データは、バイノーラルサウンドが凄まじい快感を生み出す依存性の高いものであることを示しています。このため、新たなサイバードラッグと考えられているのです。しかし、バイノーラルビートが心の調子を改善できるかもしれない点については専門家も同意しています。ただ、その効果を示唆するデータはごく限られています。

バイノーラルビート 健康効果

バイノーラルビート、歴史的背景のある現象

バイノーラルビートという現象は、「右耳と左耳がわずかに異なる周波数の音声を受信すると脳はこれらをもっと強度の強い、独特の快感を伴う単一の音として知覚する」という事実から生まれるものです。例えば、片方の耳で120ヘルツ(Hz)の音を聞き、もう一方の耳で132ヘルツの音を聞くと、脳内では12ヘルツのバイノーラルビートが生み出されます。

こう説明するとなんだか最先端の話のように思えますが、実は科学の世界では新しい発見というわけではありません。プロイセンの物理学者ハインリッヒ・ウィルヘルム・ドーヴェがこの現象を発見したのは1839年のことでした。彼はそれぞれの耳に少しだけ周波数の違う音が繰り返し再生されると、その人物はこれを全く違う一つの音として認識する、という単純な事実に気付いたのです。ドーヴェ博士はこれを「バイノーラルビート」と定義付けました。

それ以降、人々は診療現場でのこの現象の実験的利用を行ってきました。その試みは、患者の睡眠の質を改善させつつ、不安も和らげようというものです。しかし数十年間にわたる実験の成果はかなり変動的なもので、一部の患者にはこの手法が有効でも、全く効果が得られないケースもありました。

不安や肉体的な痛みを和らげるためのバイノーラルビート

バイノーラルビートを利用する人の中には、自身の不安を和らげようという考えのもとで行う人もいれば、怪我や関節の問題による痛み、あるいは偏頭痛さえをも抑え込もうとこの種のセラピーに頼る人々もいます。

スペイン国立遠隔教育大学の行動科学部で行われた研究では、ミゲル・ガルシア博士がこのセラピーによる効果の平均的な度合いを明らかにしました。これは、バイノーラルビートが効果を発揮するのは限られた数の患者に対してだけであったためです。毎日20分間バイノーラルビートを聞くという実験を2週間行った後、被験者の不安や痛みの知覚度は26%しか減少していませんでした。

バイノーラルビート 健康効果

不眠症治療のためのバイノーラルビートセラピー

不眠の問題を抱える患者に対してバイノーラルビートを適用するという研究の論文は、さらに意義深い内容となっています。ルーマニアのクルージュナポカにあるイリューハイチガヌ医科大学で行われた研究などが、その非常に具体的な効能を支持するような結果を出しています。これは、バイノーラルビートにより、入眠までの時間を早められる可能性があるというものです。

頻繁な覚醒に関するデータや、より疲れの取れる深い眠りが可能になるほどの睡眠の質の向上に関しては決定的なデータが存在していません。ここでもまた、一部の人には夜間の睡眠が改善し、クオリティオブライフが向上したという効果があったものの、改善の見られなかった人もいたという差異が生じているのです。

リラクゼーションと気分の改善

6ヘルツのバイノーラルビートを毎日10分間聞くことにより、心の状態が改善される可能性があります。この効果は、脳内に瞑想中のものと同じようなセンセーションが生まれることで引き起こされます。これによりリラックスすることができ、周囲の環境に対してより受容的になることができるのです。また、平静さや丁度いいバランス感覚を得ることができるため、モチベーションやポジティブさを高めることにもつながります。

以上がバイノーラルビートの健康効果の概要です。皆さんにとっても非常に興味深い内容だったのではないでしょうか。ただ、忘れてはならないのがこれらの研究結果は非常に変動性の高いものだということです。したがって、この現象が頭脳レベルで生み出している変化について正確に理解するためには、さらなる研究が必要になります。これが実現して初めて、私たちはこのセラピーによる恩恵を大いに受けられるようになるでしょう。

データが決定的でないからといって、その効果がゼロだということではありません。さらに言うと、自分にはどんなセンセーションが生まれるのか、各々が個人的に試すことが可能です。必要なのは良質なヘッドホンのみで、あとはYouTubeにあるバイノーラルビートの動画を再生するだけで体験することができます。楽しい音の世界にどっぷり浸かるというのは、どんな時でも心地良い経験となるはずですよ!

  • Leila Chaieb, Elke Caroline Wilpert. Auditory Beat Stimulation and its Effects on Cognition and Mood States. Frontiers in Psychiatry. 2015; 6: 70. doi: 10.3389/fpsyt.2015.00070