ブロークバック・マウンテン:愛の物語

ブロークバック・マウンテン:愛の物語
Leah Padalino

によって書かれ、確認されています。 映画批評 Leah Padalino.

最後の更新: 21 12月, 2022

2018年1月22日はヒース・レジャーの死から10周年記念日でした。28歳で若くして亡くなりましたが、素晴らしい映画界の遺産を残しています。『カサノバ』、『チョコレート』『ブロークバック・マウンテン』『ダークナイト』、そして『Dr.パルナサスの鏡』などに出演しましたが、この作品の途中で死亡したため別の俳優が代役を務めています。ヒースの最も記憶に残る役と言えば、死後にオスカーを受賞したダークナイトのジョーカーです。多くの人が「史上最高のジョーカー」と称しています。

この記事では、ヒースのキャリアでも重要な『ブロークバック・マウンテン』をご紹介します。 アン・リー監督の同作は、2005年に公開されました。ヒースはジェイク・ジレンホール、アン・ハサウェイ、ミシェル・ウィリアムズと共演しています。この共演がきっかけで出会ったミシェル・ウィリアムズとはのちに婚約し、娘のマチルダが生まれています。

ブロークバック・マウンテン』はE・アニー・プルーの小説が原作です。同映画は、3つのオスカーを含む様々な賞を受賞しています。60年代&70年代が舞台のラブストーリーで、同性愛者への社会的な抑圧がテーマです。

映画の中の同性愛

毎年、映画の中でのゲイのキャラクターは増えているように思われます。しかし、ずっとそうだったわけではありません。さらに、これらのキャラクターの多くは脇役だったり、ロマンスの中心ではなかったりします。多くの役は(今でもそうですが)滑稽です。一般的なものとは違ったストーリーを模索する個人製作の映画を除いて、大衆映画で同性愛のラブストーリーを見ることはごく稀です

同性愛は、歴史上大きなタブーとされてきました。かなり変わってきてはいますが、異性同士のセックスシーンはどんな作品にも出てくるのに、同性同士のセックスシーンはあまりありません。同性愛者が主人公になったり、『ロミオとジュリエット』や『タイタニック』のようなラブストーリーになることもほとんどありません。社会がロマンスは異性愛者だけのもの、としてしまっているかのようです。

「時々君がすごく恋しくなって、我慢できないんだ。」
-ジャック・ツイスト、『ブロークバック・マウンテン』-

ブロークバック・マウンテン』は同性愛がテーマの唯一の映画というわけではないですが、同性間のラブストーリーにプロット全体の焦点を当てたという意味で草分け的存在です。さらに、2人とも男性というころが注目です。ロマンスが女性らしいと考えられていたことを踏まえるととても面白い事実です。

異性愛者のラブシーンにおいては、女性のヌードが中心であると気づくと思います。アデル、ブルーは熱い色』に見られるように、女性のヌードやレズビアンのシーンは、男性の体やゲイシーンに比べれば反感が少ないように見えます。ゲイシーンは、異性愛的な男性らしさのステレオタイプに疑問を呈してしまうことになるからかもしれません。

ハグ

議論を呼ぶ映画

様々な賞を受賞し大成功だったにもかかわらず、『ブロークバック・マウンテン』はかなり議論を呼びました。ヒース自身も、居心地を悪くなるような同性愛嫌悪的な質問を記者からされることがあったそうです。カトリック教会と関係のあるアメリカの団体は、かなりひどく映画を批判しました。

公開を中止する映画館もありました中国では同作自体が禁止です。イタリアのチャンネルでは、同性愛のラブシーンやキスシーンでさえ放送が制限されます。しかし、同作のあからさまな異性愛のラブシーンは制限がかけられませんでした。

大事なことは、同作がその目的を果たしたことです。「議論を呼ぶような」問題を敬意を持って扱うことです。さらに、性別など関係ない2人の人間の真の愛を描いています。

『ブロークバック・マウンテン』

ブロークバック・マウンテン』は、ゆっくりとした静かな映画かつとても感情的です。大衆向けの映画では見られなかった要素を盛り込んでいます。つまり、2人の男性の間の愛です。2人とも「超男性らしい」タイプで、同性愛に罰を下すような社会でお互いへの愛のために戦わなくてはいけません。

イニス・デル・マーは、まじめで静かな若い男性です。ジャック・ツイストは威勢がよくおしゃべりです。世界から完全に引き離された山で季節労働者として共に働きます。孤独、共謀、共存の中で2人は性的な関係を持つようになり、初めは複雑な感情を抱いたものの、一生続く愛が生まれるようになりました。しかし、家父長制の社会と男性のステレオタイプのため、2人は関係を隠さざるを得ませんでした。

乗馬

イニスははじめそれに抗うものの、ジャックは積極的に関係に踏み込んできます。最終的にはイニスも自分の気持ちに正直になりますが、イニスは固い鎧をかぶっていることがすぐにわかります。もうすぐ女性と結婚する予定で、「ホモ」じゃないとジャックに念押しします。子ども時代のトラウマで、自分の鎧を打ち破って本当の気持ちを表現することができないのです。そのトラウマとは、まだ幼いころに、同性愛者であるために拷問され殺された男性の遺体を父親に見せられたことがあったのです。

『ブロークバック・マウンテン』のストーリー

夏が終わりを告げて、2人の関係も終わりを告げます。イニスのトラウマは、2人の間に暴力的なシーンを生み出してしまいす。イニスはジャックへの気持ちがあるにもかからわず、自分が同性愛者であることを受け入れられずにそれが暴力に現れてしまったのです。

最終的に、「そうするべきである」ように2人とも女性と結婚し、親となります。イニスの人生は厳しいものでした。家族は経済的な問題を抱え、イニス本人も幸せではありません。ジャックは裕福な女性と結婚し、うまくいっているように思われます。しかし物語を見ていくと、これは始まりに過ぎず、ジャックの結婚生活は危機に瀕していることがわかります。特に、義理の父親との関係が複雑です。ジャックの義理の父は家父長制の価値観を基礎にする典型的なテキサスの男といった感じの人です。すべての男性が「最優位雄」であるべきという考えで、ステレオタイプ的な習慣を期待しています。

ブロークバック・マウンテン喫煙シーン

ジャックとイニスは何年後かに再会し、その瞬間から逢瀬を頻繁に重ねるようになりました。時がたっても情熱や愛が途切れることはありません。ジャックはすべてを捨てて喜んでイニスと新しい生活を送る覚悟ですが、一方のイニスは社会の被害者となり、与えられた役割から自らを解くことができません。受け入れられなかったり、自分が幼いころに見た同性愛者の男性のようになってしまうことが怖いのです。

『ブロークバック・マウンテン』は、偏見を忘れてまっさらな気持ちで恋愛物語として映画を見るように誘います。西洋のキリスト教的で保守的な環境の中での2人の男性の愛の物語です。一生続く真の愛です。

「お互いのそばにいて、またこんな感情を抱いてしまう。間違った場所で…間違った時代に…。僕たちは死んだも同然だよ。」
-イニス・デル・マー、『ブロークバック・マウンテン』-

 


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