クラーク・L・ハルと演繹的行動主義理論

2019年7月13日
20世紀には、いくつかの偉大な学習理論が提唱されました。クラーク・L・ハルは習慣強度に基づく最も事細かな理論の1つを提唱しました。

クラーク・L・ハル(1884-1952)は行動を理解するための新しい方法を提唱しました。ハルは様々な動物の種の個別行動と社会的行動について説明するために、行動科学の基本原理を確立しようとしました。彼の理論は演繹的行動主義として知られています。

ハルの理論は、20世紀を通して示された主な学習理論の中で最も詳細で最も複雑でした。ハルにとって、習慣強度と呼ばれるものが最も基本的な概念となっています。彼は実践が習慣を強化する、と確信していました。

ハルは習慣を、報酬に基づく刺激と反応の関係性と見なしました。ハルによると、知覚や期待ではなく反応こそが習慣を形作るのに役立っているのだそうです。そのプロセスは段階的であり、報酬が必要不可欠です。

ハルの演繹的行動主義理論

クラーク・L・ハルは行動主義を理解するための新しい方法を提唱しました。これは、彼の時代に流行した論理実証主義に由来するものでした。

その他の先行する理論家たちと同様に、ハルは人間の行動は条件付けと強化によって説明できる、と考えていました。衝動の減少は行動の強化の役割を果たします。

この強化により、将来同じ事象が生じた時に、再度同じ行動を取る可能性が高くなります。従って、その環境を生き抜くために生物はこういったサバイバルニーズを満たすような方法で行動を取らねばなりません。ですので、刺激と反応の関係性において、その刺激と反応の後にニーズの低下が続く場合は、将来同じ刺激が同じ反応を”生み出す”可能性が高まるということです。

クラーク・L・ハル 演繹的行動主義理論

ハルは動物の個別な行動そして社会行動を説明するために行動科学の基本原理を確立しようとしました。彼の演繹的行動主義理論では、習慣が中心的な概念として提唱されています。習慣強度は、強化を引き起こす刺激と反応の連続によって決まってきます。また、強化の強さは生物学的ニーズに関連する衝動の減少によって変わります。

ハルは、「暗記学習の数学的演繹理論」(1940)のなかで、初めて自身の学習理論を発表しました。これは数名の同僚との共作で、数学と言語両方によって表現された主張を通して自分の発見を表現したものでした。

ハルはこれらのアイディアを行「動の基本」(1943)のなかで発展させます。ここで彼は刺激と反応の繋がりは強化のタイプと量による、と提唱しました。

ハルの学習理論

ハルは、全ての行動を説明するための理論を生み出そうとした最初の理論家の一人でした。ハルによって1943年に発展させられたこの学習理論は、動因低減説として知られます。ハルのこの理論は恒常性という概念に基づいています。これは、身体は特定のバランスと均衡状態を維持するために自発的に働く、という考え方です。

動因は、喉の渇きや空腹あるいは寒さなどのように、不愉快な状態あるいは緊張状態を生み出します。この緊張状態を低減させるために、人間や動物はこういった生物学的ニーズ(飲む、食べる、避難場所を見つける)を満たすことのできる方法を探します。この意味で、ハルは人間や動物はこういった刺激を低減させるようなあらゆる行動を繰り返すのだ、と提言しました。

ハルの理論は、人間は第二の動因(社会交流や渇き、空腹など、生物学的ニーズである第一の動因とな異なる)を条件付けによって学習するという考え方に基づいています。金銭欲のようなこういった動因は、避難場所の確保や生命維持に繋がるので、間接的に第一の動因を満足させることになります。

こういった第二の動因は、ニーズが1つ以上存在する場合に生まれます。その目標は、不愉快さを生み出す均衡(恒常性)の崩れを正すことです。学習は、学習は、第一の動因を満たすことができて初めて学習され、条件付けされます。

クラーク・L・ハル 演繹的行動主義理論

また、ハルは数学的に自らの学習理論を表現する方法も確立しました:

sEr = V x D x K x J x sHr − sIr − lr − sOr − sLr

この数式では:

  • sEr:反応ポテンシャル、あるいは生物が刺激(s)に対して反応(r)を生み出す可能性
  • sHr:習慣強度、過去の条件付けの数によって決定される
  • D:動因強度、生物学的欠乏状態の量によって決定される
  • K:誘因動機付け、あるいは目標の大きさや強さ
  • J:生物が強化を求めるまでの遅れ
  • lr:反応抑制あるいは疲労
  • slr:条件付き抑制、過去の強化の欠如によって引き起こされる
  • sLr:反応閾値、学習を生み出す最少の強化
  • sOr:ランダムな誤差

ハルによれば、動因低減説の主な教訓は、衝動の排除と削減に一致しているそうです。こういった衝動は生産性を損なわせるので、ハルの理論は職場環境において発展させられる潜在的な生産性が増大することを示唆しています。全てのニーズを満たすことで、職場でのパフォーマンスを向上させ、より大きな成功を得ることができるのです。

まとめ

批評家たちは、演繹的行動主義は複雑すぎる、あるいは一般化することができないので人間のモチベーションの説明になっていない、と批評しました。

ハルの動因低減説の大きな問題点の1つが、第二の強化がどう動因を削減するかを考慮に入れていないという点です。空腹や渇きといった第一の動因とは異なり、第二の強化は生理的・生物学的ニーズを直接低減させるようなことは何もしていません。また別の重要なこの理論の批評は、なぜ人々は動因を低減させない行動にも従事するのかという点について説明していない、というものです。

何れにせよ、このアプローチはその後世に出てきた理論や説明に影響を与えることとなりました。1950年代、1960年代に登場した動機付け理論の多くは、ハルの理論に基づいているかもしくは動因低減説に取って代わる考えを提供するものでした。その中の好例がアブラハム・マズローの有名な欲求の階層という考え方で、これはハルのアプローチの代替案として登場しました。

  • Hull, C. L., Hovland, C. I., Ross, R. T., Hall, M., Perkins, D. T., & Fitch, F. B. (1940).Mathematico-deductive theory of rote learning: a study in scientific methodology. Oxford, England: Yale Univ. Press.
  • Hull, C. L. (1943). Principles of behavior: an introduction to behavior theory. Oxford, England: Appleton-Century.
  • Leahey, T. (1998). Historia de la psicología. Madrid: Prenti Hall.