エデュアルド・パンセットにお別れを:お茶の間に科学を広げた男

2019年9月20日
今回は、スペインのテレビ局に革命をもたらしたキャスターについてご紹介します。彼は複雑な科学の知識を非常に分かりやすくお茶の間に伝えました。

エデュアルド・パンセットの名は、楽観的、好奇心、飽くなき知識の探求などを連想させます。彼のような驚くべき方法を持って、学ぶことへの情熱を伝えることの出来る科学者はあまりいません。また彼のように私たちを心理学、天文学、人類学の世界へと引き込むことの出来る人もそういないでしょう。今回はこの家庭に科学を広げた1人の男性に別れを告げます。

彼のカリスマ性、独特な声、アインシュタインのような髪型、人への影響力、科学を広げることにかける情熱…どれをとってもエデュアルド・パンセットは非常に魅力的な人物です。彼はスペインのテレビ番組Redesにおける重要な人物であり、科学の報道に関する指標を作りあげました。彼は82歳でこの世を去りました。

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無知な科学者?

彼は無知な科学者のように見えましたが、実は政治と法に関する専門家としての顔を持っています。外見は風変わりでしが、毎週日曜18年間放送された番組の中で、パンセットはその伝える内容について毎回深い知識を披露していました。

Redesの演出兼放送を行う中で、彼はカール・セーガンのような人物のみが達成できる偉業を成し遂げました。何千人にも及ぶ視聴者を科学の世界へを惹き込んだのです。

ロジャー・ペンローズやマックス・テグマークへのインタビューを見ると、すぐにでも物理学者や宇宙学者になって、宇宙の深い起源について理解出来るようになりたいという気持ちになります。ジェーン・グッドオール、ローレンス・クラウス、アントニオ・ダマシオ、スティーブン・ピンカーとの会話も、私たちが非常に理解しやすいものでした。

  • 私たちの起源に関する多くの概念や理論
  • 真の感情とは何か
  • 将来起こり得るものとは何か

物理学、生物学、心理学、神経学、宇宙論…エデュアルド・パンセットは私たちを知識と発見の世界へと導いてくれました。情熱と好奇心、そしてどこまでも楽観主義であること、彼はたくさんのことを教えてくれました。視聴者を虜にしたのです。彼にサヨナラを告げるのは簡単ではありません。彼は多くの人にインスピレーションを与え、才能を引き出しました。有難いことに、彼は多くの映像と出版物を残しています。

 

「本当の自分、そして自分の弱さに関する知識が、より幸せになるカギなのだ」

―エデュアルド・パンセット―

 

エデュアルド・パンセット:科学の扉を開いた政治家

エデュアルド・パンセットが科学の普及者だという考えに懐疑的な人もいます。彼は法律の世界を経て、ロンドン大学で経済学の学位を取得しています。また政治家としても長いキャリアを積んでいます。彼はアドルフォ・スアレスの民主社会党員として政治家としてのキャリアをスタートさせ、後に1987年から1994年にかけてユーロ議会員となりました。

彼はコミュニケーション能力に長けており、それに影響を受けたテレビ局が科学番組を担当してくれるよう依頼したのです。パンセットは学位もその分野に関連するトレーニングを受けたこともないまま、その番組を毎週続けました。

ですが彼にはそれにも勝る特別なものが備わっていました。カリスマ性、科学的直感、簡単な方法で明確に知識を伝える方法を理解していた、などです。彼は情熱をもって人々に情報を伝えました。

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Redes:誰にでも分かる科学の知識

80年代、米国でCosmosのカール・セーガンが名をはせている頃、スペインではRedesのエデュアルド・パンセットが人気を集めていました。放映は夜明けにされていましたが、ファンになった視聴者は何千人にも上りました。神経科学、天文学、生物学にまるで無知だった人々がこの複雑な科目に情熱をもって取り組むようになったのです。

このプログラムは1996年3月に放映を開始し、2008年には小さな変更を加えました。RedesからRedes2.0に名前を変更したのです。エデュアルド・パンセットは毎週有名な専門家にインタビューをしました。科学の世界はこれまでと全く違う、親しみやすい分野へと変わっていったのです。

朝早く仕事に出る人はわざわざ録画をするようになりました。この番組には毎週必ず何かしら学ぶことがあったのです。番組を通して人々はオリバー・サックス、ジェームズ・ワトソン、フランシス・クリック、スティーブン・ピンカー、ロビン・ダンバー、ローレンス・クラウス、ロジャー・ペンローズ、ジェーン・グッドオール、アントニオ・ダマシオ、ダニエル・デンネット、リン・マーグリスなどを知ることとなったのです。

彼は自ら英語のインタビューにスペイン語の吹き替えを入れ、新しい概念、理論、科学的視点を自然に人々の頭に浸透させました。これもまさに彼の声とカリスマ性のなせる技なのです。

エデュアルド・パンセット

 

エデュアルド・パンセットと彼の本を介した解説

Redesを放送しながら、エデュアルド・パンセットは新たなプロジェクトに取り掛かりました。本を書くということです。Trip to happiness(2005)、The soul is in the Brain(2006)、Why are what we are(2008)など多数の本を書いています。これらの本が世に出たことで、突然科学という分野が身近になり、またそれは刺激的で教育的な旅の始まりでもありました。

本の中では彼の声は聞こえませんが、やはり複雑なものをシンプルにまとめるという彼のスタイルは変わっていません。彼が伝える理論や情報は、科学という難しいものから、日常の身近な「知りたい」と思っていた何かへと繋がるのです。

Journey to Love(2007)、The journey to the power of the mind(2010)、Alice’s Dream(2013)などは、エデュアルド・パンセットが愛した分野「自助」をテーマとしています。

Redesは2014年の1月の放映を終了しました。その後パンセットは科学の世界から退き、個人の成長と自助についてフォーカスするようになりました。

エデュアルド・パンセット

 

さよならエデュアルド・パンセット

彼は数年前に健康上の理由により、メディアの世界から身を引きました。彼が去った今、科学の世界は行く先を見失っています。世界に科学者は必要ですが、知識を伝える魔法をのような力を持つ人もまた必要なのです。

エデュアルド・パンセットは、好奇心の情熱を持った星のように輝き続けました。彼の残した映像や文学という遺産を胸に、彼に別れを告げましょう。