映画「インソムニア」:あなたを寝かせない内なる悪魔

トラウマになるような経験をすると、人は正確に何が起こったのかを処理する必要があります。これがその出来事を理解しようとするための唯一の方法だからです。
映画「インソムニア」:あなたを寝かせない内なる悪魔
Beatriz Caballero

によって書かれ、確認されています。 心理学者 Beatriz Caballero.

最後の更新: 21 12月, 2022

2002年、クリストファー・ノーラン監督が、アラスカでおきた奇妙な殺人事件についての怪奇映画「インソムニア」を発表しました。主人公は、ロサンゼルス出身で影響力のある警察官、ウィル・ドーマー(アル・パチーノ)です。彼は同僚のドノバンと、この10代の若者が巻き込まれた悲惨な犯罪を調べるためにアラスカにやってきました。

 

殺人犯を今にも捕まえそうになったところで、彼はドノバンを射殺してしまい、殺人犯(ロビン・ウィリアムズ)は霧の中へ逃げていきます。ウィルは起こったことが受け止められず、犯行の現場の証拠を使ってまで、この出来事の説明を変えてしまうのです。

殺人犯はウィルと連絡を取るようになり、彼を脅迫し始めます。偉大な刑事は彼の友人の死と、罪悪感の間で苦しめられます。殺人犯からの止まない電話に加えて、彼は不眠症に悩まされるようになるのです。

罪悪感が不眠症に変わる時

アル・パチーノ演じるウィル・ドーマーは、起きたことを受け止められません。彼は他の人といるときにも起こったことを拒絶し、自分自身でもそれを認めることができないのです。これにより、彼はこの出来事を人生の中で消化することができません。この出来事に関わりたくない、そしてその責任を負いたくないと思っています。しかし、彼の良心が起こったことすべてを覚えています。

このようにトラウマになるような経験をすると、人は正確に何が起こったのかを処理する必要があります。これがその出来事を理解しようとするための唯一の方法だからです。ウィルの場合、拒絶と否定が精神的にも身体的にも彼を侵食していきます。

映画「インソムニア」:あなたを寝かせない内なる悪魔

不眠症はあなたを生かしてくれない

事故の後、ウィルはあれは自分のせいではなかったと自分に言い聞かせます。この実際に起こったことについての精神的な回避が、自分自身や、他の人々、そして自分の生きる世界についての不快なことを彼に気づかせることにつながります。

アル・パチーノは心的外傷後ストレス障害(PTSD)がどのようにして起こり、人々がそれとともにどのように生きているかを明確に描き出しています。ウィルは極度にトラウマになるような出来事を経験し、それによる恐怖や無力さ、ぞっとするような気持ちを感じました。この悲劇の後、彼は夢や嫌な思い出、フラッシュバックを通してこれを追体験することになるのです。

ウィルはこの事件を解決するための唯一の手段は、真実を話し、そうすることで自分を罪悪感から解放することだということをわかっていました。しかし、彼は起こったことについて考えるのを避けることを選び、嘘でその出来事を変えようとしたのです。

彼は事故がどのように起こったかについて、新しい物語を作り上げました。このトラウマになった出来事の原因と結果についてのゆがめられた思い出を作り上げることで、それを行ったのです。そしてその責任をまた別の人物に押し付けようとさえしました。

嘘をつきとおし、自分の罪悪感を隠すために、彼は自分を他の人から遠ざけ始めます。なにごともポジティブな感情に変えられる彼の能力は、ゆっくりと消えていきます。しかし彼の同僚がそれに気づきました。彼の集中力が大いに欠如していることや、不眠症が原因であるということは明らかだったのです。

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性格とトラウマ

私たちがあらゆる種類のトラウマを経験するとき、性格は2つ以上の精神生物学的下位組織に分かれます。これらはとてもは厳格な機能を持っていて、適応するのが難しいものです。それは異なる方法で進化し、感情的性格部位(EP)と外見上普通に見える性格部位(APN)になります。

  • 感情的性格部位(EP):この部分は、運動感覚レベルでよみがえるような、トラウマになる経験からの緊迫した感情を含んでいます。この部分は不本意に可能性のある脅威に注意をむけます。これらの脅威は過去のトラウマのために実際より大きいように感じてしまうこともあります。
  • 外見上普通に見える性格部分(APN):この部分はトラウマになっている記憶を避け、毎日の生活に集中しようとします。その人が「普通に」振舞っているように見えても、実はネガティブな症状が出ることになるのです。それには人と距離をとること、倦怠感、そしてトラウマになった経験についての部分的または完全な記憶喪失などがあります。

これらの2つの性格の要素がわかれると、PTSDのような結果になります。そうするとトラウマになった記憶を統合することができなくなります。また、その出来事を自分の物語としての記憶に変えることもできません。しかし、トラウマを受けた人はその出来事について話しそれを自分で理解する必要があるのです。

私たちの人生で、私たちは自分の人生を演じます。脚本はさまざまな方法で主人公を常に変えていきます。「インソムニア」はその人がある経験をどのように自分の人生の中に統合していくかによって、その経験の前と後がどう意味するかを反映しているのです。

「自分の心の平穏が乱されたり、心の平穏を感じたことのない人は、その原因がなんであれ、深刻な身体的そして心理的影響にさらされることになる。」
―フランシーン・シャピロ―


このテキストは情報提供のみを目的としており、専門家との相談を代替するものではありません。疑問がある場合は、専門家に相談してください。