フット・イン・ザ・ドア・テクニックとは?
誰かがご自宅を訪ねてきて、ある珍しい病気の闘病のための非営利募金を頼まれたと想像してください。おそらくあなたは現在手元に現金がないから、と追い返すでしょう。では次に、同じ団体が再び訪ねてきて、無料のボタンを渡されたとします。そして、この病気への認知を広げるために一週間そのボタンを着けてくれ、と頼まれます。二週間後、彼らは再び募金を頼みにご自宅に現れます。この時、あなたが募金に協力する可能性は極めて高くなります。これが、フット・イン・ザ・ドア・テクニック(FITD)の一例です。
あなたが気付かないうちに、たくさんの心理学的なテクニックを使ってあなたを操ろうとしている人たちがいるのです。実は、こういったワザを編み出すことで生計を立てている人もいるほどです。フット・イン・ザ・ドアテクニックは、最も有名でよく練られた、社会心理学における他人をあやつるための社交術なのです。
フット・イン・ザ・ドア・テクニック
社会学者のアーサー・L・ビーマンと彼の研究チームが1983年にFITDを定義づけました。フット・イン・ザ・ドア・テクニックは、後に大きな依頼をしようと計画している相手に最初は小さな頼みごとからお願いする、というものだと彼らは述べています。ビーマンによると、このテクニックはまずは絶対に受け入れてしまうような些細な要求をすることから始まります。その後しばらくしてから、同じ人物に前回よりも大きなお願いをするのです。その二つ目の要求というのが彼らの真の狙いです。
この二つ目の要求に対する反応について説明する背後要因は、コミットメントと一貫性です。自発的に何かを行うことに同意した人は、後からその要求に関連するもっと大きな要求を受け入れてしまうようになるのです。
例えば、いったん何かに対する立場を表明してしまうと、その宣言を強調するような行動をより一層行いやすくなります。思考と行動、そして世間からの目との一貫性を持たせようとしてしまうのです。このテクニックは、そのコミットメントが公なものである場合や公式に選んだものである場合、あるいは最初のコミットメントにお金がかかった場合、さらに効果が高まります。
“騙されているということをその人に分からせるよりも、その人を騙すことの方が簡単だ”
フリードマンとフレイザーによる実験
フリードマンとフレイザーは、一定数の人々にだいぶ大きくて不恰好な「安全運転」という看板を家の庭に置いてくれないか、と依頼しました。その結果、同意したのはそのうち17%の人々のみでした。それから、2人は別のグループに、交通安全に関する嘆願書に署名してくれないか、と頼みます。この要求はそれほどコミットメントが求められないものだったので、ほとんどの人が署名に応じました。それからまもなくして、2人は同じ人々に、家の庭にあの大きくて不恰好な看板を置いてもらえるようお願いしました。何が起きたでしょう?今回は、55%もの人がこれに応じたのです。
フット・イン・ザ・ドア・テクニックとカルト
このテクニックとカルトとの間には何か関係性があるのでしょうか?実は、これは説得術であり、カルト団体の目標はあなたを誘い入れることですのでもちろん関係があります。カルト団体の最初のコンタクトは小規模な集まりなどになるでしょう。それから、少額の寄付を依頼されるかもしれません。それ以降はその他の要求にも応じてしまう可能性がグンと高くなります。
数時間のボランティア活動などに同意してしまうと、その後高額な寄付の依頼に応じてしまう可能性があるのです。極端な例で言うと、自由意志という名目で性的行為や集団自殺にまで関わらされてしまうこともあります。
まとめ
人を操るための社交術を使って、他人から何かを奪い取ろうとする人たちがこの世にはいます。もし誰かが電話をかけてきて、インターネットを使用しているか聞かれたら、おそらくあなたはイエスと答えるでしょう。この方法で、彼らはあなたを電話口に留まらせるのです。次の質問は、インターネット代をもう少し安くしたくないですか?といったものになるでしょう。そしてあなたはまたイエスと答えます。たった二つの質問だけで彼らに捕らえられてしまうのです。
FITDにおけるもう一つ重要な要素が、要求されたことについて考える時間が少ない、という点です。注意深く見てみると、提示される条件には制限時間があることに気づくでしょう。“このお値段で手に入るのは本日限りです。今がチャンスですよ!” 彼らはこうしてプレッシャーを与えてくるので、情報を処理する時間が与えられる前に応答せざるを得なくなってしまうのです。
こういった人々に利用されないように、断り方と対人操作術の見破り方を学びましょう。小さな、一見無意味な”イエス”がのちに頭痛のタネにつながってしまうのです。ですので、次回は”はい”と答える前にもう一度考え直してみてくださいね。
“人を操るのに最善の方法は、その人に彼が自分を操っているのだ、と信じ込ませることだ”
-ジョン・スミス-