変化に適応できるようになることの重要性

変化に適応できるということは、柔軟な人間であるということを意味しますが、これは素晴らしい特性です。変化がトラウマを与えるものになってはなりません。実は、適応というプロセスは、とてつもないメリットをもたらしてくれることがあるのです。
変化に適応できるようになることの重要性
Valeria Sabater

によって書かれ、確認されています。 心理学者 Valeria Sabater.

最後の更新: 21 12月, 2022

「適応するか死ぬかのどちらかだ」というようなフレーズを、あなたもおそらく耳にしたことがあるでしょう。幼い頃から私たちは、あらゆる試練と一つ一つ向き合わねばならないことを学んできましたが、これはネガティブな心境に繋がりかねません。それが、このメカニズムの働き方なのでしょうか?変化に適応できる能力はなぜそれほど重要なのでしょう?

実のところ、今現在までに私たち全員が、周囲の環境に対して、そして自らを取り巻くもの全てに対して適応せざるを得ない状況の中で暮らしてきました。それはまるで、今この瞬間の現実が私たちに押し付けられていて、私たちに残された手はそれを受け入れる以外にないというような状況です。このような状況に置かれて、先の見えないことへの不安やフラストレーションが生まれてしまうのは全くもって普通のことであると言えます。事実、人間の脳は変化をそれほど好まず、今いる環境の中で起きる変動を全て「脅威」として認識するのです。

ただし、ここに一つ、疑う余地のない真実があります。それは、人生と変化とはほぼ同義であるということです。ギリシャの哲学者ヘラクレイトスがかつて語ったように、「何人たりとも同じ川に二度足を踏み入れることはできないのだ、なぜならそれはもう同じ川ではないし、彼も先ほどと同じ男ではないのだから」、なのです。このような絶え間ない流れに適応する術を知っておくことが、健康やウェルビーイングを手に入れるためのカギとなります。それこそが、近年心理学のプロたちが「人間の適応」という分野に力を注いでいる理由なのです。それでは、この魅惑的としか言えない分野についてもう少し掘り下げていきましょう。

「変化に適応できるようになる」とはどういうこと?

この考え方を詳しく見ていく上で、まずは、かの偉大なチャールズ・ダーウィンの言葉を引用するところから始めましょう。「生存できるのは最強の種でも、最も知能が高い種でもなく、変化への反応が最も優れている種なのだ。」無論、現代社会では生死を左右するような行動が取れるかどうかはそれほど重要ではなく、柔軟性のない、頑なな心理的視点を持っているにも関わらず「生存できている」人たちが大勢います。

したがって、周囲の環境への要求に適応できないという理由だけで死ぬ人など今の世の中には一人もいない、と言い切ってしまって問題ないでしょう。しかし代わりに、こういった人々はうつ病や不安障害に苦しむリスクが非常に高くなります。適応の失敗は結局苦痛をもたらす、というのが現実なのです。変化に抗おうとする人は誰であっても、フラストレーションや怒りを感じるようになります。なぜなら、現実の方が自分の願いに合わせて変化してくれる日など決して来ないからです。

また、このことが当てはまるのは人間のみではありません。企業や社会領域も、進歩のためには「学習可能性」、「流動性」、そして「可動性」の三つの次元への投資が不可欠であることを認識・理解しています。変化に適応できるようになることこそ、個々の成長を実現させる唯一のメカニズムなのです。

変化に適応できるようになること 重要性

感情、思考、行動を連携させる

アメリカ心理学会(APA)は、適応性というものを非常にシンプルに定義しています。これは基本的に、変わりゆく状況に対して適切な反応を返す能力のことです。適応を実現するためには、変化に合わせて自身の行動や思考、そして感情を改めていけるようにならねばなりません。

まず、一つ心に留めておくべきことがあります。例えばあなたが誰かに「適応性とは何か?」と尋ねると、相手から「生存するために自分たちの行動を変更する能力のことだ」という答えが返ってくるとしましょう。この定義は正しいのですが、完璧とは言えません。実のところ、適応するためには、創造性を発揮して新たな思考アプローチを作りださねばなりませんし、特定の感情を再活性化する必要もあります。

ただ、適切な思考の枠組みを持っていないと新しいアイディアを生み出すことはできませんし、革新的で自信に満ちた、勇敢な考え方ができないと、その場にふさわしい行動が表面上に浮かんでくることはありません。

「変化に適応できるようになること」≠「自分自身を変えること」

人々の考えとしては、やり直しや再出発が最も理想的だ、というのが一般的です。中には、適応や死とは、自分を自分たらしめていたもの全てを脇に捨て去ることを意味する、と決めてかかっている人すらいます。どんなことが起ころうとも新バージョンの自分を形成せねばならない、と思い込んでいるのです。しかし、今こそこういった通俗的な考え方の多くを排除する必要があります。よくよく分析してみれば、実はこれらがそれほど論理的とは言えないことがわかるはずです。

変化に適応できるようになる上で、何もゼロからやり直す必要などありません。人間はヘビとは違うのですから、脱皮して、自分の本質や学んできた事柄、価値観、そしてアイデンティティと対立するような新しい自分に生まれ変わることなどできないのです。ご自身にとって適応が何を意味するかを学びたいのであれば、これまでの人生で役に立ってきたスキルに目を向けてみてください。そして何の役にも立たなかったものは捨て去り、代わりに新たな能力を身につけることに集中しましょう。

そのためには、適切な内観が必要になります。例えば、あなたの強みの一つとして自信というものがあるかもしれませんが、これは非常に重要です。しかし、超越性が欠けているかもしれませんし、クリエイティビティを高める方法を考える必要があったり、困難な時期にもチャンスを感じ取る方法を学ばねばならないかもしれません。こういった新たなアプローチは全て、力を入れる価値のあるものですし、あなたの本質を奪わずに維持してくれます。

変化に適応できるようになることの重要性

適応能力と不確実性への耐久力

シドニー大学(オーストラリア)の教育心理学教授Andrew J. Martinは、長年に渡って人間適応という分野の研究をしてきました。ある研究の中で彼は、「我々が学生に対して、将来の見通しがつかない時期にも耐久力を持ち、変化への適応力を身につけるよう指導すれば、彼らの学業成績は大幅に改善するだろう」と指摘しています。

不確実性を受け入れられるようになり、これを恐怖心や抵抗感なしに処理することができれば、より望ましい適応がしやすくなります。これに加えて、困難の最中にあってもチャンスに目を向けるということがカギです。

精神的な柔軟性を持てば、苦しまずに済む

変化への適応力が、人を苦しめることはありません。それどころかこの力を持つことで私たちは成長することができます。適応するという選択をする人は皆、シンプルにその状況に甘んじているというわけではなく、感情的・認知的柔軟性を行使しているのです。この力により、優れた手腕とたくましい直感を駆使して現実世界に順応できるようになります。反対に、柔軟性がない状態は人に害を及ぼします。頭が硬いと、成長プロセスが阻害されてしまうだけなのです。

最後に、今回紹介したような能力を磨き直すことは非常に重要です。私たちは、あなたの中にそういった能力が備わっていることを確信しています。今こそこれらを強化し、自分自身のために活用しましょう。


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