人が「気持ちは分かるよ」というとき

15 12月, 2019
苦しんでいる人に「気持ちは分かるよ」と言うと、相手の気持ちを無下にしてしまうかもしれません。結局他人がどんな経験をしているかなんて、本当に理解することはできないのです。

誰かに「気持ちは分かるよ」なんて言われたら、やさしい、思いやりのある言葉に思えるかもしれません。しかし、心理学的な観点から見ると、必ずしも最善の言葉とは言えません。実際には、他の人がどのような感情を経験しているかを完全に理解することはできません。そのため、ただ相手の話に耳を傾け、いつでも力になるということを知らせてあげるのが一番なのです。

「気持ちは分かるよ」という反応が問題である理由のひとつは、人は自分がどのような感情を感じているのか必ずしも正確に理解できるわけではないということです。誰かが何気なく「気持ちはよく分かる」なんて言うのはあまり適切ではありません。大半の人はセラピストでもなければ、心理学の専門家でもないのですから。

こういった経験はとても親しい人とあいだに起こりやすいものです。親は子どもと話すときにこのフレーズをよく使います。子どもに対して「気持ちは分かるよ」と言うことで、子どもが実際にはどんなことを感じているのか自分の言葉で話す機会を邪魔してしまいます。

ひとりひとりの人間はユニークであり、自分自身の宇宙に生きているのだということを決して忘れてはいけません。彼らの宇宙は、惑星があちこちを飛び回っていたり、誰にも見えない小さなブラックホールがあったりと、混沌としているかもしれません。

「自分らしくあり、自分の感じたことを話しなさい。それで気を悪くする人は大事な人ではないし、大事な人は気を悪くなんてしないのだから。」

― バーナード・バルーク ―

人が「気持ちはわかるよ」というとき、ほどんどの場合わかっていない

ほとんどの人々は、実際に聞いてみるかわりに物事を思い込んでしまうという悪しき習慣に陥ります。決めつける方が認知的に努力しなくて済むし、時間の節約にもなるからです。すでに持ち合わせている情報を元にして自分は知っているのだと思い込む方がずっと簡単なのです。

例えば、同僚が「パートナーと上手くいっていないの」とあなたに言ってきたとしましょう。するとあなたは、「その気持ちは分かるよ」と言いたくなると思います。思いやりがあり、相手とつながっているような気分にもなります。しかし、実はそうではないのです。私たちは、人にはそれぞれの感情の枠組みがあり、それは自分のものとは全く違うのだと忘れてしまいがちです。

さらに、こういった状況においては、「気持ちはわかるよ」と言ったところでそれほど共感力を示せているわけではありません。相手の感情を認め、確認しているのではなく、自分自身の感情を確認しているだけなのです。それではあまり役に立っているとは言えません。

人は生まれながらに他者とのつながりを求めるが、必ずしもその方法を知っているわけではない

ヴァージニア大学での研究の過程において、レイン・ベックス博士とジェイムズ・A・コーン博士は興味深い発見をしました。人間の脳には、他者とのつながりのためだけに存在する神経パターンがあるというのです。人は、他者とあまりに強くつながるあまり、相手の苦しみを実際に感じることがあります。

とはいえ、他人の感情を感じることができたとしても、それで相手の現実を完全に理解できるというわけではありません。母親は、子どもに何が起こっているのか知らなくても、子どものために苦しむことができます。友人がどんな状況下にあるのか詳しく知らなくても、友人の痛みを感じることはできます。だからこそ、適切に、相手を尊重する方法で、人とつながる方法を知っておくことが大切なのです。

気持ち 共感

辛い時を過ごしている人とつながるための最善の方法とは?

相手が子どもであれ、ティーンエイジャーであれ、親友であれ、はたまた他人であれ、「気持ちは分かるよ」に頼るのはやめておきましょう。実際に、2人の人が同じ状況を経験したとしても、同じ感情を経験しているとは限らないのです。

その例がこちらです。ジュネーブ大学のクラウス・R・シェレール博士とアグネス・ムーア博士はおもしろい実験を行いました。3000人の大人に同じ質問をしたのです。「2人の友人があなたの悪口を言っているのを聞いたら、あなたはどう感じますか?」と。

驚くべきことに、この問いに対して14種もの異なる感情的反応が特定されたのです。自分は怒るだろうという人もいれば、きまりが悪くなってがっかりするという人もいます。罪悪感を感じる人、孤独を感じる人、さらには、こそこそと陰口を言う人はもう友達とは言えないからどうでもいいと感じるという人さえいました。

この単純なシナリオに対する幅広い感情反応を考えると、「気持ちはわかるよ」という言葉はますます不適切であるようにも思えます。けれども、他にどんな反応をすればいいというのでしょうか?最も大切なのは、しっかりと聞く方法を知っておくことです。そして、ある種のフレーズや言葉のせいで、さらなる壁を築いてしまうこともあると心に留めておきましょう。

  • 「そんなの大したことない」「私も経験したけど、あなたは大げさすぎ」「あなたにはいつもそんなことが起こるね」「他のことに集中すべき」などの言葉は避けるようにしましょう。
  • 「気持ちは分かるよ」の代わりに、「どんな風に感じるの?」と聞いてみましょう。
  • 自分がどんな風に感じているのか表現するのは簡単なことでがありません。感情は複雑で、混沌としています。それらを受け入れ、言葉にするのには時間がかかります。こういった感情と葛藤している人たちに本当に必要なのは、サポートと安心感です。
気持ち 共感

時には、シンプルに「私はあなたのそばにいるからね」と言ってあげるのが最高の反応だったりします。結局のところ、そこに居て、力になってあげられるというのが一番なのです。何も決めつけたりせず、相手や相手の感情を批判しない、安心感や親密感を作ることが大切です。

  • Klaus R., y Scherer, AM (2019) El proceso de la emoción: evaluación de eventos y diferenciación de componentes. Revisión anual de psicología 70: 1