ジェフェリー・ヤングによるスキーマ療法

2019年9月28日
心の痛みを乗り越えるのは簡単なことではありません。従来の療法では効果があまり得られない患者にとって、スキーマ療法が効果的である可能性があります。この療法は、ゲシュタルト理論や認知行動療法など、様々な学派の考え方を統合したものになっています。

ジェフェリー・ヤングによるスキーマ療法モデルは、慢性的な精神障害にかなり効果的です。また、従来の療法では効果が見られない患者に対しても有益です。この興味深い手法は、愛着理論ゲシュタルト理論構成主義、精神分析のいくつかの要素、そして認知行動療法が組み合わされたものとなっています。

心理学者なら誰もが知っている事実があるとすれば、それは、中には患者のパーソナリティや再発率の高さ、また病気自体などの要因のせいで治療が非常に困難な症例があるということでしょう。例えば、パーソナリティ障害はどんなメンタルヘルスの専門家であっても手を焼いてしまうような病気です。

こういった精神状態の患者には、幅広い視野を備えた心理療法が非常に効果的です。ノーステキサス大学およびニューヨーク市立大学の研究により、心理療法を社会教育やワークショップ、マインドフルネスなどと組み合わせて行うと、治療が難しい患者への対応にもかなりの成果を発揮するということが証明されています。

様々なものを組み合わせた統合的な手法が有効とされていますが、その中でも最も広く認知されているのは、間違いなくスキーマ療法でしょう。ジェフェリー・ヤングが最初にこのスキーマ理論を生み出した時には、これはアーロン・ベックによる認知療法の改良版として捉えられました

“患者は、自らを変えるために自身の誤ったコーピングスタイルから脱しようとしなくてはなりません。例えば、あるスキーマに屈し続けてしまうような患者-自己破壊につながるような人間関係にとどまり続けたり、あるいは個人的生活や仕事に対して限界を設定しないことなどによって-は、そのスキーマを永続させてしまい、セラピーで大きな進歩を成し遂げることができません”
-ジェフェリー・ヤング-
ジェフェリー・ヤング スキーマ療法モデル

スキーマ療法:統合的なフォーカス

心理学者ジェフェリー・E・ヤングは、過去20年間の間、自身の経験や日々の職務の中で見られる医療的な要望を基に、スキーマ療法の開発に力を注いできました。この点については、彼の著書『Schema Therapy: A practitioner’s Guide』が、スキーマ療法の完璧で面白いマニュアル本として群を抜いていると言えるでしょう。彼は、メンタルヘルスの専門家が治療が難しく複雑な症例に対処するための手段を提供しているだけでなく、なぜ一つの療法だけに頼ることが必ずしも正解であるとは限らないかについても深く考えさせる機会を与えてくれています。

スキーマ療法のような全体論的な手法では、患者にとっての利益を最大限に大きくできるよう、様々な手法の中から最も効果的な手段が取り入れられています。では、スキーマ療法がどのような効果を発揮するのについて、もっと詳しく見ていきましょう。

スキーマ療法が掲げる目標

名前の通り、スキーマ療法では問題をはらんだ、自傷につながるような思考や行動を引き出してしまう機能不全的なスキーマを特定することを目指しています。これを達成するために、この療法では以下のようなガイドラインが用いられています:

  • 認知行動療法とは異なり、スキーマ療法では対立や誘導発見といった手段は用いられません。代わりに、より感情面のセラピーに基づくものとなっています。
  • また、この療法はその他の療法よりも長く続くという点についても言及しておくべきでしょう。結果を得るためには、患者はより多くのセッションに参加することが求められます。
  • スキーマ療法では、患者の幼少期に確立された不健全な習慣を探そうという試みがなされます。
  • メンタルヘルスの専門家は、患者のアイデンティティ観や自制能力、感情面のコミュニケーション、自律性、競争心といった面に働きかけます。
ジェフェリー・ヤング スキーマ療法モデル

この療法はどんな患者に効果的なのか?

スキーマ療法は、特にDSM-V(精神障害の診断と統計マニュアル)の第一軸に属する障害に効果を発揮します。第一軸に含まれるのは以下のような症状です:

また、ジェフェリー・ヤングは以下のような点についても強調しています:

  • スキーマ療法は、自らの感情や思考、また、気持ちについて話すことが満足にできないような人全員に効果があります。この手法は感情の阻害やネガティブな連想に対して有益なのです。
  • 実存的危機を抱える患者や、セラピーに通いたがらないような人々にとっても効果的な療法です。

スキーマ療法の二つの柱

スキーマ療法は、二つのエリアで効果を発揮します:

患者の行動の説明となるようなスキーマを特定する

認知行動療法では、スキーマとは人がどう考えたり思考したりするかを決定するパターンのことを指します。多くのスキーマが、不幸せな交際関係や破壊的な生活など、苦痛を生み出してしまうのです。

ジェフェリー・ヤングは、患者の人生初期の経験や感情的な気質を特定することが重要だ、と述べています。この療法で第一にフォーカスされるのは、初期の不適応なスキーマおよびその起源を特定することです。

スキーマ療法ではどのようにこういった問題にアプローチしているのか?

人が日々の課題や事象に対処するために用いるコーピングメカニズムは、その人が持つスキーマによって変わってきます。ヤング博士は三つの不適応なコーピングメカニズムを特定しています:

  • 回避。自身のスキーマや責任から逃れ、これらを遮断しようとします。
  • 降伏。何かに対処しなければならない時、常に悲しみや恐怖、無防備さ、無能さ、そして空虚さを感じてしまい、その結果、単純に人生に向き合うことができなくなります。これはセラピーの効果がなかなか見られないような鬱状態の患者に非常によく見られる状態です。
  • 過補正。ここでは、暴力や過剰な補正による反応をする傾向が見られます。その結果、日々の問題に対する応答が過剰なものとなってしまうのです。このコーピングメカニズムは境界性パーソナリティ障害の人々に一般的なものです。
ジェフェリー・ヤング スキーマ療法モデル

平均的に、この療法は約1年間ほど続きます。これは、セラピストにとって、患者との間に良好な結びつきを作り上げることが要求される困難で奥の深いプロセスなのです。患者がセラピストに対して居心地の良さを感じられれば、彼らも自らの問題のあるスキーマの特定に向けて取り組み始めることができます。

その後、セラピストは患者が新しく強固で効果的で健全なスキーマを作り上げられるように、ゲシュタルトセラピーや精神分析、認知行動療法、そして感情療法などを用いていきます。まとめると、スキーマ療法はメンタルヘルスの問題を抱える多くの患者にとって有益で興味深いセラピーだということです。

  • Young, J. (1999): Reinventing Your Life. New York: Plume.
  • Young J. (2003): Schema Therapy: A Practitioner‘s Guide. New York: Guilford.