隔世遺伝的な恐怖:定義と特徴について

隔世遺伝的な恐怖を挙げたリストはそれほど長くはありませんが、ここから派生するものを挙げればキリがありません。人間の日常的な恐怖心の大部分は、私たちを危険から遠ざけておくことを目的として先祖から受け継がれてきた恐怖心に由来しています。
隔世遺伝的な恐怖:定義と特徴について
Gema Sánchez Cuevas

によって書かれ、確認されています。 心理学者 Gema Sánchez Cuevas.

最後の更新: 10 2月, 2021

隔世遺伝的な恐怖という言葉は、ほぼ全ての人類が共通して持つ恐怖心を言い表しています。実は、古来より人間はその存在をよく認識していました。なぜなら、人類が存在していられるのはこの恐怖心のおかげだからです。要するに、隔世遺伝的な恐怖は世代から世代へと受け継がれ、個人の経験に関係なく永遠に残存してたのです。

隔世という言葉は、先祖の時代あるいは古い過去を指しています。したがって、隔世遺伝的な恐怖とは、遠い昔に人類が種として獲得した類の恐怖のことを言うのです。この古来からの恐怖心について探究し、今日に至るまで人間がいかにしてこれを活用してきたのかを解明することは、非常に興味深い体験となるでしょう。

原則として、恐怖とは危険や脅威に対する適応反応です。身体内部の警戒モードを作動させ、身を守るための警告なのです。この感情は、お分かりの通り、命や無傷な状態を守る上で重要な役割を果たしてます。そして隔世遺伝的な恐怖とは、最も深刻な脅威に対する集団的な適応反応なのです。

“ゴブリンたちと、彼らの売る品物には用心せよ”

-S. Jae-Jones, 『Wintersong』-

隔世遺伝的な恐怖 定義 特徴

特に一般的な五つの隔世遺伝的恐怖

普遍的な恐怖はいくつかありますが、どの時代にも、そしてどの文化圏にも共通して存在し続けてきたものは五つしかありません。つまり、これら五つのみが時間も空間も超越しているということです。事実、多くの権力がこれを力の強化や自身の保護のために利用してきました。

生き埋めにされることへの恐怖、あるいは自律性を失うことへの恐怖

これが特に一般的な隔世遺伝的な恐怖の中の一つです。ここには、単に生き埋めにされる恐怖だけでなく、罠にはまることや身動きが取れなくなること、あるいは制約を課されることなど、意識があるのに行動を起こせなくなるようなあらゆる形態への恐怖が含まれます。これが非常に恐ろしいのは、命の危機に直面しながら全くの無力感を味わわねばならないからです。

一人きりでいる時に攻撃されることへの恐怖

いかに孤独で独立した存在であろうと、心の奥底では人は誰しもが社交的で、周囲に人がいるとわかっている時の方が安心感を感じられます。

人類はか弱い哺乳類ですが、集団で暮らすことでなんとか生き残ってきました。つまり、私たちはすでにこの世にはいない先祖集団から多大な恩恵を受けており、さらに、将来の世代のために新たな現実を構築している最中なのです。そのため、例えば森の中で一人ぼっちでいると、攻撃を受けることへの隔世遺伝的な恐怖に襲われます。

悪臭への恐怖

この隔世遺伝的な恐怖は、何よりもまず、拒絶の反応として表出します。正常な条件下で私たちが嫌な臭いにゾッとするのは、それが腐敗した物体の存在を示唆しているからであり、ひいてはその物体のせいで健康や生命が脅かされかねないからです。これまでに嗅いだことのない悪臭に遭遇すると、すぐさま強い恐怖心が湧いてくることがありますが、これは人間の脳が自然とその匂いと危険や攻撃とを関連づけるからなのです。

不完全体になることや、統一性が失われることへの恐怖

これは人間の考え方としてはあまり一般的な恐怖ではないかもしれません。それでも、特に表出する頻度の高い隔世遺伝的な恐怖の一つではあります。不完全体になる、というのは身体の一部を物理的に失うことだけでなく、身体機能を喪失することをも意味します。したがって、病気になることへの恐怖もこの一部です。これは、身体を自分の知る状態そのままに保存しようとする試みの現れなのです。

性的暴行を受けることへの恐怖

この恐怖は男性にも女性にも見られます。しかし、女性が性的暴行を恐れるのは、多くの男性たちが共通して「誰かを犯したい」という願望を抱いていることを知っているからです。一方で男性の場合、彼らは自らが愛する女性が性的暴行の被害者になったらどうしよう、という恐れを抱いています。また、度合いはそれより低いものの、自分自身が被害に遭うことへの恐怖心も持っています。これこそ、最も単刀直入な隔世遺伝的恐怖の一つと言えるでしょう。

隔世遺伝的な恐怖 定義 特徴

隔世遺伝的な恐怖への対抗策

建築物や都市、そして社会的・文化的システム、ほとんどがこういった隔世遺伝的な恐怖の対象を回避する意図で構成されています。そして宗教や科学もまた、誰一人として逃れることのできない普遍的な恐怖心に対する返答なのです。

こういった恐怖を克服する方法としてはその他に、これらの恐怖の対象について考えないようにすること、その考えから遠ざけてくれるようなシチュエーションを作り出すこと、そしてこの種の恐怖を抱く隙すら無くなるレベルにまで気を紛らわすこと、などが挙げられますが、現代社会は三つ目のやり方を特に重視しています。娯楽やエンターテインメントの世界がこれほど充実しているのはそのためなのです。

ただし、どれほど頑張って頭から追い出そうとしても、これらの恐怖心は今も将来も存在し続けます。なぜなら、隔世遺伝的な恐怖とは人間という種がいかに好奇心旺盛で有能か、しかしいかに脆くてやがて死すべき運命にある存在かを思い出させてくれるものだからです。これこそ、最も重要な人間のパラドックスの一つだと言えるでしょう。


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  • Padilla, I. (2013). El legado de los monstruos. Tratado sobre el miedo y lo terrible. Taurus.


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