記憶とトラウマ:その繋がりとは?

2020年1月13日
今回は、記憶とトラウマの関係、そしてあなたの心に影響を及ぼすような感情の崩壊の仕組みについて見ていきたいと思います。一般的な心的外傷後ストレス障害(PTSD)とトラウマとなる記憶の違いについても見ていきましょう。

トラウマや強い感情的な経験が記憶の分類や保存、そして回復の方法にどのような影響を持っているのか解明しようとした研究はたくさんあります。記憶とトラウマに繋がりはあるのでしょうか?トラウマとなった記憶は普通の記憶とどう違うのでしょう?

ある研究者は、トラウマになった経験は普通の記憶とは異なるプロセスで処理されると述べています。その違いは記憶が危険と認識され、補修されるのが困難になることが原因だと言われています。しかし、別の研究者によると、ストレスは記憶の質に危険を植え付けず、同じように処理しているというのです。

この2つの考えを基に研究が進められました。そして、自分の管理下にある安全な環境ではトラウマを再現するのは難しいということが分かったのです。また、これを研究するのに最も良い方法は、PTSDのある人達を分析することでした。彼らの経験が記憶とトラウマの関係を研究する基盤となったのです。

記憶 トラウマ

PTSDの統計:記憶とトラウマ

PTSDの定義は精神的外傷、破壊的、そして痛々しい経験に対する人々の不規則な反応で、ただ単に「正常ではない状態」というのは間違いです。このような反応は以前彼らに見られなかったものである必要もあります。

その記憶を克服できないことが、元々の出来事に関連した様々な症状を引き起こしてしまうのです。

一般的な症状としては、心配性や悪夢、瞬間的な意識の喪失、心理的な不快感、原因となる出来事に少しでも似た事柄への拒絶、体に対する強い反応などが挙げられます。

PTSDの最も一般的な原因は自然災害(洪水、地震、津波など)や事故、そして病気などがありますが、人間による残虐な行為は70~80%の確率でPTSDを引き起こしてしまうのです。残虐行動には、暴行やテロ、性的虐待、レイプ、強制収容所の経験など様々なものが含まれます。

PTSDの診断基準:記憶喪失

DSM-VにおけるPTSDの診断基準の一つにトラウマとなる出来事に関する記憶喪失がありますこれは解離性健忘という名前でも知られており、記憶がそのまま無くなったように見えますが、実際には記憶は失っておらず、その人の行動や態度を変えてしまうこともあるのです。

例えば、少女がトイレで性的虐待を受けたとします。そして、後日その記憶を忘れていても、公衆便所や家のトイレに行くことを無意識に拒否することがあったり、不快感を覚えることがあります。

PTSDの重要な症状:フラッシュバック

PTSDの最も大きな症状として拒絶や感情を閉ざすこと、過剰に活性すること、そして記憶の侵入などの症状が見られることがあります。

このような症状は全て実際に経験したトラウマに関連しており、悪夢やフラッシュバックとして現れることもあります。

このようなことが起こるのは、その人が記憶を失ったからではありません。ただ何が起こったのかを思いだすことができなのです。しかし、特定のシーンは明確にフラッシュバックすることがあり、これはコントロールすることができず、回避できません。

フラッシュバックは記憶ではない

重要なのは、フラッシュバックは記憶が形を変えたものではないということです。フラッシュバックが起こると、人は時間の感覚を失います。そして、本人からすれば同じ出来事を体験しているような感覚に襲われるのです。

例としては、誰かがテロの攻撃をなんとか生き抜いたとしましょう。その人はテロの現場の壁が青であった為に青いスカーフを見る度にフラッシュバックを起こしてしまうかもしれません。これはフラッシュバックが痛々しい記憶よりさらに激しいものだということが分かります。思い出すだけでなく、その時の感情も引き出し、同じような感覚を繰り返し体験してしまうのです。

健忘と記憶増進

このようにPTSDは非常に強い影響を記憶に与えることがあります。先ほど述べた記憶の混乱や記憶を部分的、全面的に忘れてしまう健忘もその一つです。

そして、PTSDは記憶増進(過剰記憶ともいう)と呼ばれる記憶の侵入やフラッシュバック、そして悪夢を引き起こすこともあります。また、健忘と記憶増進などの記憶の変化は同時に現れることもあるのです。これは、その人の経験によって変わることがあるということを覚えておきましょう。

トラウマによって変わる記憶とは?

トラウマは人々の記憶に関わりがあるように見えます。自叙伝的な記憶(自分が残した記憶)は私たちの持つ明白な記憶の一部であり、出来事を思い出すのを助けてくれます。このような記憶の形は論理的な理解の発展に繋がるのです。

しかし、トラウマは一般的な記憶のように一貫性を持っていません。そしてそれこそが問題だと研究者によって指摘されています。あなたのトラウマは壊れており、断片的です。それは自分の人生とは関係のないもののように感じることもあるでしょう。なぜなら、トラウマはあなたにとって外的なものであって、それがあなたに侵入することで経験してしまうものだからです。

記憶 トラウマ

トラウマ的な記憶と普通の記憶の違いはあるの?

答えはYESです。強いストレスを経験するときは、特別なメカニズムが記憶と関係するのです。

トラウマ的な記憶

では、トラウマ的な記憶の重要な点を見ていきましょう。

  • 複雑な回復:断片的な記憶はあなたの意識の端に保存され、感情的なフラッシュバックを引き起こすことがあります。
  • 時間の経過はその複雑な回復に良い影響を与えてくれます。時間経てば経つほどその記憶を回復させることができるのです。
  • トラウマ的な記憶は鮮明で長期的に存在します。一度持ってしまうとなかなか変えることはできません。
  • トラウマが長く続くと記憶を回復するのが難しくなります。例えば、何年にもわたって虐待されていたとすると、一回だけ虐待被害にあった人より記憶の回復が難しくなります。
  • トラウマ的な記憶は自動的に現れます。コントロールができないでしょう(条件反射的に現れることがあります)。

普通の記憶

比較をすると、ほとんど真逆のような性質が見られます。

  • 普通の記憶は簡単に思い出すことができ、人生の物語の一部となります。
  • 時間の経過は思い出すのに悪影響を及ぼします。時間が経てば思い出すのが難しくなるということです。
  • 一般的に、鮮明さは薄れ、長期的に覚えておくことができませんが、これはその記憶によって違います。
  • 何度も思い出すことで簡単に思い出すことができます。
  • 意識的、自発的に思い出すことができます。ですので、コントロールできる状態であると言えます。

強いストレスを持った感情的な経験は、記憶の分類、保存、回復にすぐに影響を与えるように見えます。

ピエール・ジャネ(1904年)の言葉に、「恐ろしい経験を通常の信念や仮定、そして意味というシステムに組み込むことは不可能だ」とあります。これは、トラウマは異なる方法で処理され、意識とは離れてコントロールできなくなるということを表しているのです。