虚偽性障害:患者を演じようとする人々

2020年6月1日
虚偽性障害を抱える人々には、患者の役割を演じることに対する精神的なニーズがあります。外部誘因の不在という点が明確に詐病と対照をなしているのです。

虚偽性障害の主な特徴は、精神的あるいは身体的な症状があることを装ったり、または故意に症状を起こしたりすることです。医師はこれを、シンプルに直接観察することで見抜いたり、消去法を繰り返していく過程で診断します。しかし、その症状が指し示す疾患を本当に患者が持っている可能性を完全に排除することが不可能なため、多くの症例でいまだに議論が巻き起こっています。

人々が症状があるフリを装うのは、患者という立場を自分のものにするためです。しかし、彼らはその病気から何か利益を得ようとしているわけではありません。これが、詐病との違いです。詐病も意図的に症状を引き起こす行為を指しますが、その目的は結果を見れば簡単に理解することができるでしょう。

例えば、詐病を使う人は裁判の開廷日を回避するために病気であると装うことがあります。また、徴兵を逃れるために体調に問題があるフリをする人もいます。さらに、精神病院に入院している患者が、あまり好ましくない施設に移動させられるのを避けようと健康状態の悪化を装う場合もあります。これもまた、詐病と見なされているものです。

一方で、虚偽性障害を抱える人々には、患者の役割を演じることに対する精神的なニーズがあります。外部誘因の不在という点が明確に詐病と対照をなしているのです。

定義上、虚偽性障害という診断がつくということは、ある程度の精神病理の存在が示唆されるということです。つまり、患者の精神に何らかの異常があるのです。ただ、たとえある人物が虚偽性障害を抱えているとしても、だからと言ってその他の身体的あるいは精神的病状が存在する可能性も否定できません。要するに、これは非常にややこしい問題なのです。

虚偽性障害 患者を演じようとする

虚偽性障害診断のための臨床基準

精神障害の診断と統計マニュアル(DSM-4)では、虚偽性障害診断における心理学者や精神科医向けの以下のような基準を設定しています。

A. 身体症状や精神症状を装ったり故意に症状を作り出す。

B. 患者の役割を演じたがる。

C. 行動の原因となる外在誘因の不在(例えば、経済的な利益を得るため、法的責任を回避するため、身体面の良好状態を改善するため、などといった、詐病の背後にあるような誘因)。

また、DSM-4は以下のような虚偽性障害の分類も設けています。

  • 心理的徴候と症状が優勢な虚偽性障害。臨床で認められる中で優位な徴候や症状が心理的なものであるタイプです。
  • 身体的徴候と症状が優勢な虚偽性障害。臨床で認められる中で優位な徴候や症状が身体的なものであるタイプです。
  • 心理的および身体的徴候と症状を併せ持つ虚偽性障害。どちらが優勢かを判断できないタイプです。

虚偽性障害

前述の通り、この疾患を定義づける特徴は、故意に身体的あるいは心理的徴候・症状を作り出すというものです。患者は症状があるフリをすることもあれば(例えば実際には痛みがないのに腹痛を訴えるなど)、症状を偽造する場合もあります。例えば、患者の中には自分の皮膚の下に唾液を注射して腫瘍のようなものを作る人さえいるのです。

また、患者が訴える症状が既存の身体疾患の誇張や悪化である場合もあります(例えば、精神疾患の病歴を持つ患者が妄想に苦しんでいるフリをするなど)。さらに、上記全てが組み合わされた症状や、変種的な症状も起こり得ます。

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虚偽性障害を抱える人々の特質とは?

大抵の場合、この障害を抱える人々は自らの話を芝居がかったような語り口で説明します。しかしその後で話の詳細について質問しても、彼らの返答は曖昧で一貫性がありません。すぐに手に負えない状態になってしまうようなの物語に夢中になってしまいがちです。その嘘は病的で、自分に質問してくれる相手の気を引く意図があり、自身の身の上話や症状に関するものです。

虚偽性障害のある人々は医療用語に詳しいことが多いものです。さらに、病院の働きや仕組みに関して幅広い知識を持っています。通常、彼らは痛みを訴え、鎮痛剤を要求します。そして医師が何の身体的異常も見つけられないと、今度は別の問題を訴え始め、新たな虚偽の症状を思いつくのです。

虚偽性障害を抱える人々は何度も検査や手術を受けます。また、入院している間にお見舞いに来てくれる人はあまり多くない傾向があります。

自分が症状を偽造していることが相手に知られている、と気づくと、彼らはそれを否定するか病院を立ち去ります。事実、彼らは医学的な助言に反対してまで立ち去ってしまう場合があるのです。そして全く同じ日のうちに別の病院に入院します。

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心理的徴候・症状が優勢な虚偽性障害

虚偽性障害の中でもこのタイプのものは、臨床において心理的な徴候や症状が優勢に認められます。主な症状は、心理的症状の意図的な偽造や見せかけです。

彼らの報告する症状から疑われるのは精神疾患です。こういった人々の明確な意図は患者という立場を手に入れることであり、「病気」を使って誰かを操ろうなどという下心は決してありません。

専門家は通常、典型的な症状パターンに合わないような症状を観察することでこの疾患を見分けます。その症状には異常な臨床経過・治療反応が伴います。

  • これらの症状は大抵の場合、自分が観察されていることにその人物が気づくと悪化します
  • また、患者は、愛する人と死別したせいで自殺願望があるのだ(患者の家族には証明できないような情報)などと言ってうつ症状を訴えます。
  • さらに、記憶喪失や幻想、せん妄、PTSDの症状、解離症状なども訴えます
  • 患者は多くの場合極端に消極的です。
  • 診察の間、あまり協力的な態度を見せません

身体的徴候・症状が優勢な虚偽性障害

このタイプでは、優位な徴候や症状が身体疾患のものとなります。この虚偽性障害を抱える人々は様々な健康問題を偽装したり自ら引き起こしたりします。以下がその例です。

  • 腫瘍
  • 回復が遅い怪我
  • 痛み
  • 低血糖症
  • 貧血
  • 出血
  • 発疹
  • 神経症状
  • 嘔吐
  • 下痢
  • 原因不明の発熱
  • 自己免疫疾患
  • 膠原病

このタイプの虚偽性障害の中でも最も深刻で慢性的なのが、ミュンヒハウゼン症候群と呼ばれるものです。ミュンヒハウゼン症候群の患者は、頻繁に入院を繰り返します。彼らは病的な虚言者で、身体の全ての部位が偽の症状のターゲットとなり得ます。そういった症状に制約を与えているのは自らの医学の知識と知的素養、そして想像力のみなのです。

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心理的および身体的徴候と症状を併せ持つタイプの虚偽性障害

最後に、こちらのタイプの人々は身体的および心理的な徴候と症状を併せ持っています。しかし、どちらか一方がもう一方より優勢ということはありません。このタイプに関しても、ミュンヒハウゼン症候群が最も深刻で慢性的なものになります。

虚偽性障害の進行過程とは?

虚偽性障害の臨床経過は、間欠的に症状が見られる、というものです。症状が一度のみ現れるというのは稀ですし、快方に向かうことのない慢性的な病気となることもあまりありません。この病気が始まるのは成人早期です。さらに、特定可能な身体疾患あるいは精神疾患のための入院と同時に始まる場合が多くあります。そして慢性的なバージョンの虚偽性障害を患っている人にとっては、連続的な入院生活がもはやライフスタイルのようになっていきます。

引用・参考文献:

American Psychiatry Association (2002). Manual diagnóstico y estadístico de los trastornos mentales (DSM-4), 4ª Ed. Madrid: Editorial Médica Panamericana.