脳は問題を増幅させる:その科学的な根拠とは?

11 8月, 2020
認知バイアスが起きた結果、脳は問題を増幅させてしまいます。この認知バイアスは、その後一般化されたり特に理由もなく過度に適用されてしまう思考パターンを作り上げ、発達させる類のものです。

困りごとや問題はいつも二つか三つまとめてやって来る、と嘆く人々がたくさんいます。一度そういった問題が起こり始めるとそれらが永遠に終わらないと思い込んでいるのです。あらゆる意味でその考えは正しいと言えます。しかし、これはただの運命の意地悪ないたずらではありません。むしろ、この原因は認知バイアスにあると言えます。なぜなら、頭脳が問題を増幅させてしまうことが科学者たちによって明らかになっているからです。

この結論は、複数の異なる実験が行われた結果として導かれました。では、なぜ脳は問題を増幅させるのでしょうか?実は、驚異的で非常に複雑な器官だとはいえ、脳にも制約があるからなのです。

このような制約が生まれるのには、エネルギー節約のために全てのことに対してパターンを作り出そうとする脳の傾向が関係しています。しかし、このような一般化されたパターンは誤った思い込みを生み出すのです。

脳が問題を増幅しているという事実に関して重要なのが、私たちは情報を入手することで批判的になり、思考の働き方に対して注意を払えるようになり、そして必要な時には制限を課せるようになるという点です。もしその制約がなければ、脳は困難や感情コストを作り出し、それが不要なストレスや問題の発生につながってしまいます

“問題を作った時に用いたのと同じ考え方では、その問題を解くことはできない”

-アルベルト・アインシュタイン –

脳は問題を増幅させる 科学的 根拠

脳は問題を増幅させる

脳が問題を増幅させるメカニズムを説明しようと、ハーバード大学の心理学者デイヴィッド・レヴァリはある実例比較を用いました。彼は、危険が目の前にある状況での脳の働き方はネイバーフッドウォッチシステム(犯罪を防ぐための近隣住民による監視システム)と似ている、と話しています。

このようなシステムが活発になるのは、近隣住民たちが様々な理由から自分たちの暮らすコミュニティの安全性に疑問を持ち始めた時です。住民たちは、怪しい人物の存在を周囲の人に警告したり、強盗やその他の犯罪に繋がりかねない疑わしい行動について注意を呼びかけます。そして何か不穏なことが起こると、行動を起こせるように直ちに彼らは警察を呼び出すのです。

このようなシステムは通常うまく機能し、近隣住民たちも自分は比較的安全である、と感じることができます。そうなると、セキュリティに関する警戒心も減退していきそうに思えますよね。しかし実際にはそうはなりません。ここで大抵の場合起こるのは、それまでは疑いを抱かなかったような状況や行動に対しても危険性を見出だし始めてしまう、という事態です。

それはまるで、一度セットされてしまうと二度と電源をオフにできないようなアラームのような具合です。何らかの問題(そして潜在的な危険を孕むような全ての問題)によってアラームが発動してしまうと、そのアラームの「電源」が自然に消えることはなくなり、フィードバック効果が生まれてさらに警戒状態が高まることになります。

認知バイアスを解き明かす実験

複数の実験が行われた後専門家たちは、脳には問題を増幅させる仕組みがある、と結論づけました。それらの実験の中でも有名なのが、のちにソーシャルネットワーク上でかなり話題になった、一流ジャーナル『Science』誌で発表されたものです。

この実験を行うにあたり、研究者たちは完全に正常な視力を持つ被験者を1,000名集めました。実験ではまず、被験者たちに濃い青から深い紫までの色相のいずれかの色をした1,000個の点が書かれた画像を見せます。画像には、異なる色の点がランダムに配置されています。

その後、研究者たちは被験者に、どの点が青でどれが紫だったかを尋ねます。1回目のセッションの間は、ほとんどの被験者が何の問題もなく青い点を特定することができました。

しかし、2回目のセッションでは、青という色の概念が1回目の時よりもずっと大きくなった(青系の色の点の割合を減らした画像が見せられた)ようで、最終的に被験者たちは、明らかに紫色をした点までをも青だ、と信じ込みました。この結果は何を意味するのでしょうか?

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脳のバイアス

この実験結果は、脳には実は驚くほど融通のきかないやり方で思考パターンを確立する傾向があることを示していますだからこそ、初めは青と紫をはっきりと区別できていた被験者たちが、次のテストでは全ての点を青だと信じてしまったのです。

しかし、なぜこれにより脳が問題を増幅させていると言えるのでしょうか?私たちが何か一つの問題に直面すると、脳内には主観的な警告信号が現れます。その後、私たちはその問題を解決しようとあれこれ努力します。しかし、問題を解決することができた後でも、脳は引き続き警戒状態にあり、本来なら脅威にはなり得ないような他の現象をも危険因子として認識してしまうのです。

ここで一つ日常的な例を挙げてみましょう。例えばある人が上司と口論になったとします。するとその口論が二人の脳に影響を与えます。二人はそれぞれのデスクに戻った後、ペンを見つけ出すことができません。それはペンがなくなったからではなく、二人がまだ直近の口論に影響され、そのせいで混乱状態にあるからなのです。そのため、実際にはそうでないにも関わらず、こういった人はよく「今日は何もかもうまくいかない」などと口にするのです。

同じことが、パンデミックの最中にも起こっています。これはシンプルに、問題の巨大さが原因です。強力なハリケーンや地震が、実際にはそうではないにも関わらず、世界終末のサインであるかのように解釈されてしまうことからもお分りいただけると思います。このような時、脳は警戒モードに入っているため、ネガティブな思考が前方へ押し寄せてしまうのです

まとめると、このバイアスに生活を乗っ取られてしまわないよう、気をつけながら暮らしていく必要があるということです。

Aguado, L. (2002). Procesos cognitivos y sistemas cerebrales de la emoción. Revista de neurología, 34(12), 1161-1170.