精神分析について理解するためにオススメな本8選

2019年7月9日
精神分析に関する本の中でも絶大な影響力を与えてきたものをご紹介していきます。

精神分析は魅力的な分野です。その理論や仮定はただただ魅惑的です。それは事実なのですが、精神分析に関する本、特に特定の著者による本の中には、この分野にあまり詳しくない人にとっては少し複雑すぎるかもしれません。

精神分析に関する重要な本のほとんどが、かなり注意深く読む必要があるものばかりです。その内容を消化するのにも時間がかかります。別の言い方をすると、眠い時に読んで眠気が覚めるようなタイプの本ではないということです。

とりわけ、おそらくその意味するところを理解するために同じ段落をなんども読み返さねばならないこともあるでしょう。もしくはその後の文章でその説明があることを期待して理解できないまま読み進めるということもあり得ます。しかしきっと突然ひらめきがきて理解できるでしょう。心理学ではそれを洞察と呼びます。

こういった努力をするに値する本が何冊か存在します。ネット上で特定の本の概要や要約をいくつ見つけることができても、オリジナルバージョンがいつでも特別だということを忘れないようにしてください。ですので今回は、精神分析に関する本の中でも絶大な影響力を与えてきたものをご紹介していきます。

精神分析に関する本:その始まり

『ヒステリー研究』(1895)

これはヨーゼフ・ブロイアージークムント・フロイトによって書かれた短い本です。この本の中では、5人のヒステリー持ちの女性を革新的な治療法で治療することについての話をしています。彼らが行ったのは、忘れられたトラウマあるいは抑圧されたトラウマの記憶を催眠術を使って浮かび上がらせるということです。

その中のひとつが、有名なアンナ・Oの症例です。彼女はブロイアーの患者の一人で、”カタルシスメソッド”によって治療された最初の患者でした。これは自由連想法(フロイトによって開発された)と呼ばれる精神分析の基本的な方法以前のはじめの一歩となりました。

この本では、ヒステリーを引き起こす原因に関して2つの異なる観点が示されています。一方はこれは神経生理学的問題である、そしてもう一方はこれは心理学的問題である、としています。最初の考えはブロイアーのもので、2つ目がフロイトのものです。しかしこの本はそれまでの慣習をぶち破るようなものだったため、ヨーロッパの医師たちからはあまりよく受け取られませんでした。

精神分析 オススメな本

『夢判断』(1900)

『夢判断』はジークムント・フロイトの最も有名な本のひとつです。ここで初めて彼は夢の分析に関する自らの理論について語りました。彼は夢を、願望を満たすための”幻覚”であると見なし、夢を解釈することは“脳の無意識な活動による知識へ繋がる厳かな道”であると説明したのです。

この本では、それぞれの夢に登場する最も重要なシンボルの間で自由連想法を用いて夢を分析するという方法が示されています。また、フロイトにとって主要なトピックとなった心理学的仕組みが段階を追って説明されています。

この本の変わったところは、本が出てから最初の数年間はあまり売れ行きが良くなかったという点です。人々が関心を寄せ始めたのは、共通するシンボルについての新しい拡大版が出版された後でした。

しかしこの拡大版もいくつかの議論を生み、他の精神分析家からは批判を浴びました。彼らは、夢は主観的すぎるので一般的な観点から分析するのは不可能であると考えたのです。

この本に含まれる資料のほとんどが、フロイト自身によって行われた夢分析から選び取られたものです。彼は自身の研究を持論の基礎として使いました。手助けとなるツールとして彼が思いついたのが、自由連想法でした。自由連想法とは、夢の中で最も重要なシンボルについて考えるというものです。

『性理論に関する3つのエッセイ』(1905)

この本は、先ほどのものと並んで、フロイトの最も重要な作品のひとつです。ここではフロイトは人間の性に関して話しており、特に少年期の性に焦点が当てられています。彼の有名な、賛否両論を産んだ発言が含まれているのがこの本です:

“子どもたちは多形倒錯になり得る”

この本の中でフロイトは、性的倒錯は健康な人々の中にも存在し得るという自身の考えを説明しようとしました。彼は成熟した、正常な性的志向への道は思春期ではなく少年期に始まる、と述べています。

彼はペニス羨望、去勢不安、エディプスコンプレックスといった事柄に触れ、人間の性心理的発達について掘り下げました。したがって、精神分析の発展について理解したいならばこの本は必読書であると言えるでしょう。

精神分析に関する人文主義の本

人文主義的精神分析の分野ではたくさんの著者が存在します。しかしこの概念を最初に考え出した人物はエーリヒ・フロムでした。これは彼がフロイト式精神分析学者としてのトレーニングをしている際に生まれたもので、仏教やマルクス主義からも考え方を取り入れました。では最も重要な彼の本を何冊かご紹介していきます。

『自由からの逃走』(1941)

この本は、特に西洋文明において大きかった現代危機のいくつかについて説明しようとしています。ここには自由というものが必須です。フロムは2つの現象について言及しています。

  • ひとつは政治的表現としてのファシズムです。
  • もうひとつは、先進社会における個人間の、社会文化的表現の一種としての増大する類似性でした。

彼はその危機がどのように現れるかを説明するためにこの2つの概念を使用しました。この2つの異なるやり方が、実は現実を避けるための共通の手段に過ぎないと彼は述べています。

しかしこれは現代の産業社会の人々にとって巨大な結果をもたらしました。つまり彼らは自らの無意味さに気づき、道徳的な虚無感を感じ、外的な見えない力のために自分たちの身体を犠牲にする以外に道はないかのように感じてしまったのです。

『愛するということ』(1957)

これはエーリヒ・フロムによる、絶対に見逃せないもうひとつの著書です。精神分析というカテゴリーに分類されてはいますが、実は読みやすい作品です。だからと言って彼が『自由からの逃走』で展開し始めた人間性や理論的考えについての深い考察が含まれないというわけではありません。

この本の中で、愛とは何か理論的な観点から生み出されるものだ、とフロムは述べています。なぜか?それは理論は愛をアートのレベルに押し上げることができるからです。そしてアートには、習得すべき理論と実践があるのです。

そしてこの本の考え方で最も重要なのが、愛とは人間の存在という問いに対する答えである、というものです。なぜなら愛が大きくなればなるほど二人の人間の隔たりは縮まりますが、どちらか一方が個性を失ってしまうということはないからです。

彼はまた、愛の様々な種類についての研究をまとめてもいます。愛には兄弟愛、母性愛、父性愛、自己愛、性愛、そして神への愛があるというのです。そして話題は成熟した愛においてどれほど思いやりや責任や尊敬、そして親密さが求められるかというものに移って行きます。

精神分析 オススメな本

精神分析に関するラカンの著書

ジャック・ラカンは、フランスのフロイト派精神分析家です。彼はフロイトに追随する理論で有名ですが、彼の著書は最初は理解するのがかなり困難でしょう。初めての挑戦には彼は難しすぎるかもしれません。不愉快、あるいは無意味にすら思えてしまう可能性もあります。

しかししばらく頭の中で彼の書いていることについて考えを巡らせていれば、彼のアイディアの背後にある論理がわかってくるでしょう。時間をおけば、より腑に落ちていくはずです。彼の本を注意深く読めば、絶対に何か驚くべき考えを発見することができますよ。

セミネール第3巻:『精神病』(1955~1956)

これは魅力的な本です。この本でラカンが行なっているのは、精神病に関する理論を発展させるということです。彼の考え方は革命的で革新的でした。要するに、彼は私たちの精神病に対する一般的な考え方とは全く異なる視点を与えてくれたのです。精神病が引き起こされる原因からその治療法までが網羅されています。

彼はまた、ダニエル・ポール・シュレーバーによる自伝『ある神経病者の回想録』という本に関する研究も行っています。シュレーバーはザクセン王国の控訴院の議長でしたが、のちにその統合失調症が悪化していきました。この本はフロイトが大いに関心を寄せた本でもあり、ラカンがその理論的な理解を発展させました。シュレーバーの症例についてのほんとうに見事な見解だと言えるでしょう。

『子どもの無意識』(1986)

この本はフランス人作家フランソワーズ・ドルトによるものです。精神分析に関する本のリストに入ってはいますが、かなり読みやすくて驚くほど現実的な本です。どちらも彼女の文才によるものです。また、この本は順序を反転させることによって従来の型を打ち破っています。つまり、彼女は世界を子どもたちの視点から見て、子どもたちが欲するものに焦点を当てたのです。

フランソワーズ・ドルトは単に子どもたちの話に耳を傾け、子どもたち自身の言葉を介して理解することについてだけ話しているわけではありません。それだけでなく、決して無理に押し付けることなく私たち自身の言葉によって彼らに語りかけることも大切であると述べています。とても有益で知的な本ですので、決して読者を失望させるようなことはありません。今彼女について知ったばかりの人なら絶対にこの本を読んで感動することになるでしょう。

精神分析 本 フランソワーズ・ドルト

『精神分析用語辞典』ラプランシュ、ポンタリス(1967)

精神分析に関する本のリストの最後のこちらは、この分野の専門用語を理解するのに役立ちます。精神分析に関する本を読み始めた人たち全員にとってかなり有益な本であると言えます。

著者間の違いを比較しながらかなりわかりやすく説明がなされていますので、いくつか基本的な事項を知りたいならば手元に置いておくと非常に便利です。それから先はもう本当に精神分析の世界に飛び込んでいくことができるでしょう。

この本の中で紹介されている全ての概念にその定義と関連するコメントが付いており、いつでもとてもわかりやすく書かれています。各記事の最初にはドイツ語、フランス語、英語、イタリア語、そしてポルトガル語の類義語が紹介されています。

まとめると、この本はとても便利なリサーチツールと言えるでしょう。精神分析の上級者には必要不可欠で、新たな読者たちに対してその最も重要な用語や概念を紹介するのにも欠かせないとさえ言ってしまいたいくらいです。

それでも、これは単なる五十音順に並んだ概念の辞書というわけではありません。記事と記事の間の言及の構造が素晴らしく、概念を関連づけるのに役立ちますし、精神分析用語という巨大なクモの巣のなかでどの方向を向いたらいいか示してもくれるでしょう。