心理士のための8つのセルフケア・ストラテジー

他人を助けたいと願うのであれば、まずは自分自身のケアをしなければなりません。今回は、心理士のためのセルフケアのコツをご紹介します。
心理士のための8つのセルフケア・ストラテジー

最後の更新: 27 11月, 2020

心理士もまた、人間です。幸か不幸か、この職業の場においても日々人間でいることをやめることはできません。その意味では、自分自身の健康状態を管理することも私たちの仕事の一部であると言えるでしょう。特に心身の疲弊状態が起こるリスクを理解していればなおさらです。

そうは言っても、どのように自身のことをケアすれば良いのでしょうか?あらゆるシチュエーションと対峙する中で、そのうちどれが一番私たちのウェルビーイングにとって危険なのでしょう?本日は心理士のためのセルフケア・ストラテジーをいくつかご紹介した上で、これらの疑問にもお答えしていきたいと思います。

心理士は多様な環境下で働いていますが、人間の相互交流は常に彼らの仕事の一部です。専門分野が何であれ、空っぽのカップからは何も注ぐことができないことを覚えておきましょう。つまり、他人の手助けがしたいのであれば、まずは必ず自分自身をケアするようにしなければならないのです。

“全ての理論を知り、あらゆる技術を習得せよ。ただし、人間の魂に触れるときにはただその人の魂に成り代わりなさい”

-カール・ユング-

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心理士のためのセルフケア・ストラテジー

オックスフォード辞典では、「ケア(care)」を「健康や幸福、生活の維持、そして誰かあるいは何かの保護のために必要なものを提供すること」と定義しています。したがって、セルフケアとは自分自身の健康と幸福のために必須となるものを自分に与えてやることを意味するのです。

心理士のためのセルフケアには、ウェルビーイングを確実に手に入れるために実践すべきことがいくつか含まれます。ここで重要なのは、自身の健康を全体的にケアすることです。以下に私たちがオススメするストラテジーをいくつかご紹介します。

1. 自己認識

自己認識は、私たち全員がある程度は実践しているものです。これはメタ経験から起こるのと同じくらい自身の経験からも起こります。心理士にとって、この実践は特に重要です。このような職業に就いている以上、私たちが集中力を失ったり、私たち自身の自己認識を患者に投影したいという誘惑に負けるようなことがあってはなりません。

専門的なレベルで言えば、自己認識によってどのクライアントなら助けることができ、どのクライアントは他の心理士に引き合わせるべきなのかを知ることもできます。このスキルは、特に臨床現場で有益です。

2. 自制

心理士のためのセルフケア・ストラテジーの二つ目は、自制です。ウェブスター辞典では、自制を「その人自身の衝動や感情、あるいは願望に対して行使される抑制」であるとしています。

自制が心理士のウェルビーイングのカギとなる理由は、これにより境界線を設け、それを尊重することができるからです。分析・解釈の過程でこれらの境界線を設置することで、湧き上がる衝動に影響されずに済みます。また、自制心を保ち、アサーティブでいることによって他人と個人的に関わることも容易になります。

3. レジリエンス

レジリエンスとは、問題を乗り越える能力のことです。なぜこれが他人に手を差し伸べる際に役立つのかというと、自分自身が困難に直面したときの経験や、どのように苦境を克服したかを相手に共有することができるからです。

また、レジリエンスを保てていると、自分自身が抱える問題を想起させるような他人の問題に対処するための強さも手に入れることができます。私たちが本来持っている防御メカニズムでは、そういった自身の傷をえぐりかねないシチュエーションは避けようとするのが普通です。しかしレジリエンスによってこれを乗り越えやすくなります。

臨床心理士たちは、患者の奮闘や問題に心を動かされてしまう場合が多いのですが、これは全く恥ずべきことではありません。自分自身が苦境を克服できているのであれば、ポジティブな形で心を動かされるはずです。また、変化につながることさえあります。

4. セラピーに通う

これは臨床心理士にとっても、その他の環境で働く心理士にとっても素晴らしい習慣です。セラピーによって自分自身をより深く理解できるようになること、抱えている問題に対処しやすくなること、そして自身の仕事の価値を高められることを覚えておいてください。大きな見返りが期待できる投資となるはずですよ。

また、セラピーによってレジリエンスや感情マネジメント力を育むこともできます。これらは心の健康、社会的健全さ、そして身体の健康のために欠かすことができません。

継続的に患者とやり取りをしているとすぐに疲労困憊になってしまう恐れがありますが、心理療法は心と頭脳の消耗を防ぐための優れた手段です。また、適切な心理療法の管理下にいることで、心理士の誰もが有する弱さや性格的な欠点を常に確認することもできます。仕事で苦労しているなら、躊躇せずに自分自身のために助けを求めましょう。これこそが、メンタルヘルスの専門家として働く上で特に大切なセルフケア・ストラテジーです。

5. ソーシャル・サポート・ネットワークの活用

充実したソーシャルライフは、ウェルビーイングに必要不可欠です。そのため、これが心理士のセルフケアの一形態としても重要であることを強調しておきたいと思います。仕事の一環として他人との絆を育んでいくことは、共感力の強化に繋がります。一方で個人的なレベルでの他者との繋がりによって、自分自身のサポートネットワークをより広く、より強固なものにすることができるのです。

社交の輪を最大限に活用するためには、自身の生活を豊かにしてくれるような相手との関係を育てていく必要があります。仕事上で関わる人と個人的に関わる人、どちらとの間にも境界線を引くことを忘れないでください。なぜなら、依存し合うような有毒な関係性がメンタルヘルスに有益な貢献をしてくれることはあり得ないからです。

個人的に親しい人から無償での専門的な助けを求められたら、それを断ることで境界線を引く練習をすることができるでしょう。心理学的な相互作用を生み出すのは自分の仕事の一部であり、臨床の現場で機能するものだということを説明してあげてください。

6. 患者のことをケアし、自分のこともケアする

心理士として働くということは、他人のウェルビーイングのケアに真剣に取り組まねばならないことを意味します。この取り組みによって、こちらに責任がある範囲を超えた行動に巻き込まれてしまう場合が時折あると考えられます。

さらに、他人を助けたいという願いを持つ心理士たちは自分自身のメンタルヘルスを気にかけないことがあるかもしれません。このような態度でいると、最終的に患者に提供するケアに支障が出てしまうのです。

7. マインドフルネスの実践

ウメオ大学(スウェーデン)の研究者Therese Erikssonは、心理士を職業とする人々の疲労を和らげるのにマインドフルネスが有効であることを発見しました。彼の研究は、セルフケアの実践が心理士の健康を保つのにも欠かせないものであるという考えを支持するものとなっています。

自らのニーズに気づけていれば、限界点まで達してしまうのを避けることができるでしょう。この気づきは、瞑想や判断を加えない観察を行うこと、結果からは距離を置くこと、受け入れて固執しないこと、自分自身の心の声に耳を傾けること、そして今この瞬間と繋がり合うことで深めていくことが可能です。

心理士のための8つのセルフケア・ストラテジー

8. 仕事から離れる

離れるというのは、何をするにも適した時間と場所があるのを理解するということです。つまり、いつ自らの意識的な意志から自由になるべき(休みたいとき)で、いつそうすべきでない(例えば患者と一緒にいるとき)なのかをわかっておくべきだということを意味します。

また、自身のウェルビーイングに直接影響するようなものを守るための優先事項を考えておくと良いでしょう。言い換えると、身体的、感情的、社会的、そして精神的な自己を守らねばならないということです。以下のようなアクティビティが有効でしょう。

  • 身体を動かすエクササイズ。
  • 愛する人々と過ごすこと。
  • 恋人と食事を共にすること。
  • 食事に気を使うこと。
  • 一人きりになれる余地を自身に与えてあげること。
  • 遊び。
  • 芸術作品を創ること。
  • 音楽鑑賞。
  • 瞑想。

最後に、心理士のためのセルフケア・ストラテジーは種類が多様です。セルフケアの重要性を意識し、こういったストラテジーを頻繁に実践することが何よりも大切だと言えます。これらが、心身の消耗を防ぎ、患者に対してできる限り最善のケアを提供するためのカギなのです。

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マーシャ・リネハンは、心理士、教授、アメリカ人作家、弁証法的行動療法の発案者です。弁証法的行動療法とは、境界性パーソナリティ障害(BPD)の患者のために考えられた治療モデルです。リネハン氏のセラピーは、ことな行動セラピーテクニックと、現実の受容など禅や哲学の考えから得た原理を組み合わせています。