トーマス・サーズ:最も革命的な精神科医

2019年8月20日
行動科学の国際的な名声に拍車をかけることとなったのは、彼の著書 The Myth of Mental Illness(精神病という神話)の出版でした。この本は出版されてからというもの、多くの論争を引き起こしてきました。

トーマス・サーズという名前は、精神医学の世界ではあらゆる感情を呼び起こします。彼は愛されていると同時に憎まれてもいるからです。人々は彼を尊敬する一方で疑っているのです。しかしながら、彼の理論は1960年代に実際の革命に変わりました。

トーマス・サーズは1920年、ブダペスト(ハンガリー)出身です。18歳のとき、家族でニューヨークに渡米しました。サーズの家族はユダヤ教であったため、ナチスの迫害から逃れる必要があったのです。その優れた才能から一目置かれる学生でした。最初に物理学の学位を取得すると、シンシナティ大学では医師として学位を取得しました。

“人類の疫病とは、多様性に対する恐怖と拒絶です。その結果が一神教、君主制、一夫一妻制、そしてこの時代では、単剤です。正しい生き方はただ一つ、宗教的・政治的・性的・医学的事柄を規制する正しい方法は一つしかないという信念は、人間にとって最大の脅威の根源的原因です。それは、自分が救われ、守られ、正気を保てるかばかりを気にする同じ人間のことです。

―トーマス・サーズ

30歳のとき、トーマス・サーズはシカゴ精神分析研究所で精神分析しとしての学位を取得しました。後に、ニューヨークのシラキュース大学の精神医学名誉教授になりました。そして、アメリカ精神医学会の永久会員に指名されました。

トーマス・サーズと精神病という神話

行動科学の国際的な名声に拍車をかけることとなったのは、彼の著書 The Myth of Mental Illness(精神病という神話)の出版でした。この本は出版されてからというもの、多くの論争を引き起こしてきました。

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トーマス・サーズ 革命的 精神科医

まず、トーマス・サーズは精神医学の聖書であるDSM(精神疾患の診断・統計マニュアル)を批判しました。アメリカ精神医学会によると、このマニュアルには精神疾患のすべての種類が説明されています。また、障害を分類・定義し、推奨される治療法も書かれているのです。

DSMには、同性愛、離婚、犯罪などの“障害”も含まれていました。このマニュアルは世界中の何百万人もの人々を治療するために使用されているため、ばかばかしいことです。トーマス・サーズはこのマニュアルを強く批判し、科学的根拠がまったくないと考えたのでした。

社会統制としての精神医学

最も物議を醸すトーマス・サーズの見解は、精神医学は化学ではなく、社会的コントロールだというものです。サーズはこの見解を自身の研究で障害に渡り繰り返し、精神疾患は実際には存在しないと主張したのです。

心は肉体ではないため病気にならないと断言までしました。簡単に言えば、社会ではいくつかの行動が受け入れられないのです。そして、この拒否された行動は”障害”というレッテルを貼られるのです。つまり、各個人を大多数の人が振る舞うようにしようとしていて、それを“正常”と呼んでいるのです。

また、トーマス・サーズは精神医学は診断をするのではなく、烙印を押すだけだと明確に主張しました。有名な注意欠陥多動性障害(ADHD)などの小児疾患の“発明”に対する痛烈な批評家でした。

精神医学と政治の革命

トーマス・サーズが問題にしたもう1つのことは医薬品政策でした。国家は社会に対してどの精神活用薬を服用すべきか、そしてどの薬を服用すべきでないかを決めていると指摘したのです。確かに特定の精神医学の薬は合法ですが、大麻のような物質は違法とされています。精神薬の使用と乱用がより悪い結果をもたらすことが科学的に証明されていても、これは事実です。

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トーマス・サーズ 革命的 精神科医

そこで、トーマス・サーズは、1950年代後半にデビッド・クーパーとロナルド・レインが作成した”反精神医学”と知られる運動に参加しました。彼の支持者の中には、ミシェル・フーコー、フランコ・バサグリア、ラモン・ガルシアなどの偉大な知識人がいました。もちろん、トーマス・サーズがいることでこの運動は注目されました。

結局のところ、トーマス・サーズは精神障害者の個人の自由と公民権の究極な擁護者でした。歴史を通して、社会は障害者をあらゆる形で排除しようとしてきました。医学会は、彼らがより”正常な”生活を送れるように治療したということになっています。

誰もが今はDSMを受け入れてはいますが、トーマス・サーズの信念は今なお健在です。しかし、生物学的精神医学の世界的な実施は、定義されている障害を治療するにはまだあまりにも制限されています。サーズが正しかった否かには関係なく、彼の主張に耳を傾けることは大切なのではないでしょうか。