島皮質:感情と共感の源

· 2019年4月7日

島皮質とは、人の行動を理解するうえで重要であると同時に、とても不思議な脳の部分です。これは私たちの「意識」のある場所だと言う人もいます。現在、この構造は感情の源として機能していると神経学者は見ています。これこそ、共感と勘のおわすところです。

神経科学は、人を驚かし続ける興味深い分野です。数年前、離脱症状なくすっぱり喫煙をやめることができる人もいる、ということが明らかになりました。なぜでしょうか?MRIを確認したところ、研究者は島皮質に小さな障害を発見しました。

アレキシサイミアもこの全く同じエリアの問題に関係していることがわかっています。アレキシサイミアとは、他人の感情に共感することが非常に難しい状態です。本質的に言えば、こういった人たちは他人の感情を認識したり、それを言葉にして表したりすることができません。そして、この症状はこの小さな部分と関連していることがわかりました。

島皮質は、感覚と感情を脳のいたるところに注ぎ込む魔法の噴水のようです。これらによって、ポジティブあるいはネガティブに反応することができます。島皮質は、嫌悪、自尊心、欲望などの感情を人間に抱かせます。他人を理解するのに役立ち、音楽に感情的に反応することさえ可能にする構造です。

脳の横

島皮質:多機能の構造

島皮質は、側溝の中の大脳皮質の小さなエリアです。これにたどり着くには、側頭葉から前頭葉や頭頂葉の間を深く入り込んでいかなくてはいけません。

面白いことに、これが80年代だったら、これは脳の知られざるエリアであるとしか言えませんでした。未知の機能を持った脳、何年にもわたって何百もの仮説が立てられてきたエリアです。

しかし、90年代に少しの光がさしてきました。分析・診断法の進歩のお陰で、この場所はもう未知の分野ではなくなりました。素晴らしい発見がなされ、たくさんの研究が、島皮質に損傷を受けた人たちに試されてきました。島皮質は、日々の活動の多くで重要な役割を担っているということが分かったのです。

このエリアがどんなことを処理するのかと今科学者に尋ねたら、長くて面白い答えが返ってくるはずです。痛み、愛、感情、渇望、中毒、音楽の楽しみ、決断、味、意識など、様々なことに関わっています。驚きですよね?

ハート

島皮質は意識の礎石

神経心理学者は、意識ほど重要で大きな機能を脳の特定の部分に関連付ける際は、かなり慎重になるべきだとしています。しかし、島皮質が社会的・感情的ふるまいにかなり影響していることを考えると、この仮説にたどり着くのは難しくはありません。

しかし、この部分が担う課題、機能、処理を正確に定義するのは簡単なことではありません。

深刻な島皮質の損傷を持つ人は、完全に環境や自分自身からも疎外されてしまっている、ということが証明されています。深い無関心と共感の欠落に特徴づけられています。人生のどんな部分も楽しむことができません。不快感を感じることすらできません。新鮮な食べ物と腐った食べ物の違いすら分からないようになります。

島皮質は自己像に影響する

島皮質は自分という存在が一つになる場所だと考えられています。別の言葉で言えば、自分の体と精神を意識する場所です。しかしこれをより良く理解するために、ひとつはっきりさせておきましょう。単独で機能する脳構造は存在しないということです。

クリエイティブでいるときは右脳を使うと言う間違った考えは、脳が全体で一つであるという事実を忘れてしまっています。脳のすべての部分はつながっています。すべてが調和して機能しているのです。

島皮質にも同じことが言えます。生理学的にも体とつながっており、匂いの感覚に重要な役割を果たし、主観的な感覚を生み出します。島皮質は、空腹の感覚に関わっており、皮膚受容体や他の臓器からの情報も受け取ります。寒い時や暑い時、何かが痛い時やかゆい時にもここが反応します。「ここから出なくちゃ、頭を真っ白にするために空気が必要だ…。」といったようなメッセージを送ってくれます。

浮かぶ脳

動物も脳の中にこの素晴らしい構造を持っています。だから、動物も肉体的・感情的意識を持っています。ネコ、イヌ、タスマニアデビル、キツネザルが暑いと感じる時、日陰を探します。食べ物を見つけたとき、腐ったものより新鮮なものを選びます。

動物が別の動物に出会ったとき、相手の動物が良い意図を持っているのか悪い意図を持っているのか、カンが教えてくれます。本能的に自分が獲物になるかどうかが分かるのです。あるいは、相手が自分と社交的に交流できるかどうかということです。神経生理学者は、人間やクジラやゾウなどの大きな哺乳類は、より複雑で洗練された島皮質があると言います。

島皮質と中毒

島皮質は、いくつかのエリアに分かれます。例えば、前島皮質は感情に関連しています。愛や憎悪、感謝や怒り、羞恥と不信感、共感と侮辱などです。 前島皮質と前帯状皮質の間には、ある部分があります。これは、中毒と関連付けられている処理がなされる場所です。

人が喫煙をやめようとするとき、刺激が欲望を増幅させ、離脱症状を引き起こします。特定の匂い、社交的状況、シナリオによって、島皮質を密かに支配する不安が増幅します。これはすべて、島皮質が大脳辺縁系と密接につながっているため起こります。

この小さな構造がどれだけ中毒に影響しているかということを示す研究はたくさん存在します。この反応は「渇望」現象として知られています。

光る脳

島皮質は、人間が最も良い姿でいることを助けてくれる構造です。つまり、人に共感とポジティブな感情を可能にします。しかし、ネガティブで中毒的な部分を引き出すこともあります。人を人たらしめてくれるこの複雑で小さな脳のエリアに関しては、また新しい発見がすぐなされるでしょう。

最後に、音楽やワイン1杯を楽しむとき、なぜこのような喜びを味わえるか思い出してみましょう。そうです、島皮質に感謝してください。

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