トラウマ:開かれずにいるパンドラの箱

21 8月, 2020
通常、トラウマを抱えている人の苦痛は、実際のトラウマにつながった事象自体よりも、それに対する後悔や罪悪感が元で悪化します。トラウマを日々追体験している人は多くおり、彼らは恐怖や怒り、混乱、手に負えない感覚などを毎日のように味わっています。

人生は物語のように進んでいきますが、そのうちの多くのプロットが何らかの事象によって中断され、結局それが一つの(あるいは複数の)トラウマになってしまいます。そういった出来事はただ当たり前のように発生し、それでも人生は続いて行くのです。しかし、皆さんはトラウマができてしまった際にどうすればいいのかを教えてもらったことなどないと思います。いかがでしょうか?

通常、トラウマを抱えている人の苦痛は、実際のトラウマにつながった事象自体よりも、それに対する後悔や罪悪感が元で悪化します。トラウマを日々追体験している人は多くおり、彼らは恐怖や怒り、混乱、手に負えない感覚などを毎日のように味わっています。こういった人々はその出来事が起こった時のことを思い返し、自分にはもっとうまくやれたはずだ、もっと注意を払えたはずだ、別の道を選ぶことができたはずだ、と悩み込んでしまうのです。つまり、その当時未来を見越す力がなかった自分に罪悪感を抱いているということです。また、彼らの自分自身に対する評価はとても厳しく、現実とは異なることが起こっていたらどうなっていただろう、という仮説についていつも考えています。しかし、誰もが結局同じ考え、つまり実際に起こった事についての考えに囚われてしまうようです。

“無意識を意識することができないとその無意識はあなたの人生を左右し続け、あなたはそれを運命と呼ぶのだ”

-カール・ユング-

トラウマに関する真実

トラウマは過去に属するものですが、残された傷はとても深く、時には永遠に修復されない場合もあり、その人物の思考や行動を条件づけます。例えば、ロールシャッハテストを通じて発見された事実として、トラウマを抱える人々は周囲の人や物に対してそのトラウマを重ねてしまう、というものがあります。

つまり、先ほど触れた内容を補足すると、トラウマはその人の想像力にも影響を与えるということです。この想像力とは、別の可能性を考慮する際に必要な力を指します。戦争を経験した兵士たちの多くが、トラウマを生じさせた過去を思い出している瞬間しか生きている感覚を得られないのもその一例です。

トラウマ パンドラの箱

心、頭脳、そして身体

トラウマの被害者たちが自身の過去を話せるよう手助けすることは重要です。ただ、語ってもらえるよう彼らに促すだけではその痛ましい記憶が消し去ってくれるわけではありません。変化を生むためには、過去を恐れることなく現在の現実世界を生きる方法を身体に覚えこませる必要があるのです。

幼少期にネグレクトを受けた人々が身体的原因を伴わない衝撃を頻繁に経験していることは、多くの研究で示されてきました。例えば恐ろしい声を聞いたり、自己破壊的あるいは暴力的な行動を見せる場合があります。トラウマの中でまだ処理されていない断片が、人生の本筋とは外れたところに保管されているのです。

トラウマを抱える人々が自身のトラウマ的経験に関連する刺激に晒されると、扁桃体(恐怖センサー)が反応し、ある種のアラーム信号がオンになります。この活性化により神経インパルスの連鎖反応が引き起こされ、身体を逃走か闘争に備えさせるのです。

トラウマを否定する

中には、自身のトラウマ的経験を否定する人々もいます。しかし、身体はまだその脅威を含めて経験全体を記憶したままです。つまり、心から発せられたメッセージを無視することは可能かもしれませんが、身体の警告システムが止まることはないということです。

トラウマを否定すると、その身体効果が線維筋痛症や慢性疲労といった重い病気として出現します。薬物治療や処方薬の服用により、堪え難い感覚や不快な思考を和らげられる可能性がありますが、精神的なレベルと生理学的レベルの両面でトラウマを治療していくことの重要性を指摘しておくべきでしょう。

“表現されることのない感情がそのまま消失することは決してありません。それらは生きたまま埋まっており、のちにさらに醜悪な形で現れるのです”

-ジークムント・フロイト-

トラウマ:開かれずにいるパンドラの箱

悲しい適応

「トラウマから生還した人々の脳内では何が起こっているのか?」という共通の疑問の答えを見つけようと、複数の研究が行われてきました。Lanius博士が着目したのは、「特定の物事について考えていない時、私たちの脳は何をしているのか?」という点です。結果的に、その時の脳は自分自身に注意を向けていて、自己認識のピークに達していることがわかっています。

研究者たちによれば、幼少期のトラウマがあるPTSD患者の脳の自己認知に関わる領域には活性化が見られないそうです。しかし、代わりに基本的な空間定位を司る領域には若干の活性が見られました。

FrewenとRuth Laniusは、人が自らの感情から離れれば離れるほど、自己認知の活性が低くなることを発見しました。言い換えれば、トラウマへの反応として、脳内の恐怖に関連する感情や情動を伝える領域を切り離す方法を学習してしまったということを、この発見は示しているということです。

“一番恐ろしいのは、自分自身を丸ごと完全に受け入れることである”

-カール・ユング-

「エゴ」の脅威

「エゴ」の基本システムは、脳幹と大脳辺縁系との間に分けられます。これらは人々が脅威を感じた時に活性化する領域です。強い生理的活性化には、怯えや恐怖といった感情が伴います。トラウマを追体験する時、その人物は当時と同じ身動きが取れない感覚と不穏な感覚を経験します。トラウマ的経験が終わった後でも、まるで切迫した危険性に再度直面しているかのようにその人物の頭脳や身体は継続的に活性状態となってしまうのです。

トラウマを抱える人々は、まるで過去がいまだに自分の中に住み着いているような感覚を覚えます。これは、内臓アラームが頻繁にオンになり続けるからです。多くが慢性的な不安感を感じており、感覚の変化に対応する最も簡単な方法として自らの心とのつながりを断つ方法を採用しています。こういった人々はよくパニック発作に悩まされるため、薬物や医薬品、あるいは強迫観念などを用いて外部世界を制御する必要があるのです。自らの身体と持続的に調和を保つことができないという事情が、喜びを感じにくいこと、目的を見つけられないこと、そして再度トラウマの被害者になる確率が高いことの説明になっています。