絶望は歳を重ねるにつれて消えていく

07 1月, 2020
エリク・エリクソンの唱えたパーソナリティ特質のうちの4つが年齢とともにどう進化していくのかが、最近の研究で分析されました。その結果、多くの人が信じ込んでいるのとは裏腹に、中年期というのは実は人生のとても魅力的な段階だったことが明らかになったのです。
 

時間は、私たち皆の心に大きな影響を残しながら過ぎ去って行きます。毎年歳を取らなければいけないことは悲しいことのようにも思えます。しかし最近行われた研究で、パーソナリティの4つの次元が時間とともにどのように発達していくのか、そして多くの人にとってどのように改善されていくのかについての分析が行われました。すると驚くことに、大半の場合、絶望が加齢とともに消えていくことが明らかになったのです。

研究者たちが焦点を当てた4つのパーソナリティ次元とは、次世代育成能力、停滞、自我統一性そして絶望です。これらは、エリク・エリクソンのパーソナリティ理論から来ており、彼の唱えた心理的発達の八段階の最後の二段階を参照したものです。当該の二種類の社会心理的状態が、人生の最後の段階と呼応しています。

個人として心理的に発達するために向き合わねばならない一連の対立が、それぞれの人生段階を特徴づけています。40歳から60歳の間、その対立は停滞と次世代育成能力との間に起こるのです。一方で、自我同一性と絶望との対立は、60歳以上の老年期に対応しています。

今回の記事では、当該のそれぞれのパーソナリティ次元が持つ特性について詳しく見てきます。また、『Journal of Research in Personality』のなかで発表された、心理学者ニッキー・J・ニュートンとエリザベス・A・ヴァンダーウォーターら研究者グループによって行われた魅惑的な調査の結果についてもレビューしていきます。

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次世代育成能力と停滞

次世代育成能力とは、健康的な未来の構築にどのくらい積極的に関わるかに関連するパーソナリティ次元です。この次元は、他者への理解や思いやりを育みます。これにより、問題の表面だけでなく核心を見通すことができるようになり、長年の間に培った知恵をアドバイスとして誰かに与えられるようになるのです。

一方で停滞とは、個人的な成長あるいはこういった次世代育成に繋がる能力の発達がない状態を指します。その特徴は欲求不満や不確実性への耐久性の低さで、もし誰かが停滞状態に陥ると、その人物は複雑な分析を必要とするような問題への対処が不得意になってしまいます。

自我同一性と絶望

自我同一性とは、困難な状況から立ち直る能力です。つまり、活力を回復させる力を指します。自我同一性は、自らの人生への満足感によって特徴付けられ、これが適切なセルフコントロールを行うための基盤となります。

他方、絶望は自我同一性が欠如した状態を言います。自分の人生には意味がないのだ、という自暴自棄的な感覚と関連しており、これにより、他者や理解できない状況に対して敵対的な態度を取るようになります。

 

調査結果

この研究に参加したのは43歳から72歳までの女性166人です。研究は、28年間にわたって(1986年〜2014年)4つのフェーズごとに行われました。この間、研究者たちは前述の4つのパーソナリティ次元に関する記録を撮り続けました。

データが示していたのは、43歳〜70歳での次世代育成能力および自我同一性の一貫した向上です。一方、停滞は60歳前後で最高レベルに達し、その後減少し始めました。

そして、最初に頂点に達した次元は絶望でした。50歳前後で最高レベルとなり、その後60歳〜70歳の間に驚くほど減少していました。

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絶望という感情

この研究結果は、ポジティブな感情が年齢とともに強さを増していく一方で、絶望は消えていくことを示しています。参加者たちの人生が最後の段階に差し掛かると、自我同一性向上の結果として絶望という感情が失われていったのです。

また、次世代育成能力と自我同一性が一定であり続けるか時間を経て向上したのに対し、停滞は顕著な減少を見せました。研究者たちは、この停滞の減少もまた、自我同一性によって生まれた新たな個人的発達に関連している、と考えています。

まとめると、これらの研究結果は非常に有意義なものであるということになります。人生後半の対立の結果が良いと、絶望が如実に減り、ポジティブなパーソナリティ次元を増大させることができるように思えます。だからこそ、熱心に、そしてオープンな心で中年期と向き合うのが賢い手であると言えるでしょう。この研究結果が正しければ、人生の終盤には今より積極的で回復力のある人物になることができるはずです。

 

Newton, Nicky & J. Stewart, Abigail & Vandewater, Elizabeth. (2019). “Age is opportunity”: Women’s personality trajectories from mid- to later-life. Journal of Research in Personality. 80. 10.1016/j.jrp.2019.04.005.

Malone, J. C., Liu, S. R., Vaillant, G. E., Rentz, D. M., & Waldinger, R. J. (2016). Midlife Eriksonian psychosocial development: Setting the stage for late-life cognitive and emotional health. Developmental psychology, 52(3), 496–508. doi:10.1037/a0039875

Travers, Mark (2019) Feelings of Despair May Fade With Age. New research examines women’s personality trajectories from mid- to later-life. Psychology Today