仲裁に必要な力:話す力ではなく聞く力

2020年5月29日
マドリード仲裁人協会の理事であるアナ・クリアド・インチャウスペは、仲裁という仕事のカギとなるのは話す力ではなく聞く力である、と述べています。

仲裁人とは、人々の間の相互理解を深めさせるために尽力する人々です。争いが生じるのは、遺産相続を巡って対立する兄弟姉妹かもしれませんし、子どもの親権を争う配偶者たちや、あるいは互いに憎み合う隣人同士の場合もあります。仲裁人は同じ部屋の中にいることさえできない人同士を和解させる役目を担っています。マドリード仲裁人協会の理事であるアナ・クリアド・インチャウスペは、仲裁という仕事のカギとなるのは話す力ではなく聞く力である、と述べています。

仲裁業の専門家によると、両者ともが「相手が降参してくれた」と思えるような合意の形が最善だそうです。理想的な合意に達するためのカギとなるもう一つの要因が、その合意に持続性があることです。仲裁人とは、言わば映画の中の脇役のような存在であり、利害関係者たちは主人公と言えるでしょう。そのため、仲裁人の仕事は適切な質問をすることとなります。優れた質問がなされれば、両者が互いの意見を聞くことができ、彼らの本来のニーズを表出させることにつながるのです。

また、政治的なレベルにおいても仲裁がカギとなります。政治的仲裁では、仲裁の本質的な特質を用います。したがって、仲裁人の役割は交渉を円滑に進めることとなります。彼らはただ和解を容易にするためだけに存在しているため、担当している対立に関する提案や個人的な意見を持って介入しようとするのは避けなければなりません。

全てのことをこなせる人など誰もいないが、誰もがそのうちの何らかのことを行う能力を持っている。

仲裁 話す力 聞く力

仲裁 − ニーズを把握することによる理解

仲裁には、対立の全体像は交渉が始まった当初に両者が考えていたよりも大きいものであることを明らかにしていく作業が含まれます。各当事者は通常、完璧に構成された主張を交渉の場に持ち込みます。これは、彼らが持つそれぞれの人脈のなかで検討されたものであり、彼らにとっては完璧に明白なので両者ともその主張に何の疑いも持っていません。それにもかかわらず、こういった主張は実際に起こったことではなく感情に基づいている場合がほとんどです。

両当事者の最終目標が合意を尊重するものであるならば、両者はこれを受け入れなければなりません。そして仲裁人は、彼らがこの合意に達することができるまでそこに同席することになるのです。交渉の場にはいくつか特に効果的な質問があります。例えば将来のことについての質問です。「あなたは、5年後自分たちの関係がどんなものになっていて欲しいですか?それを実現させるためには何が必要ですか?」などというものです。

両者が互いのニーズを把握した途端、魔法のように理解し合うことができます。突然態度が変わり、オープンになり、謝り始めるのです。この魔法は非常に困難なシチュエーションであっても起こすことが可能ですし、暴力の絡むケースでもこの戦略が有効に働く場合があります。仲裁とは、話をすることではないのです。相手の人物のニーズに耳を傾けることが全てです。

仲裁の指針となる主要な原則は、守秘義務、自主的な参加、両当事者間の開かれたコミュニケーション、そして間に入る仲裁人の公平さである。

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対立の原因は感情と大いに関係している

約90%の対立が、感情が原因で引き起こされています。例えば、一度でもこちらが屈服すれば永遠にそれが続くのではないかという恐怖や、自らの本当のニーズを発表することで自分が傷ついてしまうのでは、という恐怖などです。残りの10%の対立の原因はコミュニケーション不足です。これは、夫婦の別離やビジネス上の対立など、どんな種類の衝突や交渉にも当てはまります。そして、最も深刻な衝突は、家族や友人、パートナー、信頼している相手など、愛する誰かとのものである場合が多いのです。なぜなら、こういったケースの方が絡んでくる感情が大きい傾向があり、対立が長い間続いてきたものである場合が多いためです。

対立は人間にとって自然な現象です。私たちは常に様々な対立に巻き込まれています。これには他人との対立だけでなく、自分自身の中で起こる葛藤も含まれるでしょう。私たちは社会的な生き物であり、常に他者と関わり合って生きているため、この継続的な交流の結果として私たちは利害が相反する状況や衝突が発生する状況を経験することになるのです。しかし実は対立の本質が利害関係にあるというよりは、むしろ関わっている当事者の捉え方に良くない点があることが対立を深める要因となっています。事実、仲裁によって至った合意は両者の協力を伴うものであることが多くなっています。

前述の通り、対立の原因として多いものの一つに、コミュニケーションの不良があります。意思を伝え合うことは、二人の、あるいはそれ以上の人間間では必要不可欠なことです。しかし当事者たちが用いる戦略によっては、コミュニケーションが対立のきっかけになってしまうことも、解決に役立つこともあります。この意味では、仲裁人の役割には意思伝達がどう進んでいるのかをチェックすることも含まれます。当事者たちが開かれた態度を取り続け、明確な目的を持って取り組めるように努めなければなりません。最終的な目標は、両者がある程度納得できるような合意に達することです。

実際に起こっていることではなく自分たちの感情に任せて全てを捉えていると対立が生じてしまう。