永遠の失業状態がもたらす心理的影響とは?
ちょっと想像してみてください。私たちは、学業を終えてから隠居するまでの間何をして過ごしていますか?皆さんの頭には「仕事」という答えが浮かんだのではないでしょうか。そうです、それが人間の現実なのです。働かなければ、人は本当の意味で適切に生きるということができません。ただ、ほとんどの企業にとって50歳以上の(ひいては45歳以上の)人員は若者ほどの価値はないのです。
あらゆる求人サイトに記載されている様々な求人広告を見てみましょう。そのどれもが若い人々を求めていることがお分かりいただけるはずです。その結果、悲しいことに私たちの「先輩たち」(ここではこのカギカッコで特別強調したいと思います)は多くの場合、永遠の失業状態に陥ってしまいます。
今回の記事では、年配者たちの履歴書が拒絶されてしまうすべての理由をお話ししていきます。企業の方針が間違っている、あるいは正しい、などと批評するつもりはありません。ただ、深く掘り下げて分析していきたいのです。企業は果たして、この永遠の失業状態がもたらす心理的な影響を考慮しているのでしょうか?おそらく意図的にそれを避けているように思えます。これが本日のトピックです。
永遠の失業状態が生まれる理由:なぜ企業は「年齢層が高め」な人々を欲しがらないのか
ここではまず、いくつか質問を提示してみたいと思います。40〜50歳以上の人々の良い仕事をする能力は若い世代より劣るのでしょうか?歳をとっているということはつまり、働いたり学んだりする能力やそれを改善していく力がすでに失われていることを意味するのでしょうか?それまでずっと働いてきた分野の知識をあまり持っていないのでしょうか?あるいは、実戦向きではなくなり、効率性も失われてしまったのでしょうか?これはつまり、もう責任感のある個人ではなくなったという意味なのでしょうか?
上記の質問のほとんどに「ノー」と答えた方が多いと思います。そしてそのお答えは正しいです。特定のケース(筋力や身体能力が求められる仕事など)をのぞけば、40代、50代の人々には良い仕事をする能力がしっかりと備わっています。
しかし、企業が彼らを雇わないのにはたくさんの理由があるようです。最近アデコ社によって行われた調査では、人事のスペシャリストたちが年齢の高い世代を雇わない理由を問う質問に答えています。彼らの言い分を見ていきましょう。
- 回答者の75%が、40代、50代の人々は健康問題による欠勤が多くなり得るため雇わない方が良い、と考えていました。
- 若いチームに溶け込めないだろうし、自分より年下の上司から導かれるのを受け入れないだろう、という意見の回答者が66%いました。
- 年齢の高さ故に、新たな役職に就いた時に柔軟に対応できないだろう、と考えた回答者が40%いました。
- 回答者の25%が、40代、50代の人々の知識や技術は時代遅れである傾向が高い、と答えました。この年齢を超えた世代は古い世代だというのが彼らの考えです。さらに、「世代が上」の人々は新たな知識を獲得したり新しい手順を取り入れたりするのを嫌がる場合が多い、とも主張しています。
- この世代の人には家族を支える責任があるので、気軽に身動きが取れないと考えられます。
- 若者はその企業に新鮮で革新的で柔軟な雰囲気を与えてくれますが、年齢の高い人の場合はあまり好ましくないイメージが与えられます。
- 年齢の高い人は低賃金で働くのを受け入れようとしません(長年の経験があるため)が、企業は支出を減らしたいと考えています。この思い込みは最も広く浸透しています。
これらは根拠のない思い込みなのか?
これらの思い込みに特に顕著な認知バイアスは一般化、あるいは超一般化です。もちろん、25年間ほどの経験がある人の大半は、2年しか経験のない人と同じ給料での雇用を認めようとしないでしょう。これはかなり理に叶っています。しかし、中には抑うつ状態であることから、あるいは周囲に順応しやすい性質の持ち主であることから、この条件を受け入れてくれる人もいるのです。それならば、ただこの提示額では拒否されるだろうなどと勝手に想定する前に彼ら自身に尋ねてみれば良いと思いませんか?
同じことが、先ほど述べた「時代遅れ」だという考えにも当てはまります。ベテラン勢の多くはおそらく、働き始めた頃のように勉強を続けてはいないでしょう。しかしながら、新たな知識を得ようと何かの講座や講演に参加している人は多くいますし、新しく学位や修士号を取るような人々すらいるのです。
また、労働者は皆、特に勤める企業の成長が自分たちにかかっている場合には、必ずや変化に適応していく術を学ぼうとするはずです。
家族の責任という点に関しては、この年代の全ての人に家族を養う責任があり、仕事にも支障が出るだろうと考えるのはかなり誇張された考え方です。
同じことが、全ての「世代が上の人々」には健康上の問題があり、それが仕事に影響するという思い込みにも言えるでしょう。年齢を重ねるにつれて、私たち全員がより病気に弱くなることは事実です。しかし、若い人が病気にかからないというわけでもありません。若い喫煙者や過去に病気を経験した人、あるいは慢性的な健康問題を抱えている若者についてはどうでしょうか?
次に、「若いチームに適応できない」という意見について別の観点から見ていきましょう。若いリーダーたちに率いられることについて、彼らの「フレッシュさ」に感化され、そこから学びを得られることにワクワクしている年長者たちについてはどうでしょうか?私たちは誰もが皆お互いから学び合うことができるのです。
実を言えば、若い方の人が恐れを抱いてしまうかもしれません。若いリーダーたちが「私からあの人たちに教えられることなんて何もない」、「2年前まで国際企業の役員だったような相手の上司になるなんて無理だ」、などと考えてしまう可能性があるのです。こういった思いは、全くもって不合理であるとは言えません。
考えてみてください、「年配の人々」というのは歩くプロ根性というイメージを人に与えますよね。プロフェッショナルな社員を欲しがらない企業などあるでしょうか?寛容な企業イメージを世に与える方がより重要なことであると、全ての企業は思い知らなければならないのです。若手と年配者を上手く組み合わせられる企業だとアピールすることは、驚くほど有益なことかもしれません。
とは言え、前述の思い込みはどれも世の中に広く浸透してしまっているため、年配者たちの履歴書は年齢の時点で弾かれてそれ以上読まれることはありません。そのため、企業の方では年齢層の高い人々やより長い経験を持つ人々を雇うことで得られる利益については考えることすらしなくなっています。結果として前述した永遠の失業状態問題が湧き上がっているのです。
永遠の失業状態がもたらす心理的影響
スペインでは、失業者全体のうち14.7%が50歳以上の人々です。EAPSによる最新データは、55歳以上の失業者の10人に6人が12ヶ月以上失業状態に陥っていることを示しています。また、アデコ社の調査によれば、この年齢層の失業者のうち43%が4年以上新たな雇用機会に恵まれていなかったそうです。
300回以上も企業から断られ、4年間も仕事がないままで、養わねばならない家族(学校や大学に通う年代の子どもも含む)がおり、配偶者やパートナーも同じ状況だ、という人たちの気持ちになってみてください。不安感情が生まれてくることは確実ですよね?
では、永遠の失業状態がもたらす心理的影響の中でも最も起こりやすく、説明のつきやすいものについてお話ししていきましょう。
- 不安やストレスは職探しからだけでなく、例えば水道代や電気代、食費、家賃、子どもの学費などの基本的な支出をまかなう余裕がないという事実からも生まれます。
- 自尊心が低くなり、自分は役立たずであるという感覚や抑うつ的な感情を感じるようになります。拒絶されたり無力さを感じるとそれまでのキャリア全体にまで懸念が及び、自分の専門分野に対する自信を失い始めます。
- 今陥っている失業という穴から抜け出すことができないことへの罪悪感を感じます。
- 食欲の変化や睡眠の問題など、生理学的問題が生じます。
- 今の状況を覆すことなど無理だ、というどうしようもなさを感じます。
ここで心に留めておくべきなのは、こういった感情の変化が長期間に渡って続くようであれば、それはもうその人の生活にまで支障が出ていることの証だということです。その場合は、メンタルヘルスの専門家の介入が大切になります。彼らは全ての問題を逆転させるような「魔法の薬」を与えてくれるわけではありません。しかし、健康的なルーティーンを維持したり、罪悪感や無力感を無視したり、もっと健全な形で今の状況に向き合ったりできるよう導いてくれるでしょう。
私たちの「先輩たち」を守ろう
WHOによると、年齢差別(エイジズム)はジェンダー差別や人種差別と同じレベルで認識されているそうです。ただし、同時にあらゆる差別の中で最も一般的に浸透している差別だとも言えるでしょう。
これこそ、皆さんがほんの1分前まで無視していたことなのです。しかしこれは事実です。年齢差別は驚くほどこの世にあふれています。おそらく、私たち全員が「年配者の才能」の重要性を思い出す必要があるでしょう。結局のところは彼らこそがもっとフレッシュだった頃に若い部下たちを導き、教えていた人たちだったのですから。
履歴書のデータだけを見るのではなく、その人自身を個人として見ることができれば、おそらく状況は少しずつ変わってくるはずです。企業の方々は覚醒してください。あなた方はたくさんの才能をドブに捨てているのですよ。さあ、この永遠の失業問題を終わらせましょう!