映画ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド

2019年11月21日
クエンティン・タランティーノ監督の最新作である映画「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」は、予告編の期待を裏切らず、素晴らしい内容で観客を驚かせました。

タランティーノ監督がまたしても素晴らしい映画を作りました。それが「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」です。

止まることのないせっかちな現代社会において、タランティーノ監督の映画を見るために、多くの人が映画館に足を運びました。そしておよそ3時間、観客は魔法にかけられたように魅了されたのです。観客はみな映画に没頭し、途中で携帯電話を触る人もいません。

タランティーノ監督は、またも宝石、つまり第七芸術への頌歌を偽りや仕掛けを使うことなく私たちに提供しました。

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」は、数十年を費やして共有できる想像力を高めてきたタランティーノ監督の最新映画です。

近年タランティーノ監督は、彼の映画を心待ちにしている観客と自分が作りたいと感じている映画をその通りに作るための多くの予算を手に入れました。

タランティーノ監督は、自分がやりたいことが「正しい」のかどうか、またそれが大流行しているのかを気にすることはありません。彼は、自分が影響を受けたものとその嗜好で自分を楽しませることに基づいて、歴史を書き換えます。

タランティーノ監督は、これまでに起こった出来事を「起こったかもしれない出来事」を踏まえて再解釈するのです。

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常に限界に挑む

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッドでは、すべてが語られているわけではありませんが、すべての商業映画が同じというわけではないことを証明する映画です。

数時間の間、人々が夢中になることをいとわない世界があります。

観客の中には、タランティーノ監督がこの映画を彼自身のために作ったと感じる人もいるでしょうが、ここにこの映画の展開の鍵があります。

前作とは異なり、予想外の喜びは終盤まで登場しません。

タランティーノの映画の鍵:間テクスト性

クエンティン・タランティーノ監督は、映画を観ることで映画について学びました。彼は古典と呼ばれる映画や、長い間忘れられていた映画、そして人々に拒絶されたような映画に没頭しました。

これらの映画が、彼自身の作品のインスピレーションであり、タランティーノ監督は、芸術はどこにでも存在することを観客に示しています。

タランティーノ監督が自分の映画を好きなもので埋めていることは最初から明らかでした。映画で使われている音楽から絶え間なく登場する参照映画まで、彼の映画にはどれも、彼の心と生活を垣間見ることができます。

また、タランティーノ監督の映画は、映画の歴史についても私たちに教えてくれます。映画に興味を持った観客は、マカロニ・ウエスタンと呼ばれる当時の西部劇を調べたり、古いカンフー映画をみたりします。

そしてその中で、観客は映画業界が隠したいと思っている本当の「宝」を見つけるのです。

芸術とは、ファッショナブルなものや周りから押し付けられたものよりも、はるか深いところに存在します。もちろん、芸術は政治を超え、独自のカテゴリーとして独自の価値を持って存在します。そのため、自分の好きな監督が映画を作ったら、ぜひ映画館に足を運んでください。

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド

大きな疑問

「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」の予告編を見た人からは質問が多くありました。熱心なタランティーノ監督のファンでさえ、この映画に何を期待するべきだかわからなかったと言います。

この映画は、チャールズ・マンソンと彼が率いたカルト集団による殺人についての映画なのか?

これはフィクション映画?

かつてより良い役をもらうためにヨーロッパに行った西洋スターへのオマージュ?

答えは「はい」と「いいえ」の両方です。

この映画には多くの「参照すべき点」が含まれており、それをすべて見つけるのは1回だけでは不可能なので、同じ映画を見た友人と話をするのも楽しいでしょう。

自分が受け継いでいる文化には個人差があるため、映画から受け取るメッセージにも個人差が生まれます。

クエンティン・タランティーノ監督は、この映画が理にかなっているかどうかにかかわらず、自分の好きなものすべてに関する映画を作りました。一日の終わりに、その日に起こったかもしれない… もしくは起こらなかったかもしれない物語について…

ハリウッドの黄金時代

この映画のタイトルも、タランティーノ監督が大好きな映画監督の一人、セルジオ・レオーネ映画への参照であり、レオーネ監督の映画2本のタイトルが、このタランティーノ監督の最新映画のタイトルに類似しています。

レオーネ監督は、マカロニ・ウエスタンというジャンルを作り出したことで知られる監督で、彼の最後の映画は「ワンス・アポン・ア・タイム・オブ・ザ・ウエスト」です。

もう一つは「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」で、この映画は、レオーネ監督のアメリカでの大ブレイクになるはずでしたが、好評を博しませんでした。

タランティーノ監督の映画には、当初からノスタルジックな要素が多く含まれています。タランティーノ監督は、俳優によって理想化されたハリウッドも、ある特定の年齢になると与えられたものに順応することを強いる敵対的な環境へと変わることをこの映画で示しています。

これは幻想的かつ現実的な奇妙な話であり、映画業界の最悪の側面を描写していると言っても過言ではないでしょう。

これは、アメリカ人がよく知っている悲劇的な物語である「シャロン・テイト殺人事件」の途中で起こります。この映画を見ている観客は、活気のある若い女優としてのシャロン・テイトに出会いますが、彼女自身も観客席に座って彼女自身の映画をみます。

観客はもちろん、シャロン・テイトの悲劇的な運命を知っているため彼女に同情します。また、自分を包み込む映画業界の中で、歳をとるという現実に苦しむクリント・イーストウッドにもなり得る別のキャラクターにも、観客は同情するでしょう。

この映画には懐かしさと輝かしい時代の記憶があふれ、タランティーノ監督が描く空想の厳しさと混ざり合います。

タランティーノ監督が考えて描くタランティーノ版「起こりうること」を書き出したいという彼の希望のなかで、他のタランティーノ映画と同じく、多くの暴力描写と皮肉が描かれています。

彼の映画の中では、暴力は美しく、哀れで面白いものとして描かれます。

また観客は、時折、2つの映画を同時に見ているように感じます。 2つの真実と2つの嘘が組み合わさり、驚くべき、そして笑えて背筋が寒くなるような結末を迎えます。

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド

典型的なタランティーノ映画の結末

注意:この記事の残り部分にはネタバレが含まれています!

 

タランティーノ監督は、ハリウッドの過去についての物語を映画にしました。ハリウッドは夢が叶う場所ですが、同じように簡単に消える場所でもあります。

現実の人々の物語はフィクションと混ざり合っていますが、タランティーノ監督の想像力が生み出すものは、現実の生活に容易に存在する可能性があります。

「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」では、観客がこの映画の舞台となった時代に起こった出来事、特にチャールズ・マンソンに関して知っているものとして、観客との「遊び」を楽しみます。

さらに、よく知られている曲「I’ll Never Say Never to Always」を通じてマンソンのカルト集団に属していた若い女性を紹介しています。

ただし、この映画の最後に、シャロン・テイトの悲劇的な死を見ることを心から期待していた人はいるのでしょうか?これは、タランティーノ監督の好きなタイプの暴力でもなければ、彼の音楽の美学、楽しみ、そして得意な描写でもありません。

この映画において、シャロン・テイトは最も重要なキャラクターの1人ではありませんが、タランティーノ監督は構図などを活用して、観客がどこでも彼女を見つけられるように工夫しています。

例えば、混雑したパーティーにおいても、カメラは意図的に彼女を写し、観客の注意を引きつけます。観客は彼女に共感して彼女を「知る」ことが義務付けられているかのようなのです。

他の人の意見や、シャロン・テイトが他の人と交流する様子や彼女の周りの状況などから、観客は彼女を理解します。タランティーノ監督は、最後に起こる悲劇的で恐ろしい殺人という結末に向かってこのキャラクターを作り上げたのでしょうか?

それは違います。

さらに加えるならば、しっかりと注意を払っていれば、実ば冒頭でタランティーノ監督がこの映画の結末を提示しているのに気づくでしょう。

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歴史を書き換える

彼自身の映画「イングロリアス・バスターズ」を直接参照するシーンのおかげで、タランティーノは観客を小さな秘密の世界へと連れて行きました。

映画「イングロリアス・バスターズ」において、タランティーノ監督は歴史を書き直し、歴史上最も堕落した人物の一人に、芸術的復讐を遂げました。タランティーノ監督はあのアドルフ・ヒトラーを殺したのです。

この映画を参照した後は、点と点を繋げるのはさほど難しくありません。

粗野で悲劇的で痛みを伴う暴力を見る代わりに、タランティーノ監督は、面白い暴力で歴史を書き直します。これは血、炎、そしてアクションのダンスとも呼ぶことができる調和です。

この映画には、無関係と思われ折衷的な結末としてまとめられる物語がたくさん登場します。

タランティーノ監督は細部に注意を払い、観客と常にゲームで遊んでいるかのようです。

タランティーノ監督の映画の中ではなんでも可能であり、「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」は、映画へのオマージュであり、第七芸術への頌歌であり、物語を語り、現実を風刺し、すべてを笑い、人生を楽しみ、そして何よりもタランティーノ監督の素晴らしい才能を表現している映画です。

さらなる喜びは後半に登場しますが、これは浄化の意味を持つカタルシスであり、良心の解放と本来あるべきものへの頌歌です。