自己欺瞞とアルコール依存症

11 6月, 2020
自己欺瞞とアルコール依存症は、お互いに影響し合って中毒を長続きさせます。飲酒は一つの長期自主服薬と言えますが、依存症に苦しむようになると心理的拷問とも言える状態へと繋がってしまいます。

数年前、アルコール依存症は理解することが出来ないと言った心理療法士がいました。彼女は、自己欺瞞とアルコール依存症が関連しあっていることを理解しておらず、なぜ人々が自分の人生を顧みず、このような有害な物質で自らを傷つけるのかが分からなかったのです。

残念ながら、このような「プロ」のカウンセラーは沢山います。偏見のある倫理的視点からこの問題を見ており、アルコール依存症を助けるための前向きで生き生きした代替案を提案することが出来ません。このような視点は、患者に自分は無能であるという気持ちを深めさせ、麻痺させてしまうような罪悪感を長続きさせるだけです。

アルコール依存症の継続や再発に影響する要素の一つが自己欺瞞であることを理解しなければなりません。ただし、自己欺瞞は依存症を持続させる決定的な要素であっても、それそのものが依存症を引き起こすわけではありません。これを理解することで、自己欺瞞とアルコール依存症の関係を紐解き、より依存症の回復について知ることが出来ます。

専門家によると、アルコール依存症は生物心理社会的疾患です。また、その原因と進行の仕方を考えると、環境要因を無視するわけにはいきません。上述した通り、自己欺瞞とアルコール依存症の持続の間にある関係を理解することが必要不可欠なのです(Zocker and Williams, 1994)。

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嫌な現実から逃げるためのアルコール依存症

依存症患者は、他人からは非論理的で理解不能に見えるかもしれません。憐れみと怒りが混ざったような気持ちになって、なぜ依存症の人はあんなに間違っていて、自らや他人を傷つけるようなことをしてしまうのかと不思議に思うでしょう。アルコール依存症に隠れた自己欺瞞は、なぜこれほどに破滅的なのでしょうか。

複雑な認識論を通してアルコール依存症を理解しようとした最初の人が、グレゴリー・ベイトソンでした。「The Cybernetics of “Self”: A Theory of Alcoholism(未訳、『「自己」の人工頭脳学:アルコール依存症の理論』の意)」という論文の中で、彼はアルコール依存症を中和的役割を持つ経験だと考えています。

もし患者の普通の生活に飲酒へと走らせる要素が存在しているのなら、お酒を飲まないことで依存症を改善したりコントロールが出来るという期待はできません。

依存症へと追いやってしまう現実が、依存症から抜けだす助けになることはない

感情をマヒさせるような現実、論争、記憶が人々を飲酒へと走らせます。依存症に陥ってしまうほど繊細な人々にとっては、普通の現実も問題があるものなのです。それが病的なほどに感じられることもあります。仕事、家庭、そして自らの人生の中に良いことを見出すことが出来ないのです。

飲酒は、この実存的枠組みに対して主観的な修正しかもたらしません。別の言い方をすれば、彼らにとって中毒は現実に比べれば「マシな」ものなのです。

ルイージ・カンクリーニは、アルコール中毒は麻薬中毒と同様、苦悩の原因となっている人間関係や家族の状態と直面するための自己セラピー的試みであると考えています(1993)。

なぜ自己欺瞞は酒を飲み続けさせるのか

自己欺瞞に対する最新の治療では、確証バイアスの理が応用されます。が応用されます。何かを信じたいという意志がある時、特定の情報ばかりを集めるということです。自らの信念に沿う証拠を探し、それに反するものはあまり考慮しないのです。

特にそれが自らの信念に沿う場合、人は自らの目で見たものはすぐに信じます。そのため、自己欺瞞はアルコール依存症の動機なのです。たとえその動機が間違ったものであってもです。

依存症患者の多くが、自分に問題があるとは思っていません。周から強制されて初めてカウンセリングに行きます。この場合、自分のためでなく周りの人のためにカウンセリングに行くことになります。それは自分では苦しいと感じていないから、周りの人が苦しむのを見たくないから、そして毎日周りから受けるプレッシャーに耐えられなくなったから、などが理由でしょう。このような場合は、カウンセリングに行くのも取り繕うためだけであることがよくあります。

さらに、知り合いの中で自分よりも多く酒を飲む人を挙げて、その人には問題がないのだから自分にも問題などない、と考えます。また、過去に自分の意志で飲酒をやめたこともある、というのを言い訳として使うこともあるでしょう。

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自分を信じ続ける方法としての自己欺瞞

本人の動機が眠っている限り、その人が持つ信念が間違っていると納得させるのは難しいことです。逆に、そのような間違った信念や視点を持続させるものは何なのかを理解すると、非常に重要な知識を得ることが出来ます。

依存症は、ある意味で一つの習慣です。無意識のうちに行ってしまう習慣なのです。そのような行動をとる理由を自分で考えてみることで一度落ち着いてみると、自動操縦的な習慣から抜け出すことが出来ます。

自己欺瞞と確証バイアスについて理解すると、なぜ依存症に陥ってしまう人がいるのかを理解したい人々にとって基礎となる知識ができます。もちろんそのような人々の例が、プロの臨床心理士でしょう